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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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オリエンテーション

入学式から2週間後にオリエンテーションがある。

学院の広大な敷地をグループで探索する行事なのだ。


通称七不思議探し。


ヒントの紙を片手に謎解きしながら学院内の七不思議を探すのだけれど、前回はただ先輩に連れられるままに廻ったのだったわ。


七不思議の解釈は皆それぞれで、どれが正解なのかは本当は誰にもわからないらしいのだけれど。


七色の花は、7色に植えられたパンジーの花壇だった。


鳥であって鳥でないものは、飛べない鳥のペンギンの像を見せられた。


そこはかとない良い香りは、学園のパン工房の換気扇口の下へ連れて行かれた。


寝ているのに動く道は、非常階段横にある滑り台のことだった。


光り輝く壁は、階段の大きい鏡に太陽の光が当たる時間へそれを見に行った。



水底のウロコは、庭園にある噴水のタイルのことだと教わった。


なんだか七不思議と言う割に、少しも神秘的でなくてがっかりしたのだったわ。


タイムアップで見れなかったけれど、洞窟の不思議な光も、そういう謎解きみたいなものなのかと思っていた。


でもレオンのグループは洞窟でヒカリゴケのような緑のほの明るいものを見たと言っていたのよね。

今回は絶対それを見てみたい。

あーでも、先輩の機嫌を損ねずにうまく見ることはできるかしら。


そんな心配をしていたけれど、前回私たちを導いてくれた先輩はチューター役ではなくなっていた。


虫嫌いのミアプラお姉さまが学院の詰め所に待機していられる本部役員になっているのは前回と変わらない。お姉さまと一緒に本部役員に名を連ねているのが、あの強引に私達をつれ回したピエール・ダントン先輩だった。


彼がチューターで無いならば今回はヒカリゴケを見ることができるかもしれないわ。


五人組のグループを作るにあたって私は以前のメンバーを集めるつもりだったけれど、走ってやって来て私をグループに誘ったのはまさかのレオンだった。

前はあなた騎士クラスの五人で組んで私なんかに目もくれなかったじゃないの。

確かによそのクラスの人と組んでも良いのよ。同じクラスで組んで仲を深めるのも良し。他クラスの人と組んで横の繋がりを強めるのも良し、と言うのがこのオリエンテーションの目的なのだから。

「まだメンバー決めてないんだろ」

ポカーンとした私に少し苛立った様にレオンが返事を求めて来る。

「え、ええ」

「良し!他のメンバーはどうする?」

私は返事の代わりに、ノアを探して教室を見渡した。

ノアの周りは人で囲まれている。百年以上ぶりに現れた賢者候補生ということで他クラスからもたくさん誘われている様だった。

前回、私の元へ一番にやって来てくれたのはノアだったのに・・・。

「ねぇ、スピカ。私達と組んでもらえるかしら?」

横から声をかけてくれたのはカレン・ジェンガー男爵令嬢とアメリア・バーリー男爵令嬢だった。

「えぇ!喜んで!」

前回一緒だった二人から声をかけられて私は即答した。

前回は私とノア。カレンとアメリア。そしてジュリア・ソン・ソウダクト伯爵令嬢だったわね。

今回は私とレオン。カレンとアメリア。そうして、ノアよね?

もう一度ノアを確認しようとして、シャーロット・エマ・フォンダー侯爵令嬢と目が合う。

ポツン、と立ち尽くしていた彼女が私と目が合った時ホッとしたように微笑んだ。

「私もこのグループに入っても良ろしいかしら?」

緊張と期待のこもった瞳で見つめられて、とても断ることはできなかった。

そうだったわ。

前回彼女はギリギリまでどこのグループにも誘われず誘いもせず一人ぼっちで立ち尽くしてたんだったわ。

「もちろん、喜んで!」

勢い良くそう答えて。

「それじゃ、この五人で決定だな。グループ届け出してくる」

レオンが用紙に皆の名を書いて、提出箱に入れに行く。

「・・・あ・・・」

その時になって、今更なのにノアと瞳があった。

ノアは私の顔を見て察したらしく、周囲の人達とグループを組むようだった。

上位貴族の面々だわ、と眺めながらその中に魔術クラスの次席・・・いいえ今回はノアがいないのだから首席ね、たぶん・・・ガーネット・シュア・バーリー侯爵令嬢の姿に目を止める。

華やかな金色の巻き髪に、シルバーブルーの瞳の美しい人。

彼女はいつも、いつも、ノアの後ろにいた。

ノアは全く気に留めていなかったから私も気にしないようにしていたけれど。

ノアのことをライバルのようにも思うし尊敬してると私に話しかけて来たっけ。

わざわざ私に言ってくるから、何だか胸がざわついたのよね。

今回のノアはもう魔力が無いのに、どうして彼女はノアに近寄ってくるのかしら。


「本当に、よろしかったのかしら?」

私がノアばかりを見ていたせいでシャーロットが気遣わしげに尋ねてきた。

「もちろんよ!私シャーロットと廻りたいわ!」

慌ててシャーロットと向き合い彼女の手を取る。

いけない。彼女を傷付けてしまうところだった。

シャーロットが、はにかむように笑ってくれてホッとする。


そうよ、今回はこのメンバーで楽しまなくっちゃ勿体ないわ。


ノアと回れないのは残念だけどレオンが一緒だと言うことは、きっと洞窟のヒカリゴケを見つけ出すことができるわよね。


ヒカリゴケのことを想像していたら楽しみがじわじわと込み上げてくる。


「あぁ、楽しみねー。七不思議探し」


私の言葉に、皆が頷いた。


うん。楽しく回れそうだわ!私は足元のプロキオンを優しく撫でたのだった。













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