賊のアジト
本日二本目です
盗賊のアジトへは蟲車でもかなり時間がかかり、着くころにはすっかり太陽が傾いていた。
盗賊たちは半壊した大型の砂船をアジトにしているようだ。巨大な岩とも崖とも取れる地形に激突したのか、船底に大穴が空いている。族達はそこから出入りしているみたいだ。
今僕は両手を後ろ手に縛られてアジトの中を奥に歩かさせられている。
「オメぇ、運がいいよナぁー?メシも水ももって無かったんだロぉー?」
僕を連れて前を歩いている人が振り返り全身を舐め回すように見てくる。
「オレたちも運がいいよなナぁー?蟲に困ってる時に蟲狩りを見つけるなんてヨぉー?」
船の中で暗いと言うのにこの男はズカズカと歩いてゆく。床に散乱したゴミにつまずく様子はない。
「オレはもっと運がいいよナぁー?こんなところに子供が来るなんてヨぉー?
いや?まてヨ?そんな時に留守番させられてたオレってもしかして運が悪いのカぁー?」
「僕はこれから何をさせられるのですか?」
「なんだヨぉ喋れんじゃねえかヨぉー?このままずーっとだんまりかと思ってたゼぇー?」
「どうなるのですか?」
「先にオレの質問に答えてからだゼぇー?」
「…運がいいと思いますよ。」
「そうだよナぁー?」
「で、どうなるのですか?」
「どうなるんだろうナぁー?頭領に聴きゃあ分かんじゃねえかナぁー?」
いちいち癪に触る男だ。それに僕はもう子供ではない。きっとそんなことを言えばなにか言われるだろうから決していわないが。
疑問符を文末につけなければ話せないのだろうか。なんとも調子が崩される気がする。
「なんか言いたそうな顔だナぁー?でももうおしゃべりはお終いだゼぇー?オレはここで待ってるからヨぉー」
どうやら疑問符は無くても話せるようだ。しかし無いなら無いで違和感が有る。なんとも腹の立つ男だ。
男に促されるように僕は扉をくぐる。男は本当に待っているつもりのようだ。帰りもあの男と話をすると思うと少しげんなりする。帰りが有るのならば、の話だが。
扉の中は広めの書斎のようになっていて、中心の仕事机には蟲車で頭領と呼ばれていた大男が座っていた。
「お前にやってもらうことは他でもねぇ。蟲狩りだ。」