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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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眩しく無いとは?

ユリウス王子が、私とミアプラお姉様の誕生会へ来てくださる。

まぁ、学院が始まるまでの長い休みの避暑を兼ねてのことなのだけれど。

私の婚約者となったので。


辺境の地に王子来訪とあって、我が領は活気づいていた。

前回の私は、それこそ浮かれて過ごしていたのだけれど。


気が重い。


どんな顔をして三年後、私に婚約解消を言い渡すユリウス王子と会えばいいのだろうか。


ミアプラお姉様は戻ったときから傍にいるから、気まずいも何もないのだけれども。


前回の浮かれ気分は欠片も無く溜め息をこぼす。


「なんだよ、ノアじゃないからって。溜め息つくことないだろ」

上を向くとレオンの不満げな顔が。


今日はダンスの先生が来てレッスンの日なのだけれど。


いつもは私とノア、レオンとミアプラお姉様が組んで練習をするのだけれど、今日はノアはお父様と賢者のおばば様の所に行くと出掛けてしまっていた。


私も行きたいと駄々をこねたけれども、誕生会で踊る主役なのだから練習しなさいと置いていかれた。


そういう訳で、いつもは組まないレオンと私。ちょうど夏休みで家にいるレグルスお兄様がミアプラお姉様の相手をすることになったのだ。


「別に、そういうつもりで溜め息を吐いたんじゃないわ」

「じゃ、なんで」


「そこ!私語は慎みなさい」


先生に怒られて、二人で口をつぐむ。


表情はムッとしているけれども、レオンは意外にも優しく私をリードするダンスをした。


もっと乱暴に扱いそうなのに、レオンのダンスは紳士的なのね。


そういえば、いつもノアとばかりでレオンと踊ることなんてなかったわ。


ノアよりも背が高いレオンと踊るのは思っていたよりも楽だった。


自分がいつもより上手く踊れているようで楽しくなってしまう。


「知らなかったわ。レオン、あなたダンス上手だったのね。楽しい」


思わず口に出せば、レオンが私の顔を見て顔を赤くさせる。

急にリズムが崩れて先生に怒られてしまったが、ダンスの時間は思ったよりも楽しく過ぎていった。



ダンスの後の昼食の途中で、お父様とノアが帰って来た。


お父様の隣にいるせいか小さいノアが更に小さく見える。


なんだかノアはずっと元気が無いのだ。


お父様は席につくと食事をしながら話始めた。


「王家から通達が来て、誕生会の前日から二泊三日で我が家に滞在する予定だったユリウス王子だが、先日怪我をしたスピカの見舞いも兼ねて少し早めにやってくるそうだ」


「え」

固まる私。


「レグルスとも遊びたいし、来週の頭に来る予定だと」


嘘でしょ。

前回なら小躍りして喜んだかもしれないけれど、今回は全然嬉しくないわ。


「良かったな、スピカ」

「え、えぇ」


なんとか作り笑いをして答えると、心配そうにこちらを見るレオンと目があった。


おばば様の所に行く途中でポツリともらした婚約解消の話を覚えているのだろう。


私が大丈夫の意味を込めてウインクを飛ばすと目を丸くして固まり、その後何故か怒った顔をして顔も首も赤らめてよそを向いてしまった。


ちょっと傷つくんですけど。そういう態度。


私は憮然として、デザートの木苺のゼリーを口に入れる。


チラッとノアを見ると、相変わらず浮かない顔で食事をしていた。


食事の後、皆で談話室に向かう途中ノアの耳元で「しっかり食べなきゃ大きくなれないわよ」と囁く。


「いくら未来で大きくなると言われたからって、そんなんじゃ大きくなれないわよ」

ノアは何か言いたげな目をして黙り込む。


そうして眼鏡を外して私を見る。


レンズを通さないノアの焦げ茶色の瞳は私を見ても目を眇めたりしなかった。


「やっぱり眩しく無い」と呟くノア。


この間から、それは一体何なのかしら?


「ノア、もう眼鏡を外していいんだよ」


お父様がいつの間にか私とノアのところに来て、ノアの手から眼鏡を取った。


その瞬間クシャッと顔を歪めたノア。


私は慌ててお父様の手から眼鏡を掴んでノアに返す。


ノアはうつむいて「ありがとう」と小声で言うと、眼鏡をかけた。


今度はお父様が悲しげに顔をしかめたので、お父様の腕にぶら下がるように抱きつき見上げた。


お父様は少し目を細めて、私を見て微笑んだ。


「よし、じゃ行こうか」


ノアと私はお父様に背中を押されて歩き出す。


ちらりとノアを見たけれど、ノアはこちらを見ることはなかった。
























読んで下さりありがとうございます。

いいね、ブックマーク、評価をつけてくれた方ありがとうございます。

読んでくれる方、楽しみにしてくれている方がいるのだと、書く気力が湧き出ました。

これからもご愛読下さる様頑張ります。

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