適正審査
ホ○バゲーが忙しいこの頃…。
キ○ニチ引こうか迷ってます。
「つまり魔法は結局のところ、才能によるんでござるか~」
「そういうことだ。鍛練すれば才能が無くとも、日常生活に使える程度の魔法は使えるがな。……それすら出来ない者がいたと、お婆様は言っていたが…」
「へぇ~。便利そうですね…」
長い廊下を進む道すがら。
ヲタがシルフィに魔法について質問していた。
シルフィは嫌な顔一つすることなく説明してくれる為、ヲタと真白さんの良い勉強になっている。
「せっかくの異世界でござるし、どうせなら魔法の一つでも使ってみたいでござるなぁ」
「この後の適正審査次第だな。魔法の訓練を受けられるかは。少しでも“知力”があれば受けられるはずだ」
「適正審査…?なんなんですか。それ?」
真白さんが首を傾げながら聞く。
「水晶のような魔道具で、人のステータスを観てその才能を調べるのだ。伝承通りならお前たち勇者は召喚された時に、神から固有スキルを貰っているはずだ。それを調べた上で、神器選定に移る」
「ステータス?スキル?神器?」
「神器というのはさっき姫様も何度か口にしていたでござるな。エクスカリバーとか言ってた故、恐らく超強い武器とか防具のことでござろう」
「神器についてはその者の言う通りだ。ステータスやスキルについては、自分のはいつでも確認出来るから、気になるなら見てみろ。“オープン”と唱えれば頭の中に浮かんでくる。スキルの詳細が知りたい場合は、スキル名に注目すればいい」
シルフィに言われるや否や、ヲタと真白さんはさっそくと唱えた。
俺は召喚部屋にいた時に確認したが、全部は把握してなかったからもう一度見ることにした。
「オープン」
──────────
名前:ユリ・サオトメ
年齢:16歳
二つ名:闘神ノヴァの生まれ変わり
二つ名ボーナス:前世のスキルを引き継げる
基本ステータス
体力:D
魔力:C
スタミナ:S
力:C
防御力:E
知力:F
魔法防御力:F
俊敏:B
器用さ:S
運:不要
戦闘スキル
・剣術Lv.不要
・体術Lv.不要
・軽業Lv.不要
魔法スキル
・魔力剣Lv.MAX
攻撃スキル
・無限夢想の創庫
パッシブスキル
・戦闘狂Lv.--
・空中ジャンプLv.MAX
・重力無視Lv.--
・不撓不屈Lv.--
固有スキル
・疾風Lv.MAX
──────────
前世に比べてステータスは軒並み落ちているが、二つ名ボーナスのおかげで前世のスキルを引き継げているのは非常にありがたい。こんな恥ずかしい二つ名じゃなければ、もっと素直に喜べたんだが…。
さらに前世と同じように運にステータスが割り振られてない“やっぱり”神様俺のこと嫌いなんだね俺もお前が嫌いだよッ!
でも地球でその辺の棒で魔力剣とか空中ジャンプを試したことあるんだけど、出来なかったんだよなぁ。こっちじゃないとスキルは発動しないんだろうか?
あっちじゃステータスの確認すら出来なかったし、アクアスじゃないと引き継げないみたいな裏設定とかあるかもしれないな。
「どうだった?」
「その……たぶん私はあまりステータスは高くないと思います…。スキルも……ちょっと…」
「せ、拙者も全然でござるな~…。な、なんでござるかこの【身体能力上昇】とかいう固有スキルは?こんなんハズレスキル確定では!?」
真白さんとヲタは見るからに残念そうに言う。
ヲタは顔をひきつらせながら、めっちゃ声が震えてら…。
「真白殿はどんなスキルだったでござるか?」
「……ちょっと。言いたくない、かも…」
「え?なにその感じ。めっちゃ怖いんでござるけど…」
「た、たぶん。ハズレだと、思う…」
真白さんの落ち込み具合がハンパじゃない…。
ずーんって黒いオーラを纏ってるように見える…。
「早乙女殿はどんな感じだったでござるか?」
「俺?俺は……あ~…」
正直に話すか、誤魔化すか迷う。
後でバレる可能性はあるし、正直に答えるべきなんだろう。
けれどラウラの言葉が頭を過ってしまい、それもなんか違う気がした。
『自分の情報はどうしても必要になった時だけに開示すればいい。いくらステータスだけ見れば貧弱に見えても、真に強い者ならノヴァの実力に気付かないはずがないからな。だから後でいくらでも誤魔化せることは誤魔化せ。正直過ぎるのは、返って良くないからな』
……今はあの時のラウラの言葉に従うべきかもしれないな。
もし俺という存在がノヴァと変わらないのなら、俺は“神に嫌われている”はずだ。
ならきっと水晶鑑定は無意味に終わる。例えまともに機能したとしても、なんとでも誤魔化せる。
「なんというか、体力とかスタミナの基本ステータスしかわからなかったんだけど…。二人の反応を見るに、俺だけバグってるみたい?」
「おろ?どういうことでござる?」
「ふむ……すまない。その話は気になるが、一旦やめにしよう。ついたぞ」
そう言ってシルフィは無駄にデッカい両開きの扉の前で止まる。
その扉の前にいる二人の騎士がシルフィに敬礼し、扉を開けてくれる。
「い、いかにもって感じの扉と雰囲気でござるな…」
「そ、そうだね…」
ヲタと真白さんが緊張しだす。
開かれた扉の向こうには、俺たちより先に来ていたクラスメイトたちがいた。
中はこれまたかなり広く、学校の体育館の二倍くらいの広さ。廊下の広さでわかっていたが、やっぱり街が発展すれば城もかなり改築されるんだな。
いくら記憶が朧気でも、こんなにだだっ広い部屋はなかったことくらいは憶えている。
「あ。残りのお三方がいらっしゃったようですね」
「遅れて申し訳ございません。姫様。突然の召喚に混乱が治まらない者がいまして…」
「ありがとうシルフィ。謝ることなんてないわ。案内ご苦労様」
シルフィと姫様が簡単なやり取りをした後、姫様が俺たちに向き直る。
「それではこれより、適正審査と神器選定を行います」
姫様がそう言うと、綺麗に透き通った水晶が三つ運ばれて来た。
「まず適正審査ですが。まずはこちらの水晶に触れて頂き、ステータスの確認を行います。ステータスは“オープン”と唱えることで、いつでも自分のステータスを確認出来ます。なので一見無駄な行為のように思えますが、これはこちらで皆様のステータスを詳細に把握し、適切な訓練を行う為に必要なことでございます。どうかご協力の程、よろしくお願いいたします」
などと最もらしいことを言っているが、実際は違うだろうな。
本人の口からの情報だけでは、虚偽申告される可能性がある。
嘘を吐くということは、何かしら疚しい気持ちを抱えているということ。向こうからすれば、反乱の意志があると見なされるだろう。
前世でもそうだったのだが、勇者であるリョウタロウのステータスを正確に把握していた王家は、いつリョウタロウが自分たちを裏切っても即対応出来るようにする為というのが本当の目的だったのだ。
第三王女を嫁にやったのも、魔王を倒すほどの実力を持つ勇者を抑える為だったらしいし。王女が普通にリョウタロウにゾッコンだったのが幸いか…?
まぁ根っからの善人だったし、完全に杞憂に終わってたけどな。あんなにリョウタロウを警戒するなら召喚しなきゃ良かったのに…。
話が逸れたが、要は向こうは俺たちを手玉に取る為にステータスを把握しときたい。というのが本当の理由だろう。
佐江が反抗的な態度を取ってしまったのも大きいかもな。さりげなく俺たちを取り囲むように位置取っている騎士たちなんて、いつでも剣を抜く準備が出来ている様子だ。
……ぶっちゃけこの状況は“興奮する”から敵意にも似たその姿勢はやめて欲しい。顔がニヤけそうになる。
「それでは。順番に水晶に触れていってくださいませ」
姫様の指示に従い、三つの水晶にそれぞれ並んでいく。
「見えるでござるなぁ…。ここにいる全員が拙者のステータスに落胆する未来が…」
「そんなに悪かったのか?」
隣の列に並んだヲタが完全にナイーブになっている。
「どうせこの後皆に知られるみたいだから普通に声を大きくして言っちゃうでござるが、ステータスがオール“E”だったんでござるよ?それに加えて固有スキルは【身体能力上昇】。ステータスが高ければ、純粋な戦士タイプとして活躍出来る未来もあったでござるが、こんな明らかに低いステータスで何が出来ようぞ?我に死ねと言っておらんか異世界?」
ヲタの愚痴に騎士たちも含め、周りが「うわ~…」とでも言いたげな顔になる。
俺は別にそうは思わないけどな?それ十分当たりの固有だし。神に愛されてると言っても良い。
「説明は見たのか?実はヤバかった!?みたいなことになっとらん?」
「なってないでござる。ステータスを全て一段階上昇させるという物でござるからな。一段階上がったところで、たぶんオールDでござるよ?雑魚敵相手にしか戦えんでござるよこんなの…」
そこがすっげぇヤバいんだけどな…。
まぁそれは後々ヲタにだけ教えるとするか。
「「「おー!!!」」」
ヲタと雑談していると、前からどよめきが聞こえてくる。
そのどよめきの中心いたのは、相馬亮太であった。
「す、ステータス……オール“S”!!!固有スキルは【限界突破】!これは勇者リョウタロウを越える逸材じゃないのか!?」
おいおい。相馬の奴、不自然なくらい強いじゃん。“好みのタイプ”だったのか、神は固有スキルを与えるだけでなく、ステータスの底上げまで行ったのかね?
リョウタロウはほぼ1から強くなったってのに、不公平なことしてんな…。
渦中の人物である相馬はすっげぇ困惑してる。
「こっちも凄いぞ!ケンタ・サエ。力と俊敏がSだ!?固有スキル【強き者】と、かなり相性がいいぞ」
「こ、こちらも逸材ですわっ!レイナ・アンジョウ。知力がなんと“SS”!!!固有は……【全属性無詠唱魔法】ですって!?辞典にも乗っていない新しい固有スキルですわ!」
「……チッ!相馬より劣ってるってことかよ…」
「……………」
佐江は舌打ちして顔を歪めた。やや相馬に負けてるのが悔しかったようだ。
知力がSSと驚かれているのは、うちのクラスのマドンナ的存在である。安城嶺奈。
アニメに登場するような高嶺の花みたいな感じの人で、寡黙でミステリアスな印象が強い。
しかし腰まで伸びた長い髪の毛をポニーテールやサイドテールにしたり、お団子にしたりしてることから、結構自分の髪の毛で遊ぶのが好きなのが伺える。ちょっとグッと来る。
ていうかアイツら。これ見よがしに個人情報をばらまいてるのヤバいな…。
「う~…。嫌だなぁ…」
俺の前にいる真白さんがまた、ずーんって黒いオーラを纏いながら落ち込んでいる。
そんなに悲惨なステータスなのか?
そして真白さんの番となり、鑑定水晶に触れる。
すると係の騎士がまた騒ぎ出した。
「こ、これは…!ステータスは低いですが、固有スキルを二つも持っていますわっ!一つは【超怪力】。もう一つは【超合金化】ですわ!前者は力を。後者は防御力を大幅に強化しますので、当たりと言って差し支えないでしょう」
「うぅ…。怪力って…」
あ~…。女の子としては、こんな物理一辺倒なスキルは嫌か…。それでハズレかもって落ち込んでたんだな。
しかし【超怪力】と【超合金化】か…。俺的には将来的に考えれば当たりとも言えるが、現時点ではハズレとも言えるな。
この二つは確かに強力だが、俺の記憶が正しければどちらも俊敏を下げる副次効果があったはずだ。
だから素早い敵は完全に天敵だな。どんなに強力な攻撃であろうと、当たらなければ意味がない。
真白さんがこの先、広範囲攻撃をたくさん覚えればいくらか解消される弱点だが。
【超合金化】で敵の攻撃を受けて捕まえるという手もあるけど、真白さんには酷だろうな…。
「次の方。どうぞですわ」
「あ。はーい」
さて。いよいよ俺の番な訳だが……ここでどうやってこの水晶でステータスを詳細に表すことが出来ているのか説明しよう。
この水晶の名称は【神の目】。神がこの水晶を通して、俺たち人間を見守っているとされている魔道具だ。
ダンジョンという所でしか手に入らず、人の手で作ることは出来ない特別製だ。
さらには神に認められた……もとい気に入られた神官などが魔力を込めると、神と対話することが出来る。
ステータスは神自ら水晶に表示してくれているとのこと。実際に神と話した最初の神官がそのように聞いたらしい。
そして……水晶の話から逸れてしまうのだが。
固有スキルだけでなく、戦闘スキルや魔法スキルなどがステータス欄に載るようになるのは、神にその努力を認められたらとのことだ。
(前世では水晶に表示されるステータスに怒りが込み上げて来たもんだが、今回ばかりは“それ”が必要だ。もう城の奴らに縛られるのはごめんなんだ。ある程度自由に生きる為にも……あのバグった表記を出せよ神様よ)
水晶に触れると、淡い光が放たれる。
「こ、これは……一体?」
「どうかなさいましたか?」
「い、いえ。その……ステータスが、スタミナS。器用さSと、凄く当たりなのですが……」
水晶を姫様に見せる女性騎士。すると姫様も鑑定結果に驚いた反応を見せた。
困惑するのも無理はない。なぜなら……
──────────
名前:繝ヲ繝ェ繝サ繧オ繧ェ繝医Γ繝サ繝弱Χ繧。
年齢:?呻シ
二つ名:髣倡・槭ヮ繝エ繧。縺ョ逕溘∪繧悟、峨o繧
二つ名ボーナス:蜑堺ク悶?繧ケ繧ュ繝ォ繧貞シ輔″邯吶£繧
基本ステータス
体力:D
魔力:C
スタミナ:S
力:C
防御力:E
知力:F
魔法防御力:F
俊敏:B
器用さ:S
運:不要
戦闘スキル
・蜑」陦鏑v.荳崎ヲ
・菴楢。鏑v.荳崎ヲ
・霆ス讌ュLv.荳崎ヲ
魔法スキル
・鬲泌鴨蜑」Lv.MAX
攻撃スキル
・辟。髯仙、「諠ウ縺ョ蜑オ蠎ォ
パッシブスキル
・謌ヲ髣倡汲Lv.--
・遨コ荳ュ繧ク繝」繝ウ繝有v.MAX
・驥榊鴨辟。隕豊v.--
・荳肴駐荳榊ア?v.--
固有スキル
・逍セ鬚ィLv.MAX
──────────
神は俺のステータスを。詳細に出してはくれなかったんだから。
(……本当に相変わらず。俺のことが嫌いなんだな…)
今はそれが。大変ありがたいのだが。
ウマ○も忙しい…。