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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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聖女誕生

私の記憶からひねり出したのは二つの出来事だった。


一つは春休み明けに時計塔の故障で始業のチャイムが鳴らなくなってしまったというお話。

私は実際に見てはいないのだけれど、レグルスお兄様からの手紙に書かれていた事。

原因は鳥の巣が出来ていたから。

巣作りに集められた、沢山の枝がこぼれてつまって時計が回らなくなってしまったのだという。

何だか面白かったので記憶に残っていた。


それから、あと一つは学院祭を観に行った時の出来事。

春休みが明け初夏になると学院祭が行われる。

その開会宣言をする国王様が立ち上がった時、王冠の左側にあるルビーが転げ落ちてしまったのだ。

留め金が緩んでいたからということだったけれど、開国以来こんなことは無かった、不吉だと皆が大騒ぎしたのだ。

別に宝石が取れただけで無くなった訳でもないのにオーバーな事だと思ったからよく覚えている。


「こんな大したこと無い話しか覚えてないのだけれど」


毎日頭を捻ったのに思い出せたのがこの2つとは、インパクトが弱いわよね・・・と申し訳なく思う。


「いや、とても良いよ。王冠は王室で徹底管理されている物だ。その留め具の外れ等、思いもよらないだろう。王が信じれば良い話なのだから、効果は抜群だろう」


お父様は、うんうんと頷いて王城に魔法書簡を飛ばした。


【カミーユ家第三女ミアプラが死に戻りの聖女となった旨届け出ます】


その一文に王城は沸き立ったと言う。


ミアプラお姉様を迎えに王家の立派な馬車がやって来た。

覚悟を決めたミアプラお姉様は、美しい凛とした姿勢でお父様と馬車に乗り込んだ。


お父様は戦に出向く顔をしていた。




二人を見送った5日後に、魔法書簡が届いた。


ミアプラお姉様が無事死に戻りの聖女と認められたと言う事。


私との婚約は解消され、ミアプラお姉様とユリウス王子が婚約されるという事。


聖女誕生のパレードやら祝賀会が行われるので、王城へ来るようにという事。


「すごいわ!ミアプラお姉様はやり遂げたのね!」

私は感動のあまり涙目になってしまった。



聖女として国民の前に立つお姉様は、本当に美しかった。

純白の豪奢な衣装にも決して負けないミアプラお姉様の美しさは、後の世まで語り継がれるだろうと胸が熱くなった。

「本当にこれで良かったのか?」

レグルスお兄様が隣からそっと囁いてきた。

「皆に熱狂的に迎えられていたのはスピカだったのに」

「いいえ。ミアプラお姉様よ。私はあそこに立てないわ」

あんな風に優雅に淑やかにバルコニーから手を振るなんて出来やしないわ。

「あぁ、本当に水の妖精のようだわ。カミーユのアクアマリンだわ」

私は誇らしさに胸をはる。

空は雲一つ無くどこまでも青く。

春の爽やかな風が流れて行った。

私の心も晴れ晴れとして、眩しいばかりの祭典だった。



祝賀会ではミアプラお姉様とユリウス王子の婚約も正式に発表され、二人のダンスを見ながら、やっとここにたどり着くことができたと感極まって泣きそうになってしまった。


そんな私の姿が婚約解消をされた可哀想な妹だと思われたようで、多くの憐憫を誘ってしまった。


祝賀会でウィル様が私をダンスに誘って求婚をしてくれたのを筆頭に次々に縁談を申し込まれたのだ。


「同情して下さってありがとうございます。ウィル様は、本当に好きな方と結婚して下さいね。ウィル様のことを心から愛する人と」

私はシャーロットの顔を思い浮かべながら、この優しいウィル様とうまくいくといいな、と思った。

ウィル様は一瞬真顔になって、言葉につまった様子だった。

私は沢山の感謝を込めて微笑んだ。

何故か悲しそうに笑い返したウィル様。

「ウィル様?」

「弱みにつけこもうとした天罰かな」

ぽそり、と小さく何か呟いて。

その後は何事もなかったかのようにいつものウィル様だったのだけれど。



そうやって聖女誕生の一連の行事は過ぎていったのだった。















腕を負傷してしまい、入力を休み休みする為、更新に時間がかかって遅くなっています。

続きを楽しみにしてくれてる方、ごめんなさい。


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