お前の金目当てで結婚したんだよ不細工!といわれましたが旦那様、私もいきおくれといわれるのが困るであなたで妥協したのですがね。不細工といるのが嫌なら……。
「お前みたいな不細工と結婚してやったんだよありがたく思え!」
「はあ」
いつも言われた言葉ですが、これを言われるとまあ少し疲れますわね。
不細工なのは確かです。
昔病気になり、顔中にあばたができてしまいました。
かわいそうにと両親が、跡取り娘だった私にかなりの持参金をつけましたが、年頃になっても相手が現れず。
いきおくれといわれるのを両親が悲しむので、金目当てで結婚を申し込んできたあなたの言葉にうんといったのですわ。
「……金をくれですわね。今日はどこにいかれます?」
「どこでもいいだろう不細工」
お金を奪い去っていく旦那様、29にもなって子供のようですわ。同い年ではありますが。
真実の愛がほしいとは思いませんが、さすがにもう少しおとなしくはなってほしいですわね。
私は商人の娘、商売はおてのもの、だから少しのお金くらいは融通が利きます。
見た目は商売にはまあ多少は関係ありますが、代理人を立てればいいだけですし。
両親が亡くなり、遊び惚ける旦那様を持ち、私はそろそろ考えたほうがいいかしらと思ってきていました。
「はあ、そろそろ考えたほうがいいですかねえ」
「そのほうがよろしいかとお嬢様」
「あなたもそう思います?」
「ええ」
私はそばにいる側近のアルを見ました。奴隷であった彼を拾ったときはまだ小さかったのに立派な青年になったものです。
年の差が10歳もありますが、少し胸がざわつきますわ。
「……まあ跡取りは養子をとればいいですか、少し焦りすぎましたわねえ」
「お嬢様……」
「うふふ、まああれの顔を見るとイライラするので、あなたが証拠を集めてくれたのは助かりましたわ。あと新しい法令、何やら私の味方をしてくれているようですわ」
新しい法令ができて、私が決意をしたのです。そして私はアルにお願いをしてあの人と……。
「妻からの離婚なんて宣言できるわけないだろう」
「いえひと月前に変更されまして、主人の不貞があった場合、妻から離婚を申し立てできるようになりましたの」
私は旦那様の荷物を集めて、外に放り出し、ついでに旦那様も放り出し、にこりと彼に笑いかけました。
だって女からの離婚はダメなんて法律があったせいで、これと別れられなくて困っていましたもの。
実は女王になったのを機会に私が見直しをお願いもしていたのですがね。
割とすんなり認められて拍子抜けですわ。
「ではさようなら旦那様、離縁は認められましたわ」
「おい、お前!」
アルが旦那様を殴り付け、離縁が成立してからは他人だ近づくなと怒鳴り付けてくれましたわ。
「悪役令嬢と私のことを言ってくださいましたが、あなたのほうが悪役夫でしたわ!」
ご面相があんなので、ろくに家事もしない悪役令嬢と私のことをみなに言いふらしましたが、私はここぞとばかりにあなたのほうがそうですわと言ってやります。
震える旦那様にではごきげんようと背を向けました。
あ、不貞に対する慰謝料もたっぷり請求いたしますわ。
「アル、やっとあれと別れられましたわ」
「ようございましたお嬢様」
やっとあれと別れられて、平和な日常を過ごすことができています。お金をたかられたり、不細工と蹴り飛ばされることもないですわ。
アルがにこりと笑って紅茶をいれてくれます。
「お嬢様、私はずっとおそばにいても……」
「ええ。あなたを跡取りにしようと思っていますのよ」
「そんな恐れ多い、でも……私はあなたのそばにずっといます……」
「ありがとう、アル」
私は立派な青年になったアルに笑いかけました。アルが小さい声で「愛しています」とささやいて、私が驚いていると、彼は私の顔を手で撫でて、愛していますとまた囁きました。
「アル、あなた」
「ずっとずっと愛しています。お嬢様……いえエメリーン」
「アル……」
子供だと思っていた少年は青年になり、私の体をぎゅっと抱きしめて、ずっと一緒です。愛していますとささやきます。
その腕の中で私は、戸惑いながらも彼の暖かさを感じておりました。
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