操作者
クソクソクソクソッッ!!
「なんで止まらないんだよクソが!!」
どれだけ強引にレバーを動かしても、ラルクルウッド・ゲーが止まる気配はない。
「隊長!鎮静剤の準備できました!」
「すぐに打てバカが!確認はいい!」
ラルクルウッド・ゲーの各胴体には、人が乗り込む用のトーチカが備わっている。そして先頭のトーチカには神経に直接作用してある程度の操作ができる基盤が取り付けられている。しかしこれは『ある程度』までが限界で、動きを強制することはできない。
だから、興奮剤や鎮静剤などのホルモン物質を積み込んで操作性を上げているのだ。それをこんなところで使うのは勿体ないが、背に腹は代えられない。
もしこのままゲーが暴れ続ければ、バルマンドリアのやつらに気づかれる事は自明だ。しかもこの先には大きめの街道がある。早朝ではあるが、人に見られる可能性が高すぎる。この振動で気づかれていない保証も無い。もし街道に出たならば、気が付かない方が難しいだろう。
「隊長!鎮静剤すべて打ち込みました!もうありません!」
「なんで全部使ったんだバカ!確認しろ!」
最新鋭の装備、最新鋭の兵器、最強の部隊、、ここまで来るのにどれだけ時間がかかったのか。軍人としても科学者としても一流を収めてきた。他の奴らを皆ぶっ飛ばして来たのに。あと少しで隣国を滅ぼした英雄になれるところなのに。なんで今なんだ!こんな事は一度だって無かった!
「隊長!街道に出ました!支持を!」
クソッ!鎮静剤が効かなかった時の事なんて聞いてねーよ!この兵器が暴走する事をあの科学者たちは想定してなかったのか?
「民家です!激突します!」
ズドン!という衝撃波が横から俺を殴りつける。
「…」
「隊長!!なんとかしてください!」
決めた。
「このまま近くの商業都市に突っ込むぞ。街道に出た以上、もうひと目を避けて王都までは行けない。何かしらの戦果を挙げないと帰ろうにも帰れない。都市の破壊が一通り済んだら、この化け物に毒を打って殺す。」
「毒!?そんな物ありませんよ!」
「無いなら作るだけだ。俺が作るまで操縦を変われ。」
「操縦っていったって、、言うこと聞きませんよ!」
「良いからやるんだよ。都市は街道を真っ直ぐだ。行け。」
「りょ、了解」
俺は先頭のトーチカから出て、重力と遠心力に耐えなながら、補給物資のあるトーチカへ向かった。
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僕は決死の思いでラルクルウッド・ゲーの足にしがみつき、なんとか背中の上にたどり着いた。
暴れ狂うゲーの動きに翻弄され、少しずつしか歩みをすすめる事ができない。
この化け物を殺す手段を思いついたわけではない。しかし、たいていの蟲は触覚を切れば動きがおとなしくなるはずなのだ。小さな凹凸や関節の隙間に指を入れて、吹き飛ばされないようにする。頭を目指して。
「誰だお前は。」
はっとして顔を上げる。少し先に僕と同じように背中にしがみついている人がいる。そして敵意を顕にしている。
「お前が何かしたのか。」
なんの事かわからない。が、この人にとって不足の事態が起きている事はわかる。そしてそれはきっと僕が原因だと思われている。
「僕は、何も、」
「どうやって乗り込んだんだ。」
「えっと、がんばって、、?」
「埒が明かんな。捕まえろ!」
さっきまで僕が関節の隙間だと思っていた部分がガバっと開き、中から兵隊らしき人たちが現れた。
あっと言う間に前後は囲まれ、逃げ場が無くなる。しかし、暴れる蟲の上ということもあって、皆足元がおぼつかない。思い思い、甲殻や開いた扉の近くを掴んで踏ん張っている。
どうしてだかわからないが、自分でも驚くほどに周りがよく見える。頭も冴えている。
きっと彼らはこの蟲を操作している人たちだろう。そして、今それが上手く行っていない。さらに彼らは僕に注視するあまり、蟲が岩山に正面から突っ込もうとしているのが見えていない。
僕は衝撃に備えて強く踏ん張り、両手でしっかりと甲殻を掴む。次の瞬間兵士たちは急な減速で、体制を崩し、前に吹っ飛びそうになってよろける。僕はその減速した一瞬の兵士の隙きと蟲の動きの落ち着きを見計らって、前へ飛び出した。




