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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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カミーユ領へ

ミアプラお姉様の聖女の式典等一連の行事が終わった時には学院の新学期が始まっていたけれど、『カミーユ領から聖女が誕生した!』と喜ぶ領民の為にレグルスお兄様とミアプラお姉様は一緒に王都から帰ることになった。


帰路には人々が溢れ歓声と祝福の声が私達の馬車に向かって投げかけられた。

時折窓から顔を見せ、笑顔で手を振るミアプラお姉様に頭が下がる。

疲れているだろうに長い道中、笑顔で居続けたのだから。


「ごめんなさいね、この声援も祝福も全てスピカのものだったのに」

ミアプラお姉様がしんみりと申し訳無さそうに私に言ったけれど、私にしてみれば感謝しか無い。


「ミアプラお姉様。私ではお姉様の様に振る舞うことなんて、とてもできなかったわ。荷が重すぎるもの。本当にありがとう。ミアプラお姉様大好きよ」

ミアプラお姉様は目を瞬いて涙を飛ばすと、また窓を開いて沿道の人々に笑顔で手を振った。



カミーユ領に入ってからが凄かった。

我が領地にこんなに人々がいたのね!と驚く程、街道が賑わっていたのだ。

「まるで、お祭りのようね!」

領民の喜ぶ笑顔や歓声に溢れ、見ているだけで高揚としてくる。

ミアプラお姉様は休む時が無くて大変だろうけれど、私は窓から眺めて楽しむことができた。

活気づき人々が集う姿はなんて胸が踊るのかしら。

カミーユ領の未来は明るく輝いている様だわ。


まるで凱旋パレードの様に馬車は街道を進む。


カミーユ邸の前ではベンジャミン叔父様をはじめとする仕える人々が整列して迎え入れてくれた。


「兄上、神官長から矢継ぎ早に聖女を神殿に寄越すように催促の魔法書簡が舞い込んで来ているのですが」

「全て、捨て置け」

お父様は興味なさそうに返事をしてお母様と屋敷の中へ入っていく。


王都に居た時からそうだったのだけど、どうもお父様もお母様も神殿と懇意にするつもりは無いようだ。


この国は自然を崇拝する精霊教を国教としているのだけれど宗教の自由は有り、近隣の国々で崇拝されている創世神を祀る神殿が我が国にもある。


神殿のお墨付きにしてあげるからミアプラお姉様を一度神殿に寄越すようにと何度も催促が来るのだ。


お父様は神殿のお墨付き等いらないし、そもそもミアプラお姉様を聖女として立たせたのはユリウス王子と私が婚約解消し無事にミアプラお姉様と婚約させることだったのだから、もうこれ以上事を大きくしたくはないのだ。


それ以外にも、なんだか神殿を嫌ってさえいるような雰囲気を感じた。


「あいつらのくだらん予言に振り回されるのは懲り懲りだ」とお父様が吐き捨てていたから。


まさか後日、痺れを切らした神官達が我が領に乗り込んでくるとはこの時は思いもしなかったのだけれど。



帰って来た翌日、お父様に「旅の疲れが取れたのなら明日鈴の回収に行かないか?」と誘われたので私はもちろん行くと頷く。


森に行きたいと思っていたので嬉しかった。


王都は喧騒で賑やかで楽しかったけれど、反面森の静寂に包まれたいと思う気持ちもあったから。


朝出発の準備をしていると、ベンジャミン叔父様がやってきてお父様に耳打ちをし、それを黙って聞いていたお父様が眉を寄せ「悪いが、至急出なければ行けなくなった」と慌ただしく出て行った。


私は気を取り直して、荷物を詰めていく。

「辺境伯様が戻ってからにしないの?」

ノアの言葉に私は首を振る。

「ただでさえ春先に回収すべき鈴だったのよ。それを王都に出掛けてしていなかったのだもの。それに私森に行きたいわ」

今回の鈴の回収もノアが手伝ってくれることになっていた。

お父様がいなくても、二人で半分回収できれば上出来ではないか。

「俺もついて行ってやるよ」

レオンが声を挟んできた。

私とノアは顔を見合わせる。

鈴の回収にレオンも参加したことがあったけれど、木に掛かっている鈴を見つけるのが恐ろしく下手なのだ。

どこだ?どこだ?と言うのでノアと二人でもう少し上、右、違うもうちょっと奥の枝の・・・とレオンへの指示が大変だし、自分達でサクサクと取ってしまった方が楽で早く出来るのだけど。

私達の無言に何かを感じたのか、レオンが「ご、護衛でついて行ってやるって言ってるんだよ!」と鼻をふくらませて意気込んで詰め寄って来た。

「護衛ならプロキオンもラベンダーちやんもいるし・・・」

「なら!荷物持ちしてやるって言ってんの!」

レオンがどうしても行きたいようなので、お昼のお弁当はレオンのリュックに詰めて持たせることにする。


ノアはやっぱり良く覚えていて、見落とすこと無くこの間の鈴を回収して行く。


私はかご持ち係でノアが取った鈴を受け取り、レオンにはそこにあるわよ、と指示を出すけれど相変わらず見つけるのが下手過ぎる。

絶対私とレオン代わった方がいいのだけれど。


ノアが十個回収する間にようやく一つ見つけて得意気に私に見せてくるレオン。


レオンは褒めて伸ばすと言っていたのはお父様だったかしら、レグルスお兄様だったかしら。


その間も、森の迷子もとい森の精霊達は私の周りを囲んでいるのだけれど。


こんなに存在感を増し実物に近く感じるのにノアやレオンは何も感じていない様だ。


私はそっと彼らを撫でたりするのだけれど、ノアやレオンは彼らをすり抜ける。


森の精霊達は私には実体として見たり感じたりできるのに、ノアやレオンには空気のように何も感じられないようなのだ。


森の精霊達は鈴を集めてくれて、私に渡してくる。


「ひっ」と息を呑んで青くなったレオンには、鈴が宙を漂い私の手に渡った様に見えたのだろう。


「は、はは。魔法だよな。幽霊な訳無いよな」

「ふふふ。私魔法は使えないわ」

いつもえばっているレオンが震えるのが可笑しくて、笑って答える。

嘘はついていないわ。

怯えるレオンとは逆に羨望の眼差しで見ているのはノアだった。

「あぁ。彼らがいるんだね」

ノアにも見えたらいいのに。

もう白い影ではなくて、白くうっすら輝く動物なのよ。

こんなに可愛らしいのだもの、見たかったわよねノアも。


森の精霊達の手伝いのおかげで全ての鈴を回収出来てしまった。

お父様はさぞ驚くだろう。


お昼のお弁当をのんびりと食べて森で寛ぐ。


森の薫りを吸いながら森の精霊に囲まれて寛ぐ一時は、なんだか贅沢な時間な気持がした。


プロキオンもラベンダーちゃんも気持ちよさそうに寛いでいる。


「私やっぱり一番ここが好きよ」

そう口にして、春の陽気に眠気が襲ってくる。


うとうとと寝てしまいそうな私を止めないのは、ノアもレオンもすっかり寝落ちしているから。


「あぁ、しあわせ・・・」

森の精霊達に寄りかかりながら、私も眠りに落ちていく。



外の喧騒も知らずに私達は至福の午睡を過ごしていたのだった。





読んでくれてありがとうございます!

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