組織
天井の中央には赤い星の形をした照明が、ホールにいる全員を見渡すように輝
いている。
会議場の前面には10席ほどしかない椅子が横一列に立ち並んでおり。その正面
には倍以上の席が向かい合って並んでいる。もはや劇場と言っていいほどの出
来だ。しかも会場前方にある11席の後ろには剣と本を持った女性の像が天を仰
ぐようにそびえ立っている。
会場側面には、9つの巨大な肖像画と全共和国の旗が並んで飾られており。まるで崇
拝されているかのように、会場を見渡している
そう、この全ては俺が作った場所そのものだった。雰囲気作りにと思い、大学
の夏休みを使って必死に作り上げたこの会場が目の前に本当に存在しているこ
とに、もう何も疑うことはなかった
俺は、この世界に飛ばされたんだ……
女性に導かれるまま、最も皆の目がいく中央の席に腰掛けた。俺が席に座ると
一斉に会場内の人間も同じように席についた。
一瞬で静まりかえった会場内で、隣に座った秘書の女性がマイクに声を発した。
「全共和国の第1副司令官方、この度は急な招集に応じていただきありがとうございます。30分ほど前に我が連邦は北方司令部第3司令所から正体不明の未確認生物により攻撃を受け他との知らせが入りました」
な、何を言っているんだ…
俺は唖然として、その言葉をただ椅子に座って聞くしかなかった
「これにつきまして現状況を理解しているものがおらず、これは一時的な侵略行為と断定することと致しました。しかしながら我が司令部を襲ったものは見たこともない獣、または竜などという証言を兵士たちがしていることから、以前いた場所とはまるで違う、異なる世界である可能性があります」
まだ混乱と動揺はあるが、なんとなく理解できてきた
おそらく皆も俺と同じ混乱が頭にあるのだろう
突然変化したこの世界に対し、なんでそんなに冷静なんだと思いながら、その
女性を見た時、向かいの席から声が響いた。
「世界が変化したなど今はそれどころではない!北方にある3つの共和国で現在戦闘が起きているのだ!すでに国民の避難は始まっているが、今すぐにでも大量の避難民が押し寄せてくる!!それに我が軍がいつまで戦えるか、敵の情報が未知数な以上増援を最高司令官閣下に要求したい!」
続けてこの軍服を纏った男はこうも言った
「北方には大勢の人民とツバキ副司令官のご家族や私の妻と子供もいるのだ。どうか早急にお願いしたい」
ツバキさんの家族が北方に!? それにあのゲームのままなら北方の3つの共
和国は、チェラージ共和国、ヴェシリア共和国、ガガ共和国の農業生産地帯の
中心国ばかりだ。
農作物が取れなくなれば、全人民2億9000万はたちまち食糧の奪い合いで最
悪の場合自国民同士の殺し合いにまで発展する可能性がある…
それはなんとしても阻止しなければならない
たしかに副官の出身はその北方方面にした記憶がある。
もしMarv4と同じ構成のままなら北方方面のすぐ南にあるカチェラ線という防
衛網が存在するはずだ。
そう思った時に口はすでに動いていた。
「すぐにでも北方側への増援を許可します。避難民はカチェラ線まで撤退して
そこを最終防衛地点にしましょう。全航空機の発艦も許可します。我々を攻撃し
てくる全てのものに対し、弾丸をくれてやりましょう」
(こ、これで良かったのだろう…か?)
内心バクバクだったが、今はこの判断が最も重要だと俺は感じた
そう俺が指示を出すと一斉に全将校が立ち上がり一度敬礼をした後にすぐさまそれぞ
れの部署に移動していった。
良かった、カチェラ線もちゃんと存在した。だが一つ気がかりなのは、もし本
当に元あった全てのものが転移したのであれば。我が国の面積は5000万キロ
にも及ぶ、これを防衛するには現状では難しい。
先程の話でわかったのは北方から敵が攻めてきたと追うことは何かしら地表が現れたということだろう。
だが、ゲームとして遊んでいた時は北方方面は海で南側が大陸と繋がっていた。
が今この国がどのような地理をしているのかも、また調査しなければならな
い。
少し落ち着けるかと思った時、会場内に全力疾走してきた若い士官が敬礼しな
がら発した。
「同志司令官!北方軍第11装甲師団長より伝令であります!」
渡された小さな紙を開くと、その内容は驚くべきものであった。
『北方方面での敵を一通り排除し終えました。勝利は目の前であります。しかしながら数千人の我が国の国民でない者達が救助を求めてきました』
その知らせは全ての将校達に伝わっており
戦いはまだ始まったばかりであった。
ゼグラーン連邦軍(または連邦赤軍)
総兵力550万人
陸軍320万人
空軍140万人
海軍60万人
戦略ロケット軍30万人
大陸国家として制作された連邦赤軍はランドパワーを絶対とする陸軍国家であり、広大な土地を守る戦術は縦深戦術に偏っている。