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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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護衛騎士になるのは

賢者のおばば様の焼きプディングを充分に堪能した私達。

おかわりの紅茶を頂いた後、ふと周りを見回すとプロキオンもリズも森の精霊達もくつろいで過ごしていた。

ラベンダーちゃんに至ってはポケットでスヤスヤ眠っている。


「それじゃあ、そろそろお暇するわね」

今度はおばば様は私を引き止めなかった。



通い慣れた森を難なく進んで行く。


森の精霊はやっぱり森の出口でいなくなった。


けれども実体化したリズだけは私の肩に乗ったまま屋敷へと入ってきた。


何となくそんな気はしていたのだけれど、レグルスお兄様とミアプラお姉様は既に家に帰って来ていた。


「スピカ、どこに行っていたんだい?」

「ごめんなさい。賢者のおばば様のところへ行っていたの」

私は素直にお父様に謝り、レグルスお兄様やミアプラお姉様にも同じ様に謝罪する。

「いいんだよ。怒っている訳じゃない」

お父様は優しい瞳で私を見て、それから肩のリズを見る。

「まさか。この子は精霊なのか?」

「この子はリズ。森の精霊よ」

リズは肩から私の手の甲へと下りて来る。

その愛くるしさに目を細めてしまう。

お父様は感嘆の息を吐きながらリズを眺めた。


「ところでお母様はどうされたの?」

この場にいないのを不思議に思い尋ねれば、レグルスお兄様とミアプラお姉様は目を見交わし口をつぐみ、お父様は少し躊躇った後で口を開いた。


「レグルスとミアプラに神官が付き添って来ていたのだよ。もう帰ったのだけれどもね」


それとお母様と関係があるのかしら?

私はお父様の次の言葉を待った。


「以前、アルタイルに良く似ていたと話に上がった神官がいたよね」

「ええ」

「その子が来ていたんだよ。ソフィアのことを懐かしそうに慕うように見ていたよ。それで彼女は少し感傷的になってしまったようでね、少し休んでくると部屋に行ってしまったんだ」

ああ、そうだったのね。

その人が来ていたのならお母様の心は激しく揺れたでしょうね。

お母様にはアルタイルお兄様のことはまだ生傷のように痛むことだもの。

「それで、その方は本当にアルタイルお兄様の生まれ変わりなの?」

「姿形はとても良く似ていたよ」

お父様がそう言う。

「僕たちに優しく接してくれたよ」

続いてレグルスお兄様が言う。

「一度も会ったことは無いはずなのに不思議と懐かしい気持ちになったわ」

ミアプラお姉様もそう話す。

「それなら皆、アルタイルお兄様の生まれ変わりだと思うのね?」

私が訊ねると。

「それはわからない。私はお父様と呼ばれなかったしね」

少し寂しそうにポツリと語るお父様。

「そうだったらいいなと思うけど」

レグルスお兄様の言葉にミアプラお姉様が頷く。

「ただ一つ気になるのは、彼は精霊を従えていた」

「え」

「鳥の精霊だよ」

それではまるでお母様の双子の・・・。

「オーガストの様だろう」

お父様の言葉に頷く。


「彼はスピカに会ってみたいと気にしていた。多分森へ行っているのだろうと話すと鳥の精霊を連れて五分程森へ入ったが、その後急に興味を無くしたように神殿へ帰って行ったのだよ」


それは何だかおかしな話に思えた。


「この前の時も神殿の奴が森へスピカを探しに来ていました」

レオンの言葉にお父様は眉をひそめる。


「益々嫌な感じしかしないな」


「プロキオン達が警戒していたのは、見知らぬ精霊が森に来たのを察知したからなのかな」


ノアが私を見ていう。


「そうだったのかしら。私もその人に会ってみたかったけれど。何だか会うのが怖いような気もするわ」


「お父様。神殿で聖女認定を受ける時すんなりと認定を受けたのですが・・・」

ミアプラお姉様がふと思い出したとでも言うように口を開いた。


「あの方。神官のアルヴィン様に、スピカの色味を聞かれたの。私と同じですって答えたら、僕と同じ色味の兄弟はいないの?と悲しそうな顔をされたわ」


「そうか・・・」


しんみりとした空気が流れる。


「今話すことじゃないかもしれませんが、そろそろ僕とミアプラは学院に一度戻ろうと思います」


帰って来てすぐに学院に立つというお兄様。


くしゃっと顔を歪めた私を宥めるようにお兄様が早口で言う。

「直ぐに卒業式や終業式がやってくるよ」

「えぇ。そうね。直ぐに長期休暇に突入するわ」

ミアプラお姉様もそう言うけれど。

淋しいのは仕方ないでしょう?


あら?

でも待って。

そうすると私が死に戻って一年が経つということではないの。


涙は奥へ引込み、焦りのような感情に呑み込まれる。


「とりあえず、ノアとレオンは騎士科への入試の時に会うのを楽しみにしているよ」


魔法科と騎士科は実技が主なので、普通科よりも一足早く入試があるのだ。


「ノアには少し厳しいかもしれないが。それでも挑むと決めたのか?」

お父様が心配そうにノアを見る。

「はい」

ノアの返事に迷いは無かった。

「ノアは私の護衛騎士になるの。だから平気よ。きっと受かるわ」

私は励ますように口添えをする。


「俺がスピカの護衛騎士になる」


急にレオンが真顔で宣言した。


「えっ?!」

「何だよ。俺じゃ不満なのか?」

狼狽えた私を不機嫌そうに見るレオン。

「そうじゃないけど。でも、言い出すのが早くないかしら?2年程・・・」

「前回と違う未来が欲しいんだろ。前回と違うことが多い方が良いだろ」

「そうだけれど。ノアもレオンもなんて宝の持ち腐れになっちゃうわ。私はノアに頼むから、あなたは大好きなミアプラお姉様の護衛騎士になりなさいよ」

そう言った時、私は何か失言をしてしまったのだろう。

レオンが息を止めて私を見つめてきた。

レオンを傷つけてしまったのだとわかった。

何に傷ついたのかはわからなかったけど。

「だ、だってね。お姉様は聖女様でユリウス王子の婚約者なのよ。護衛騎士を持つにふさわしいわ。レオン、あなたはとっても優秀なのだから・・・」

レオンは最後まで話を聞かずに、私の言葉を遮った。

「俺は。俺が護衛騎士になりたいのはスピカだ」

そんな傷ついた様な瞳で真っ直ぐに見られたら、何も言えなくなるじゃない。

「スピカは嫌なのか?」

「い、嫌じゃないけど・・・」

ずるいわ。

私の一言でそんなにホッとした様な姿を見せるなんて。

いつもと違うからいじらしく感じてしまうじゃないの。


「スピカはカミーユの宝だ。レオンもノアも守ってくれると言うのならこんなに心強い事は無い。二人とも頑張れよ」

お父様に激励されて双子は声を揃えて返事をする。

私は二人を見守ることにしたのだった。












読んでくれてありがとうございます

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