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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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おばば様の推薦状

なんの目的もなくただ闇雲に森を歩いていた筈なのに賢者のおばば様の所へ辿り着いていたとは。


そんな偶然てあるのかしら。


もしかして私を取り巻く精霊達がおばば様へと導いていたなんて・・・まさかね。


私とノアはおばば様の家に招かれレモンケーキを頬張っていた。

森で取れたレモンがケーキ本体だけでなくアイシングにもたっぷり含まれている。レモンピールの香ばしいこと、甘酸っぱい絶妙な味わいにうっとりとしてしまう。


「あら。それじゃあ、ノアが学院に落ちてしまって泣いていたの?」

おばば様はなんてこと無いように言うけれど。

「だって。前はノアは魔法科に首席で入学したのよ・・・」

話しながら再び瞳が潤み始める。

「私のせいで魔力を無くしてしまったから、騎士科に入る為に努力を重ねたのよ。何度も何度も手の豆を潰すほどの訓練を重ねたのに・・・それなのに、だめだったなんて」

私の瞳から涙が零れ落ちる直前に、おばば様が口を開く。


「それならノアは賢者になるつもりはないかしら?」


おばば様の唐突な言葉に驚いて私の涙は引っ込んだ。

ノアもびっくりした顔でおばば様を見た。


「えっ。なに?それ。素敵。ノア。賢者になりなさいよ」

「え?だって。僕はスピカの護衛騎士に・・・」

「ノアは見えなくても鈴掛けの木を全部覚えているくらい頭が良いんですもの。きっと賢者に向いているわ!」

私はノアの手をギュッと握った。


「でも、どうして今回はノアを賢者に勧めてくるの?前回は一言もそんなこと言わなかったわ」

私の純粋な疑問におばば様は柔らかく笑う。


「そうなのね。前回では私はその心境になれなかったのね。・・・アルタイルを賢者にする夢が絶たれて、次世代の賢者を育てるという気力が枯れてしまっていたの。けれども未来を変えたいと動くスピカを見ていたら、私も先に進みたくなったのよ」

穏やかに語るおばば様に、私は感動してしまった。


「私もここに越してくるわ。おばば様とノアとずーっとここで過ごすの。夢みたいに素敵」


私の言葉にノアは首を振った。

「君は!君の未来が森に埋もれるなんて」

「森に埋もれて暮らせる未来なんて最高だわ!」

ノアの言葉に被せて言うと、ノアはグッと押し黙った。


「おばば様!いいわよね?!」

私が身を乗り出して笑顔で尋ねると、おばば様はゆるゆると首を振った。


「まずは学院へ学びに行くのよ」

私は顔を顰める。


「もう一度は学んだわ。私もノアと一緒にここで暮らしたいわ」

「スピカ!」

必死に私を止めようとするノアを無視する。


「どうして今迄思いつかなかったのかしら。私はユリウス王子の婚約者では無いのだから無理に学院に通う必要なんて無いわ。私もノアとおばば様に色々学びたいわ」

「スピカ。それは無理よ」

「自分が何で死んでしまったかも覚えていないくらいの私がおばば様に学ぶなんて烏滸がましいのはわかってる。私はねスイーツ担当になるわ。おばば様の焼き菓子はどれも絶品だもの。毎日毎日手伝うわ。だから、いいでしょう?」

私が上目遣いで見て頼んでも、おばば様は首を縦にふることはなかった。


「だって、だって私。ノアと一緒にいたいのよ・・・」

ポツリと呟くように言えば。


「それなら尚更学院に行かなければね」

諭すようなおばば様の言葉。


「何故ならノアを賢者候補として私の推薦状を持たせて入学させるのだから」


「ノアを入学させる?」


「賢者はね、最初から森に籠もっていてはなれないのよ。世の中を知らなければね。かく言う私も学院で色々学んだわ。たくさんの人と交わることで経験を積むのよ」


私はおばば様の言葉に大きく頷いた。


「ノアと学院に通えるのね!それなら私も学院に行くわ!ノアとたくさん経験を積んで、そうしたら森に帰って来るわね」


「ふふふ。それには、スピカも学院の試験に合格しなければね」


「だ、大丈夫よ。たぶん。だって一度は受かっているのですもの。ねぇ?」


小首を傾げて尋ねる私に、おばば様はただにっこりと笑った。


「・・・。い、一応復習をしておこうかしら?おばば様ごちそう様。ノア!帰りましょう!」


私は慌ただしく立ち上がるとノアを引き連れ屋敷へと帰ったのだった。






読んでくれてありがとうございます

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