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砂漠の少年  作者: 帽子男/Hatt
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ラストレン

その日は宴会になった。ラストレンさんが集落の全員に片っ端からどちらが沢山お酒を飲めるかの勝負を挑んだからだ。次から次へと大人たちを酔い潰していくラストレンさんのせいで、なし崩し的にお祭り騒ぎになったのだ。ラストレンさんは全員に族長の話を聞いていた。勿論僕にも聞きに来た。スルテにも挑もうとしたけれど、「私達は聖人なんですよ。」と窘められていた。けれども「少しだけですからね。」と渋々了承していた。死者を弔う為の機会だからだそうだ。


 「オカモトが族長とは何度聞いても信じられんな。良くて盗賊の頭だろう。」


 「その言い方は無いでしょう?リカルド達からすれば立派な人なんですから。」


 「そうだな。悪かったよ。」


焚き火を囲んで三人で飲む事になった。チロチロと炎のに照らされて二人の顔が赤く塗られる。

 実を言うと僕はお酒を飲むのは初めてなのだ。16になった日から今日までの半年間でお酒を飲める機会など一度もなかった。そもそも巡ってきた国によっては成人の年齢が違い、ほとんどの場所で16歳は飲酒が許されていなかった。だから少しだけ楽しみだ。小さい頃に少しだけこっそりお酒を舐めた事は合ったが、その時の記憶は曖昧なので換算しない。

 ラストレンさんが注いでくれたお酒を少しだけ嗅いで見る。ツンとした刺激臭で思わず顔をしかめてしまった。刺激臭の中に、いつもラストレンさんが食べている芋の匂いがした。


 「この際だから話しておこうか。私が何をしたいのか。」


ラストレンさんは懐から一冊の本を取り出した。族長の物だ。そして、僕とラストレンさんが初めて出会った時にラストレンさんが持っていたものだ。族長がとても大切にしていたのを覚えている。


 「これはオカモトの日記なんだ。」


パラパラと本を捲って中身を見せてくれた。オカモトは一度も見せてくれなかった物だ。けれども何も読めなかった。見たことの無い文字で書かれている。


 「私は、私の暮らすゴルノジアの平和を望んでいる。そのためには……。」


ラストレンさんが本を捲るの止めて、挿絵のようなものを見せてくれた。僕はそれに強い見覚えが合った。ラルクルウッド・ゲーだ。


 「ゴルノジアの東側の三国を密接な友好国にしておく必要がある。ゴルノジアの西側の国、ここジャフルトは間違いなく今後世界侵略に乗り出すからな。いざとなった時に後ろから攻撃されるのは避けたい。」


またぱらぱらと本をめくり、タマゴ?のようなものが描かれている場所で手を止めた。


 「オカモトは少なくともジャフルト、ゼルドニアの二ケ国にゲーのタマゴを売った。勿論、国家機密だ。」


パタンと本を閉じて、一気に酒を煽る。


 「街より大きい戦略兵器がある事を証明できれば、三国の危機感はお互いのいがみ合いではなく、ジャフルトへ向かうだろうと考えていた。」


ラストレンさんが焚き火の中心を見つめているのか、その向こうにある夜をぼんやりと見ているのか、僕には分からない。


 「まぁオカモトに証人になってもらうつもりだったからな。それはもう叶わない。」


ラストレンさんはその場でグッと伸びをして、日記を僕に渡してきた。僕が持っておく事が相応しい場所という事だろうか。


 「そのオカモトさんの他に証人になってくれそうな人はいないのですか?」


スルテが当然の疑問を口にした。それに、この日記の翻訳の結果によっては証人が必要ないほどの手がかりがあるかもしれない。


 「その一番の候補だったハルビオクが何も分からないと言ったんだ。どうしようもないさ。」


なんだか頬が暑い。心なしか体もフワフワする。


 「日記の解読は諦めたよ。私が一日中かかっても全く手がかりがつかめなかった言葉だ。この世界の何処にもない、まるで暗号のような言語だ。恐らく全く違う法則で作られた言葉で有るということ以外は、情報は何もない。頑張ればできるかもしれないが、多分もう時間はそんなに残されていない。」


視界もぼやけて、まるで、まるでラウムウルムに毒を打たれた時みたいだ。


 「そういうわけで私はリカルドにオカモトの所に案内してもらおうと考えていたんだ。」


頭もあまり働かなくて、ラストレンさんの言っている事がゆっくりとでしか理解できない。


 「まぁ安心してくれ、私は嘘はつかない。きちんと蝉を殺すのには協力するよ。」


視界におじさんが入ってきた気がした。僕は眠気に限界が来て、その場で意識を手放した。



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