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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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王子来訪

ユリウス王子がやってきた。

「スピカ、怪我の具合はどう?」

金髪碧眼のキラキラしたユリウス王子が爽やかな笑顔を浮かべて訊ねてくる。


前回は二泊三日の滞在だったのに、今回は予定よりも一週間も前倒しで来られたのだ。


何故なのかしら。


あ、私が木から落ちて死に戻りをしたからなのね。


前回はそんな馬鹿な事はしていない。


「スピカ?」

「あっ、はい。ええ、大丈夫です。ご心配下さりありがとうございます」


私はペコリと頭を下げる。


「木から落ちるなんて、お転婆なお姫様だな。気をつけなきゃいけないよ」


相変わらず素敵なユリウス王子。

物語に出てくる王子様のようだとずっと思っていた。


こんな素敵な人が私を選んでくれた。


それだけで自分に価値がついたような気がしたの。


それなのに。


「スピカ、どうして泣くの?」

ユリウス王子の慌てた顔。


「え?」

頬に手を当てると、確かに涙が一粒こぼれていた。


「スピカ」

ミアプラお姉様が駆け寄ってきて私の肩を抱く。


「どうしたの?ユリウス王子に会って緊張しちゃったのね。お姉様がいるから大丈夫よ」

「ミアプラお姉様」

私を安心させようと顔を覗き込み優しく微笑む。


ミアプラお姉様が大好きよ。


それなのに、その優しさが痛いわ。


「スピカごめんね。婚約者に緊張させるなんて可哀想なことをさせてしまったな」


ユリウス王子が大好きよ。


けれども、その優しさが辛いわ。


だって私は3年後、二人に婚約解消を頼まれるとわかっているのに。


ユリウス王子、ミアプラお姉様が好きなのでしょう?


ミアプラお姉様もユリウス王子が好きなのでしょう?


どうして、今言ってくださらないの?


どうして、前回言ってくださらなかったの?


三年間、ユリウス王子だけを見てきたの。


私の未来はユリウス王子の横だと信じていたの。


あんなに幸せな夢のような日々を三年間も過ごした後での婚約解消は痛すぎたのに。

 

今回も言ってはくださらないのね。

私は二人の気持ちを知っているのに。


「大丈夫ですわ。ごめんなさい、感極まってしまったの。ユリウス王子に会えて」


苦しい心を隠して、私はユリウス王子に笑いかける。


「来てくださって嬉しいです」


ユリウス王子は軽く目を瞠って「泣くほど喜んでくれたなんて。ありがとうスピカ」と微笑んだ。


私達3人は、これから始まる三年間の茶番に足を踏み入れるのだ。


ユリウス王子、ミアプラお姉様。

二人の障害物として、立ちはだかる私を赦してね。


私には他にどうすることもできないのだもの。


笑顔を浮かべながら、泣き出したい気持ちと私は戦っていた。


前回と同じ様に時を過ごそうと思っていたの。


そうすることがどれだけ苦痛なのかもわからずに。


これからの三年間は、ユリウス王子との薔薇色の未来を夢見てうっとり過ごした三年間とはまるで違うのだわ。


私はため息を飲み込んで笑顔を張り付ける。


笑え、笑え、笑え。


長い十日間になりそうな予感しかしなかった。
















読んでもらえて嬉しいです。

ありがとうございます。

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