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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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SIDEミアプラ

私には真珠のように輝く妹がいる。


そのほんわりとした温かな光が羨ましくて、私もスピカのようになりたいと言ってお父様を困らせた。


お母様はあなたの方が美しくて綺麗なのに何をそんなに羨むの?と言う。


スピカの光を見ることが出来ない人だから。


お父様、レグルスお兄様、ベンジャミン叔父様、ノア、私は見えるのだけれど、お母様を筆頭にほとんどの人が見えていないのだ。


見えない人は可哀想だと思う。


あんなに心落ち着く温かな光を、真珠のようなスピカを見ることができないなんて。


お父様が言うには学院の魔術クラスの首席もしくは次席ぐらいまでしか見えないのではないかという。


つまり、スピカの光を見ることのできる私やレグルスお兄様、ノアは、学院の首席か次席は約束されているのだ。


私は他の人に比べ容姿が優れていると褒められる事が多い。


それなのに謙虚で素晴らしいと褒められるけれど。


常に自分の前に自分よりも美しくて尊い光を放つ妹を見ているのに、何をそんなに驕ることができようか。


その当人のスピカだけれど、本人にはその光が見えないようで、他の人と同じ様に私の容姿を褒め、自分は私よりも劣っていると思い込んでいる様だ。


スピカとノアは森に選ばれた者でもある。

アルタイルお兄様が亡くなった為、私達の世代にはもう出ないだろうと言われていたのに。

小さくて華奢な二人が森に選ばれたのだ。

森に選ばれた者はカミーユ領の宝だ。

特別なスピカはやっぱり特別だったのだと思った。

スピカを眩しがり過ぎるノアも。


私の容姿を羨ましがるスピカに何度か正そうかと思ったけれど、この可愛い妹が驕り高ぶる女性に育っては欲しくないので見守ることにした。


スピカの手本になるように、私が素晴らしい女性にならなければ、といろいろな努力をした。


マナーも勿論のこと、人としても正しいと思えることをしようと。


それなのに、私は他人に言えない恋をしてしまった。


大事なスピカの婚約者のユリウス様を。


出会いは学院祭にレグルスお兄様を観に行った時だった。


ユリウス王子はその生まれの高貴さで魔術クラスのセンターに抜擢され大役を任され大業を放っていた。


とても素晴らしかったのだけれど、私にはユリウス王子が怪我を負ったことがわかってしまった。


トイレに行くと家族には言って、ユリウス王子を追いかけた。


彼は酷い火傷を手に負っている筈なのに、そんなことを微塵も感じさせない笑顔を浮かべていた。


強い人なのだわ。


私は彼の意を組んで、周りに気づかれぬように回復術をかけた。


間近でユリウス王子と目があった。

綺麗な瞳に見つめられドキンと心臓が跳ねた。


私はその瞬間に、運命の人だわ!と閃くように思ってしまった。


今まで降るような縁談をのらりくらりとかわしていたのは彼と会うためだったのだと、思ってしまった。


彼は私に会いに行く、必ず行くと約束してくれた。


私は地に足が付かない程浮かれて家族の元に戻った。


そう、浮かれていたのだ。


それなのに彼が自分の婚約者に選んだのはスピカだった。


私は浮かれていた自分を恥じたし、こちらに申し訳なさそうな視線を送ってくるユリウス王子のことを見ないようにした。


妹の婚約者として何度も顔を会わせなければならなかったのは辛かった。


幸せそうなスピカを見るたびに、何の罪も無い妹を憎みそうになる自分の醜さに怯えた。


彼女の模範になる生き方をしようと思っていたのに。


大事に大切に接してきた妹なのに。


彼女が木から落ちて意識が無くなった時は罰が当たったのだと思った。


私の悪い心に対する罰が。


神様、心を入れ換えます。どうか大事なスピカを連れていかないで!と心で叫びながら回復術をかけた。


それからだった。

なんだかスピカが大人びてしまったのは。

いきなり私を追い抜いて心が成長してしまったみたいに。


王子の来訪もあまり喜んでいなかった。

寧ろ悲しそうですらあった。


王子は時折私に視線を注ぐ。

お願い、やめて。

スピカが悲しむわ。


そう思って見返すと、王子は愛しい者を見る瞳で私を見つめ続けるのだ。


お願い。やめて。


喜ぶ私のこころ。


心を入れ替えたのでしょう?スピカが死んでしまうと思ったあの時に。


私はユリウス王子よりもスピカを取った筈だったのに。




学院に入ってから、スピカと物理的に離れホッとしてしまった私がいた。


ダメな姉を見せずに済むと。


レグルスお兄様が何度か私の様子をクラスに見に来てくださったけれど、その時ウィル様も一緒に顔を出してくれた。


その内、一人でもウィル様はやって来るようになった。


ウィル様はいろんな学年から人気のある物腰の柔らかな人だけれど。


私は悪魔がいたのなら彼のような姿をしているのでしょうね、と思ってしまう。


私に何気なく近づき「可哀想なユリウスのことをどう思っているの?」とそっと囁く。


「ユリウスは想い人を勘違いされてしまった」


「君は知っているよね。ユリウスの運命の人が誰なのかを」


「ユリウスは心労で食事も余りとれないようだ」


「君だけはユリウスの味方でいてくれるよね」


沢山の囁きは、必死でユリウス様を諦めようとする私を唆す。


「君たちは間違えていないよ。本当に愛する人達が結ばれなければ」


「君の妹を不幸にしてもいいの?これから先もユリウスの心は変わらないだろう。ずっと欺かれたままの妹は幸せなの?」


そうして私はウィル様に導かれ、ユリウス様と逢瀬を重ねてしまった。


やめなければと思う程、甘く。

断ち切ろうとすれば、胸を焦がす。


私もユリウス様もこの恋に囚われている。


出口が見えなくて抜け出せない恋なのだ。


スピカが私を見る。

「ユリウス王子の話しは聞かなくて平気よ」


あぁ、神様。

この子は知っているのではないかしら。


私とユリウス様の恋を。


道ならぬ恋をしてしまった愚かな私を。


私がこの身で罰を受けるから。


あなたは輝いていて。


その清らかな光で闇に堕ちる私をずっと照らしていて。


あなたのようになりたかったのに。


あなたの誇れる姉でいたかったのに。


ずっとずっと輝いて照らしていて。


暗い恋の闇に堕ちて行く愚かな私を。











読んでくれてありがとうございます!

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