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短編台本シリーズ

天使の飼育

作者: バケツから声


人間みたいな生き物を預かった。

可愛いんだよ、手足は無いけど大きな翼がある。

上司は、だるま天使って言ってたな。

喋る言葉は「あー」とか「うー」、時々震えて泣いて、ゲロる。

片付けは大変だけど、多分、俺がどうにかできることじゃない。

俺は彼女のボサボサの髪をとく。

さっき泣いてゲロったから、洗って乾かしたところだ。

「君の信者は君を探すのに血眼だったよ、君を攫った俺たちをすごく憎んでた」

綺麗な髪だ、陽の光を浴びてキラキラする。

「天使なんて、居ても居なくても変わらないのにね」

俺の言葉に彼女は首を傾げる。

俺の言葉は、彼女には難しいらしい。

信者がだるまにしてまで救いを求めた生き物は、翼が生えただけの隣人だ。

「悲しいね」

俺がそう言うと、彼女はやっぱり首を傾げた。

「俺そろそろ仕事行くよ」

帰りは何時になるかな、それまでにまた目を腫らしてないといいけど。

立ち上がろうとして、俺は動作を止める。

「・・・器用だね」


彼女の翼の先っぽが俺の手首を柔く握っていた。

振り払うのは簡単だけど、また泣いてしまうかもしれない。

「どうしたの?」

言葉が通じないことはわかってるけど、一応聞いてみる。

すると彼女は俺の手首を離して、次はその大きな翼でふわりと俺を包んだ。

正直、少し警戒して身構えてしまった。

「・・・なに?」

ハグ、だろうか。

ふわふわしてて、あったかい。

慣れないし、少し不快だけど、なんだろ。

「さっき、天使なんて居ても居なくても一緒だって言ったけどさ」

俺は無抵抗のまま、続ける。

「俺が死ぬ時、君が居てくれたらいいなって、君をはじめて見た時に思ったんだ」

多分、言っても伝わらないんだけど。

俺も、殺した信者たちに似た感情を彼女に持っているのかもしれない。


気持ち悪いな。


あったかくて、気持ち悪い。


そのまま気を失うように寝た俺は、数時間後上司にひどく叱られた。

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