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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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家族会議3

「話はまとまったわね」

お母様の言葉にミアプラお姉様は心細げに眉を寄せる。

「もしも嘘がばれてしまったらカミーユ家はどうなってしまうの?」

ミアプラお姉様は震える声で皆を見た。

「いざとなったら、国を滅ぼしてしまえばいいのよ」

お母様がいつもの優しげな笑顔でとんでも無いことを言う。

私達子供は目を見開いてお母様を見た。

「スピカ」

「は、はい」

「あなたの隣にいるプロキオンは火の精霊獣なのよね」

「ええ」

「そうして、ポケットで眠るラベンダーちゃんは竜」

「ええ」

お母様は何を言おうとしているのかしら。

「あなたは森の精霊達にも、守られている」

「・・・そうだけれど?」

「つまりあなたは国どころかこの世界を手に入れられる力を持っている」

「えっ?!」

何が何なのかわからないわ。


「私の生家は隣国の古より続く精霊使いの一族で、代々将軍を務める家だった。戦のスペシャリストよ。精霊一体を味方につければ、一大隊を潰せると言われているの。けれども長い年月の中で、精霊を使役できる人は生まれなくなってしまい、家は没落し取り潰しになってしまったのだけれども」

私達子供はお母様の生家の話を聞くのは初めてだった。


「言い伝えでは、森の精霊を一体味方につければ一大隊を潰せると。地・水・火・風の四大精霊獣を一体味方につければ一国を簡単に潰せると。伝説の竜・麒麟・鳳凰・霊亀の四大霊獣を一体味方につければ一大陸を潰せると」


お母様の言葉に圧倒されて静まり返る室内。

私はそっとプロキオンとラベンダーちゃんをみつめる。

愛玩動物の様に可愛らしい彼らが、国を潰すとか大陸を潰すとか、とても想像がつかなかった。

森の精霊を思い浮かべても、白い無垢な動物達にしか思えず、一匹で我がカミーユ領や隣接しているダスク領ハーヴィル領の三連合軍、一大隊を潰すだなんて、凶暴性はまるで感じられないのだ。


でも、お母様の凛とした態度は緩まず、それが真実であると告げていた。


「だから何も悩む必要はないのよ。いざとなれば潰せばいいの」

戦の女神はこういう顔で微笑むのだろうかと思えるほど、お母様は凶悪で美しい笑みを浮かべた。


私はごくりとつばを飲み込み、周りを見回す。

お母様をうっとりと見つめるお父様、レグルスお兄様、ベンジャミン叔父様を順に見た。

ミアプラお姉さまは、か細く震えて怯える自分の肩を抱いていた。

レオンは目を輝かせて私を見る。

ノアは、何の色も感じさせない瞳で私をただ見ていた。


「私は国を潰すつもりなんて無いわ」

そんな恐ろしいことをする為にプロキオンやラベンダーちゃんといるのでは無い。

森の白い精霊達も、ただ優しいだけの存在なのだ。


「あぁ、スピカ。悲しい顔をしないで。私はただ事実を述べただけなの。そうしろと言っているのではないのよ。あなたにはそれだけの力がある。いざとなったらそう出来るというだけのお話よ」

「え、えぇ」

私は何とか頷いた。


「この事実が漏れないように、ミアプラ、あなたは完璧に死に戻りの聖女を演じるのよ」

「わ、わかりました」

可哀想なミアプラお姉さまは、カタカタ音がしそうな程震えていた。

私はお姉さまの手を取る。

「ミアプラお姉さま、ユリウス王子と一緒になるためですわ」

私の言葉に揺れていた瞳が強い意思を持ったように定まった様子だった。


「わかったわ。私きっと演じ切ってみせるわ」

「よく言った。それでこそ私の娘ミアプラだ」

お父様はがっしりとミアプラお姉さまの肩を掴んだ。


あぁ、良かった。

穏便になんとかなりそうだわ。


こうして、カミーユ家の家族会議は無事終了したのだった。

読み続けてくれてありがとうございます。

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