警報機とメロンパンとお化粧
君と初めてのプラネタリウムに来た。デートなんていいものじゃない。「今度、デートで行くから、下見に付き合って!」っと勢いで連れて来られただけだ。
前々から気がついていた。君は最近変わろうとしている。いつも大好きで食べていたメロンパンを食べなくなって、可愛くなろうと爪や髪を気にして、メイクもするようになって。きっと好きな人ができたんだろうなって、それくらい僕でもわかる。
プラネタリウムが始まって、周りは暗くなって、星が映し出された。初めてでまるで本当の星空を見てる様で、びっくりした。
夢中になってる僕の横で、君は気づいたら眠ってしまっていた。僕はふと横を見たときに、寝ててびっくりした。思わずツッコミを入れてしまいそうなくらいだ。
「何で寝ちゃうかなー。よだれまで垂らして…そんなに無理しなくていいと思うんだけどな。」
僕は着てた上着を、彼女にかけてあげた。
「あっはー。寝ちゃったや。」君はちょっと照れくさそうに言う。
「本番、大丈夫かよ。」
「大丈夫!前日めっちゃ寝る!」
君はきっと本番も…いや、大丈夫か。
帰り道、メロンパン屋さんの前を通った。すごく美味しそうな匂いに、君のお腹がグーと鳴った。
「ち、ち、ち、違うの!別に食べたい訳じゃなくて。ただ美味しそうな匂いにお、お腹が勝手に反応しただけ!!」と言いながら、またお腹が鳴っていた。まるで警報器みたいで面白かった。
「せっかくだから奢ってやるよ。俺も食べたいし。」
「いいよー。本当に。」笑いながら言う。
「食いたければ、食えばいいじゃん?」
君は少し表情が変わった。少し頬を赤くしていた。
「本当にいいの。だってこれくらい我慢できないと、私…」
最後まで言わなくてもわかった。本当に変わろうとしてるんだ。好きになってもらうために頑張ってるんだ。それなのに僕は…
「メロンパン、1つください。」僕は店員さんにそう言って、メロンパンを買った。
「え、要らないって⁉︎」
「ばーか、俺の分だっての。お前にはわけねーよーだ。」こんなふうな答えしか思いつかなかった。
「何それ!意地悪ー!」
嫌なやつを演じて、いつか嫌われればいい。変わる君を見るのは、その意味を知ると辛いから。
「ねぇ、やっぱり一口ちょうだい?」
「や、ら、ね、えー」
「ケチー!あ、そういえば、プラネタリウムのとき、上着ありがとね。助かった。」
「…次は寝るなよ。」
僕は、変われるだろうか…?