敵
首都やその他の都市では、メディアが北方方面での大勝利を大袈裟に宣伝していた。
国民は皆歓喜に溢れ、若者は我先にと軍に志願するものが出てくるほどだった
すでに首都についていた俺たち幹部はこの状況を素直に喜べなかった
「危険な状態ですな、同志司令官。国民は今も危険な状態が続いているというのに、一つに勝利で浮かれてしまっている」
ジューコフ国防長官が、死亡した魔獣の調査資料を見ながらそう言った
「仕方のないことです。今まで暗いニュースばかりでしたから。国民にもこうした瞬間は必要と思います。」
手に持ったカップをそっと口に近づけ、スッと飲む
その時、部屋にノックがかかる
「どうぞ」
「失礼いたします。同志司令官」
それはツバキさんだった。だがその後ろには見たことのない男性が立っていた
黒い髪に紳士という言葉が似合いそうなその男は俺に一礼して背筋を伸ばした
「こちらは内務人民委員部の長官に新しく任命されたクリメント・マレンコフさんです」
そうツバキさんが言うと、マレンコフさんは自然と腕を伸ばし、握手を求めてきた
「よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
(内務人民委員部か…国内にいる敵のスパイや政治に反対する民衆を抑圧する組織とされいたけど、ゲームの時は暴動や内戦が発生する率を抑えてくれたけど。大丈夫なのだろうか?)
現実の世界ではこうした組織は良い例があった試しがない。
俺個人としてはあまり出てきてほしくない連中だ
「それで今回はどのようなご用件で?」
俺がそう問うとツバキさんは一言添えた
「司令官閣下立ったままではなく座った方が心地よく会話もできますよ。お飲み物を取ってきます」
「ありがとう、ツバキさん」
そうしてツバキさんが飲みものを取りに行っている間に、残った俺とジューコフ、マレンコフの3人がソファに座った
「今回私が来たのには、通信を傍受された時の情報漏洩を防ぐためであり、こういう者が我がNKVD(内務人民委員部の略称)によって捕らえられたからです」
そう言って見せられた写真には両手両足を縛られ、口も塞がれた黒髪の男性だった
「な、なんだこれは!最も大切な人民に対して何をしているんです!!」
「いえ、違います!!」
即座に否定したマレンコフは静かにもう一枚写真を出した
「この男が所持していた物の数々です」
そこには見たことのない文字で書かれた書物や、スクロールのようなものがびっしりとあった
「怒鳴ってすまなかった。つまり彼は…」
「はい、別の人間の国家から来たものでしょう。しかもこいつは連邦赤軍の戦闘を魔法なるものを使って映像として残していました」
!?
人間の国家があることは分かっていたが、まさかこんなにも早く情報を取りに来るとは思いもしていなかった
そこへツバキさんが飲み物をトレーに乗せて運んできてくれた
「どうなさったのですか?司令官、先程大きなお声が聞こえましたが…」
「いや、気にしないでください。ちょっと驚いただけです」
話がそのまま続き、マレンコフは彼以外にもスパイがゼグラーン内部に侵入していると考えていた
そしてマレンコフは俺にあることについて許可を求めてきた
「同志司令官、私も祖国ゼグラーンに生まれ。この国を愛しております。故に敵性分子の排除のために。許可を頂きたく今日ここに来ました」
「3億人の同志たちのためなのです!司令官!!」
敵は魔獣だけではないと、ダーウェンの言葉を思い出していた
「ヴィレニアと名のつく国家にお気をつけください…」
NKVDによって拘束された男は南方にある巨大な森で、木の伐採という仕事に就いたと報告された




