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まるで姉妹のような二人

(15)まるで姉妹のような二人


武と猫とお菊さんはお菊神社から30分くらい歩いて武の母の実家に到着した。

武は母親の実家に「ただいまー」と入ると、直ぐに母の信子を探した。


「姉さん!ちょっと相談があるんだけど、いいかな?」


武と母の信子は実家では『姉と弟』という設定になっている。


※詳しくは『第2話 年齢を偽る母、出生を偽る息子』をご覧下さい。


息子に『姉さん』と呼ばれた信子は機嫌が良さそうだ。


「なあに?」と信子は機嫌よく答えた。


「紹介するよ。こちらは、お菊さん。説明のために一緒に来てもらったんだ」と武は言って和服の女性を信子に紹介した。


お菊さんは信子に挨拶をした。


「はじめまして、菊です」


信子は状況が呑み込めない。


「どちらの菊さんですか?」


武は周りに祖父母がいないことを確認してから信子に言った。


「播州皿屋敷の伝説があるでしょ?そのお菊さんだよ」


信子は息子が冗談を言っていると受け取った。


「へー、あのお菊さん。足がある幽霊なのねー。付くならもっとマシな嘘を付きなさいよー」


信子は武の話を信じていないようだ。


「母さん、嘘じゃない。ちゃんと聞いてほしいんだ」


そう言うと、武は信子に最初から説明を始めた。


お菊さんはアヤカシ(妖怪)で幽霊ではないこと。

お菊さんが衣笠元信もとのぶの命令で青山鉄山てつざんの屋敷に女中として潜入したこと。

その後、お菊さんは青山鉄山と恋に落ちたこと。

衣笠元信の命令に背くわけにいかないから、お菊さんが殺されたことにしたこと。

歳を取らないお菊さんが青山家から出なければならなかったこと。

お菊さんは鉄山との間に生まれた子供や孫に会うために『幽霊のお菊さん』を始めたこと。

それ以来、今までお菊さんは幽霊を演じ続けていること。



信子は武から事情を聞くにつれ、お菊さんに感情移入していく。

話が進むにつれて信子は目に涙を浮かべ、最後の方は号泣しながら話を聞いていた。


「えぐっぅ、はぐっぅ、お菊さん、辛かったよねー。よく400年も我慢したねー。うぅぅぅ・・・」


信子はそう言いながらお菊さんを抱きしめた。

お菊さんも自分に同情してくれる信子に抱きしめられて泣き始めた。


「辛かったよー。うぅぅぅ・・・」


武は2人が泣き終わるまで静かに待った。


徐々に落ち着いていく信子とお菊さん。

2人の間に奇妙な友情が生まれていく。


武は2人が泣き止んだことを確認して、信子に言った。


「僕はお菊さんを助けてあげたいと思うし、僕たちも身の危険があるからお菊さんの力を借りたいと思っているんだ。そこで、母さんに3つお願いがあるんだ」


「ええ、いいわよ。お菊さんのためなら」と信子は言った。


「まず、お菊さんが自由になるためには、『幽霊のお菊さん』が成仏することが必要だ。成仏の経緯は、町坪弾四朗ちょうのつぼ だんしろうの子孫が皿を返して皿が10枚揃ったことにしたい。そのために、本物の皿からコピーを10枚作ろうと思う」


「そうね。お皿が10枚揃えばお菊さんは成仏できるものね。分かったわ」


「1つ目のお願いなんだけど・・・、姫路工業大学(現在の兵庫県立大学)に構成成分分析器があると思うんだ。分析器を使わせてもらえるように手配して欲しいんだ」


「いいわよ。大学の同期がいるはずだから、頼んでみる」信子は快諾した。


「次に2点目。お菊さんはすごく強い。だから、お菊さんに僕と母さんのボディーガードを依頼したいんだ。お菊さんは幽霊を辞めた後、人間界で生きていかないといけない。お菊さんが人間界で生活するためにも無報酬でお願いする訳にはいかないよね。父さんの研究所から、お菊さんに給与を払えるようにしてもらえないかな?」


「分かった。お菊さんも生活しないといけないからね。協力するわ。任せて!」


ボディーガードと給与支払いの件も信子は快諾した。


「3つ目なんだけど、お菊さんに母さんの服を貸してもらえないかな?幽霊を演じる時はこの服装でいいんだけど、日常生活では目立つから」


「いいわよ。なんなら、今から一緒に買いに行ってもいいんだけど・・・」と信子は言った。


武の3つの要求は、無事に信子に受け入れてもらえた。


武はお菊さんと信子が話しているのを微笑ましく見ている。


こうしていると若い姉妹のようだ。


実際には700歳オーバーとアラフィフなんだけどな・・・


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