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マトリカリアの花はファンタジーに咲く  作者: 水あげたくあん
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5話 一時の休息

-2階 ラウンジルーム-



「痛いって」


「あんま動かないで、上手く出来なくても文句言わないでよ?」


戦いを終えた後、ラウンジに戻ったヒロ達。


ヒロはマイからの治療を施されていた。



包帯や消毒液等の医療道具と衛生用品はモール内のドラッグストアで取ってきたらしく、マイが持って来たマイバッグにまとめて入っていた。



「お兄ちゃん!あーん!」


「ありがとう、あーん」


ハナは1口大のロールケーキのお菓子を手に取りヒロの大きく開けた口に入れてあげた。



「お兄ちゃん、おいしい?」


「おいしー!」


ハナの問い掛けにヒロは愛想良く微笑みながら答えた。


その時、マイの頬が膨れていたが気の所為であろう。



「ハナちゃん、お母さんのこと心配じゃないの?」


「…?心配じゃないよ?」


ヒロは内心聞くべきではないと思ってはいたが、あまりにも気にはしていない様子のハナに疑問を抱き、思わず聞いてしまう。


だが、ハナの口からはヒロ達が予想していなかった答えが返って来る。



「だって、お母さん、わたしを置いてって行ったでしょ?それはとっても悲しかったけどそれならきっと生きてるもん」


「……」


ヒロ達は後からあとから続いたハナの言葉に俯いてしまう。



────ハナちゃんはまだお母さんを信じてる…

あの状況からモール内の人間がどれだけ生きていたか分からないけど直ぐに出口は締め切られた。生きてる可能性は少ないだろう。



もしハナちゃんのお母さんが生きていていても、ハナちゃんのお母さんは我が子を見捨てるような親だ。今後も見捨ててしまうに違いない。



そのどちらにしても虚しい現実にヒロとマイ、2人は拳を握り締める。




「そっか……そうだよなハナちゃん……なんかごめんな」


「……?」



ヒロは何故か申し訳なくなって少し笑いながら謝る。


そのヒロの行動にハナは小首を傾げてしまう。




「ヒロお兄ちゃん、マイお姉ちゃん」


先程の話を終えて、少し考えた様子でいたハナは何か思いついたのか2人に話しかける。



「お兄ちゃんとお姉ちゃんはわたしのこと置いてったりしないよね……?」


母親に置いてかれてしまった事を再び気にしてしまったのか2人に困った様子で質問をする。



「ん?当たり前だよ」


「私達はハナちゃんを見捨てたりなんてしないよ」


2人は笑みを浮かべながら即答。



「ありがとう!」


その答えを聞いたハナはまるで花が咲くかのように大きな笑みを浮かべたのであった。




◼️◼️◼️




「はいっ!終わり!」


「ふぅ……サンキューな」


マイの治療が終わったヒロはすぐ近くにあったソファーに横になり、日没前にも関わらず寝ようとする。



「明日の朝、出発でいいのよね?」


「ああ……」


マイの確認に、ヒロは欠伸混じりに答える。



「行き先は学校でいい?」


「ん……」


外の状況はあまりよく分かっていないが、家に帰るよりは学校に行く方がいいと判断する。


学校にはこれからの体勢を整える為に行くつもりだ。


そこに武器などがなかったとしても、情報は手に入るはずだ。



「ヒロ、本当に…ありがとうね…」


「……」


マイがそう言いながらヒロを見やるが、ヒロは眠りについていた。


眠りについたヒロを見てマイは微笑む。



「私達なら……きっと……」


目の前に手をかざし剣を出す。



「お姉ちゃん……?」


「えっ……ああハナちゃん?どうしたの?」


急にハナに呼ばれたマイはビックリして慌てて剣をしまう。



「あのトイレ…行っていい?」


ハナはもじもじした様子で答える。


ハナはこれまでトイレに行くことは無かった。よく我慢したと言えるだろう。



「えぇ、一緒に行きましょ」


マイは快諾し、2人でトイレへ向かったのであった。




-2階 ラウンジ付近のトイレ-



「ふぅ…」


用を済ませたマイはトイレの鏡の目の前でため息をつく。


マイは顔を上げて自分の顔を見ると顔が汗で汚れてしまっているのがわかった。


マイは制服の胸元を前後させ通風させてみる。


すると、すぐに自身の汗の臭いに気づく。


後から用を済ませ手を洗いに来たハナ、その顔はやはり汗で汚れてしまっている。


それを見たマイはハナに話しかける。



「ねぇハナちゃん、服選びに行かない?」




トイレから出た2人はすぐ近くにあった子供服屋に入る。



店に入るとマイはウキウキしながら大量の服を手に取り、ハナを着せ替え人形にし始める。



「ハナちゃんかわいいよー!」


「……?」


マイは着せ替える度にハナに対し黄色い声を送る。


ハナはマイがしていることの楽しさがまだ分からないのか小首を傾げる。



小一時間たった頃、ようやく選び終えたのか服を持ち店から出ていき、今度はヒロとマイの服を選びにすぐ近くの大人服の店に入る。



今度は数分で選び、ラウンジに戻ろうとする、が。


「……!?」


店を出ようとしたマイ達の目の前に黒い奴が通りかかる。


すぐにマイ達は身を隠し様子を見る。


幸い気付かれていなかったようだ。



(バレてない……でもなんで……!?)


マイはガウェインとの戦闘後、敵は全てモール内から居なくなったと勝手に思い込んでいた。


マイは色んな店に無警戒に入っていておきながら今まで見つかっていなかった事を幸運に思う。



「ハナちゃんはここで待ってて、すぐ戻るから」


「うん」


ハナを試着室に隠し、マイは背後から黒い奴に近づく。



(女の人……綺麗な服……やっぱり元々は人間だったのかな?)


奴の後ろ姿を見てマイはふとそう思う。


奴は後ろから近づく異変に気付き振り向こうとするが、その瞬間奴の首はマイによって断ち切られた。



マイは念の為、周りを見渡したり、ハナのいる服屋の安全を確保したりしてからハナを連れ、早い足取りでラウンジに戻るのであった。

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