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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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二度目の体験入学

体験入学用のクラスは、普通クラスも騎士クラスも魔術クラスも合同で分けられる。

だから、ペアの先輩が魔術クラスのユリウス王子になってしまったりするのだ。

まぁ、婚約者だからと大人の事情も考慮されたのだろうけれど。

Aクラスに分けられた私は席について周りをキョロキョロと見回す。

レオンはCクラスだった。

前回はノアと一緒で周りをそっと観察するくらいだったけれど、今回は一人きりなので知り合いが誰かいないかしらと探していた。


あ、あの子はカレン・ジェンガー。

ジェンガー男爵の長女で、人見知りの私と仲良くしてくれた温厚で優しい子。

焦げ茶の腰まであるストレートの髪が綺麗で、少し垂れ目がちな緑の瞳はカレンの可愛さを引き出している。

でも、カレンは今アメリア・バーリー男爵令嬢と会話をしている。


他に視線をそらすとシャーロット・エマ・フォンダー侯爵令嬢と目が合った。

ゴージャスな金髪の巻き毛で、大きな猫目の彼女は一見冷たく見える無表情で迫力のある美人なのだ。

でも私と同じ人見知りで表情が固まってしまっているのだと知っている。

前回はさっと目をそらしてしまうという失礼を冒してしまった。

シャーロットは孤高の存在でクラスで凛と一人でいたけれど、月見ピクニックの行事で同じ班になり本当はとっても気配り屋さんで可愛らしい方だとわかり仲良くなったのだ。


今回は早くから仲良くなりたいわ。

私はにっこり笑ってシャーロットに近づいた。

シャーロットは驚いたように目を瞬かせ、ぎこちなく私に微笑んだ。

「はじめまして。シャーロット・エマ・フォンダーですわ」

「はじめまして。スピカ・ルクス・カミーユです」

「まぁ!あなたがユリウス王子の婚約者の」

シャーロットの一言でクラスのざわめきが止まる。

皆の視線が私に注がれてるのがわかった。

あぁ、どうしよう。

もうすぐ解消する予定なのに。

私の顔色を見て、シャーロットが慌てて「ごめんなさい。内緒にしていたかったのね」と謝ってきた。

「いいえ。皆さんご存知の事だと思いますから」

公表されているのだから仕方がないことだわ。

再びざわつく室内。

「カミーユのアクアマリンと比べたら随分と・・・」

「思っていたよりも地味ね・・・」

いやだわ。

どうして、こういう言葉は小声でも耳に届いてしまうのかしら。

シャーロットは、周りを見回し眉を寄せる。

「あなた達!」

私は叱責の声をあげるシャーロットの腕を掴む。

「あの。いいの。本当のことですもの。私のことで怒ってくれてありがとう」

「カミーユさん」

「私のことはスピカと呼んで下さい」

にっこりと微笑めば、シャーロットも仕方なさそうに笑う。

「スピカ。私のことはシャーロットと」

やったわ!私シャーロットと早々に友達になれたみたい。

「スピカ、あなた使い魔持ちなのね」

シャーロットは私の足元のプロキオンに目を止める。

「可愛らしいわ。いいわね。あなたは魔術クラスなのね」

「いいえ。あなたと同じ普通クラスよ」

「あら。私が普通クラスってどうしてわかったの?」

あっ!

私ときたらまた失言を。

どうやって誤魔化そうかと視線を右上に向けた。

「それよりも、使い魔がいるのになんで普通クラスなの?勿体無いわ」

私が何か言うよりも早く、シャーロットが話題を変えた。

「私、魔力は使えないの」

「えぇっ!それなのに使い魔を持っているだなんて!」

シャーロットの大きい瞳が更に大きく見開かれる。

「良かったら触ってみる?プロキオンはとっても大人しくてよい子なの」

「いいの?!私本当はずっと触ってみたくて堪らなかったのよ」

シャーロットは、うっとりとした瞳でプロキオンをみつめた。

「あぁ、なんてふわっふわ。こんなふわふわのこ知らないわ」

気づくと、私達の周りに皆が集まってきていた。

「あの。私も触らせてもらっていいかしら」

ジュリア・リン・ソウダクト伯爵令嬢が好奇心満面の笑顔で声をあげた。

「ええ。良かったらどうぞ」

「すっごい!ふわっふわー!」

「私にも触らせて下さいな」

「僕にも」

瞬く間にクラス中、プロキオンの可愛らしさの虜になってしまった様だ。

「うふふ」

ふわっふわの信じられない触り心地でしょう?

とっても可愛らしいのよ。

プロキオンが愛でられると私まで嬉しくなってしまう。

プロキオンのおかげで皆と仲良くなれたような気がするわ。


「このクラスは随分と賑やかですね」

先生が入ってきて慌てて席につく。

体験入学の時は、魔術クラスのネイサン先生だったわ。

ネイサン先生は、私に目を止め「あなたがカミーユの真珠・・」と呟いた。

それからプロキオンに目をやる。

「素晴らしい」と溜め息を一つしてからハッとしたように、クラス中を見回した。

「ようこそ。王立学院へ。この体験入学は、学院の生活はどういうものかを体験してもらう一週間です。寮の生活然り。そこで君達に最上級生がペアとして補助に付きます。何か不安があればペアを頼って下さい。質問があればペアに訊ねて下さい。良き先輩が君たちを導いてくれることでしょう。今から各々のペアを発表します。今日はペアの先輩に学院内を案内してもらうことになります」


そうして発表されたペアは前回と同じくユリウス王子だった。

シャーロットのペアはウィル様だった。

シャーロットは発表を受けて顔を真っ赤にさせていた。

私の視線に気づいて両手で頬を押さえる。

あら。

まさか、この反応は。

私がそのまま視線を送っていると、シャーロットの耳まで赤くなっていく。

後で彼女が私の耳元で「内緒にしてね。私ウィル様に憧れてるの」と教えてくれたのだけれど。

なんて可愛らしい方なのかしら。

前回は気づきもしなかったわ。

同じことを繰り返しているようで少し違う世界。

なんだか新鮮だわ。



「やぁ、スピカ。元気だったかい?」

久々のユリウス王子。

柔らかな笑顔にときめきそうになる。

「はい。ユリウス様」

目をそらさず、笑顔を顔に貼り付ける。

二度目の体験入学が始まりを告げた。













読んでくれてありがとうございます

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