洞窟探索
古い時計塔は蔦が中にも外にもびっしりと蔓延っていた。
うわぁ、味があるというか歴史を感じるというか…なんかすごく素敵な所ね。
私がワクワクして先頭に立って行こうとすると、レオンが俺の後ろにいろ!と制してくる。
「酷いわ!私だってヒカリゴケを楽しみにしていたんだから!」
「何かあったらどうするんだよ!」
レオンの剣幕におされて黙り込むと。
「はいはーい。このグループはほぼ普通クラスでレオン君だけが騎士クラスだよね。学院内は基本魔物はいないことになっているけど、虫に例えるなら蚊みたいな小虫の魔物は実はごくたまにいるんだ。大した実害は無いけれど、遭遇したら対処できる人物が先頭を行くべきだと思うよ」
ケレイブ先輩に諭されて、私は大人しくレオンの後をついていくことにした。
「本当に君に何かあったら、確実にレグルス先輩に殺されるから」
溜め息のように出された言葉に私はそんな物騒な、と振り返る。
ケレイブ先輩は皆を守るように最後尾を歩いていくようだった。
私たちは塔を一番上まで上がったし、塔の周囲もぐるりと回ったけれど洞窟らしき物は見つけることができなかった。
「みつけられないなら、他の場所を当たるか、別の七不思議に向かうべきじゃないかな?時間は限られているんだし」
ケレイブ先輩は私達を他の場所に追い立てようとする。
皆が気遣う様に私を見るので、後ろ髪を引かれる思いだったけれど、その提案に乗るしか無いと思った。
「まぁ、せっかくこんな所まで足を運んだんだから、もう一度だけ探して見ようぜ」
レオンがそう言ってくれたので私は嬉しくて思わず口許をほころばせた。
まるで私の本当の思いを読み取ったかのよう。
レオンは傍に落ちていた枯れ木を手に取り、実は中は薄暗くて良く見えなかったから手元に灯りが欲しいと言ってケレイブ先輩に火魔法で火をつけてもらった。
そうして二度目に時計塔に入った時、「ここ、おかしい」と階段手前のレンガを踏み鳴らした。
「ここの前を通る時、火が大きく揺れたんだ」と言って。
私に松明を渡すと両手でレンガを持ち上げた。
すると、レンガは一枚の板のように連なっていて一気に剥がれ、人が入れる程の穴が開いた。
中を照すとそれは地下へと続く階段だった。
「あ!」
私達全員が思わず息を飲んだ。
湿った土の匂いが広がる。
「うわー。まじかよ。ここ見つける
とか」
ケレイブ先輩が後ろでボヤく。
「素敵!冒険小説みたいだわ!」
シャーロットがはしゃぐ声をあげる。
「本当ね!隠し扉だったのね、このレンガが!」
カレンも興奮して中を覗き込む。
アメリアだけが「下に降りるの怖いわ」と震えた。
「あぁ!でも私のせいで皆が洞窟の不思議な光を見れなかったなんて嫌だわ。お願い、大人しくここで待っているから皆で行ってきて!」
両手を組んで懇願され、「アメリアが良いと言うなら、パッと見てパッと帰ってきましょう」とシャーロットが提案した。
アメリアのホッとした顔に私達は頷いたけれど、ケレイブ先輩からストップがかかる。
「いや。ちょっと待って。ここを見つけるなんて想定外だから。本来ここに下るのは、魔術クラスと騎士クラスのみで組んでいるパーティーしか許可を出せない」
「えぇーっ」
せっかくこんなに凄いところを発見したのに?
「あー、どうするんだこれ。出来るだけスピカ嬢の意に沿うようにしろって言われたけど、危険に晒したら殺すって言われてるもんな」
ケレイブ先輩がブツブツと呟いて頭を搔く。
「最低でも非戦闘員一人につき一人はつけなきゃ。何かの時に対応できないもんな。アメリア嬢が一人で待機は不安だし、あと一人は魔術か騎士のやつを連れてこないと」
溜め息を吐くと、ケレイブ先輩は私達に絶対ここを動くなよ!と言い置いて、アメリアと外へ向かう。
「彼女を他の人に託して来る。その辺に待機している魔術省の警護の人がいる筈だから連れて来るまで待っていろ!」
と塔の外へ出ていった。
魔術省の警護の人はミアプラお姉さまやノアの周りにしかいないでしょうに。
そう思っていたのに、ものの数分でケレイブ先輩はウィル様を連れて戻ってきた。
シャーロットが口許を押さえて、喜びの声を漏らさないようにしてウィル様を見つめている。
あぁ、本当に可愛らしい。
ウィル様は何で近くにいたのかしら。
もしかしたらノアのチームが近くにいたの?
とにかくこれで地下へ降りられるわね。
「私はレオンに守ってもらうから。カレンはケレイブ先輩に。シャーロットはウィル様に守ってもらってね」
そう言ってレオンの背を突っつき、地下へと誘う。
松明の光のせいか、レオンの顔が紅く照された。
「いやいや。君とレオン君は真ん中にいてくれないと。先頭は僕とカレンさんで行かせてもらう」
ケレイブ先輩は掌に火を出すと、熱くないのかそのまま先頭に立って歩き出した。
カレンがそのすぐ後ろに続き、私とレオンがその後を行った。
後ろのウィル様も同様に掌に火を出す。
魔術が使える方は便利よね。
バチバチ音を立てて燃える松明をレオンが手にし、逆の手を私に差し出して来る。
「滑ると危ないから」
うわー。驚くほど紳士的だわ。
レオンにこんな風に接せられたら少し照れてしまうけれど。私は素直に手を差し出し、優しく引かれながら地下へと降りて行った。
階段を降りきると、その先にはぽっかりと口を開けた洞窟が先へと伸びていたのだった。
読んでくれてありがとうございます
そっと、いいねを押して下さった方ありがとうございます
だいぶ間が空いてしまったのに読み続けて下さる方に感謝です




