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マトリカリアの花はファンタジーに咲く  作者: 水あげたくあん
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2話 日常の終わり

-ショッピングモール-



マイのお願いというものはショッピングモールに行って遊ぼうというものだった。


マイは3人で行こうと言ったが、ユウキは「今日夕飯あるからどうしても行けないわ、ごめんな」といい断ってしまった。



仕方なく2人で学校から制服でそのまま数キロ離れたショッピングモールに来て歩いているのであった。



「まず何処へ行くんだ?」


「えっと考えてなかったけど、ご飯食べるだけでも良かったかな」


「じゃあわざわざショッピングモールじゃなくても良かったんじゃ…」


少しやれやれと言った顔でヒロはマイを見る。


マイはてへぺろという文字が上がって来そうな顔をする。



「まぁ明日からのご飯無いし、その買い物もついでにやりたかったからね」


「その荷物持ちも欲しかったわけだろ?」


「バレちゃったか」


ヒロはそれを聞き、ハァと小さくため息をつくが、もう頼り切らないと決心した為、何も言わずに歩き続ける



俺とマイは一緒に住んでいる。


これだけ聞くとただのカップルの惚気話に聞こえるが、そうではない。


10年前に起きた事件、それにより親を無くしたらしい俺とマイは1人の男の老人に拾われ育てられる。


何故か俺とマイはそれ以前の記憶が何一つ無い。


記憶喪失というものは一般的に元からある記憶が全て消えるというものではなく、数年、数十年の記憶が欠落してしまうというもので、産まれてからの基礎的な記憶が無くなるということは無い。



だが、俺たちはそれすらも無くなっていた。


じいちゃんは普通の老人で独り身であったが、毎日ご飯を作ってくれたり色んなことを教えてくれたりして俺たちを我が子のように優しく育ててくれた。しかし、数年前に亡くなってしまい、以降、マイが代わりに家事をするようになった。



マイとどういう関係かと言われたら家族なのではないかと自分では思う。



「先に食べましょうか」


「ん、ああ」


モールを歩きながら遊び場所を探していたら2階のフードコートを通ったのでマイは立ち止まり提案する、そのままヒロは了解して一緒の店で夕飯を買い、食べるのであった。



今までのことを振り返って来て突然湧き上がってきたマイに対する感謝の感情により、ヒロは夕飯を食べる手を止め話し出す。


「なんかずっと、その、お前に言ってなかったけどな」


マイもヒロの緊張した雰囲気を感じ手を止める。



「お前にしてもらうだけで何もしてなくて…それなのに気にかけてくれて、その…」


自分に似合わない言葉を言おうとしてることを自覚して、ぎこちなくなりながらも照れくさそうに「ありがとう」と言おうとした瞬間──



───人の叫び声が聞こえた。



「「え?」」


2人はテーブルを後にして手ぶらで叫び声の方向へ向かってみる。


ただの叫び声なら向かうことは無かったのだが、聞いただけで明らかに命に対する危機感を感じる悲鳴だったので走って向かった。



吹き抜けから声の聞こえた1階を見るとその状況に2人の顔から血の気が引いた。



───人のような物が女性の首に噛みつき、殺していた。



噛まれた人は首からドクドクと血を流し痙攣している。


先程、人のような物と言ったがそいつは顔も腕も手も足もあり確かに男性の人型の生き物ではあったが黒い瘴気を纏っていて明らかに同じ人では無いと直感した。



「おいっ!逃げるぞ!」


呆然となりながらも状況を理解しすぐにここを離れるべきだと判断したヒロはマイの手を引き、その場から走って逃げる。


「逃げるって何処に!?」


手を引かれたことで我を取り戻したマイはヒロに聞くが返答が返ってこない。


今ここにある情報は近くに人ではない殺人鬼がいるだけ、何処に逃げるべきかなんて分からない。


だが、この場から逃げるのが最善手だろう、それだけなら分かる。



自己防衛のための戦闘用の魔法を習った若者は自強化の魔法をかけ、かなりのスピードで店を出ようと走っている。


中には恐怖のあまり窓を突き破って逃げる者もいた。


街中で魔法を使ってはいけないという国のルールは緊急時には例外で適用されないのでこれは許されるであろう。



それを見たヒロは「マイも魔法を使って逃げてくれ」と言うが「ヒロを見捨てて逃げられる訳ないでしょ」と即答で断られる。



しばらく走っているとマイは「待って!」とヒロを呼び止める。


マイの視線を追うと、親とはぐれてしまったらしい白銀色の髪の後頭部に大きな赤いリボンが着いた小さな女の子が泣いていた。


後ろの方で奴はもう2階に上がってきたのか、逃げ遅れた人や隠れて見つかってしまった人の悲鳴や叫び声が聞こえる為、ヒロの思考を焦らせる。


「俺はあの店で身を守れそうなのを取ってくる」


あの女の子を助けたいというマイの強い意志を感じたヒロは近くにある店に使える物を探しに入る。



マイは女の子に近づき、


「大丈夫?お母さん達は?」


優しく声をかける。


「おっ…お母さんはっ…わたしを置いていなくなっちゃった…っ」


女の子は泣きながら答える。



マイは子を見捨てて我が身優先で逃げるとんでもない親もいるのかと驚きと怒りの感情が同時に沸く。


だが、子供を前にその感情を出す訳にはいかまいと感情を抑える。


「ここは危ないからお姉ちゃんと一緒に行こう?」


マイは顔をほころばせて笑いながら幼女を誘う。


女の子が袖で涙を吹きながら小さく頷くのを見るとマイは安堵し小さく笑う


「じゃあ、あなたの名前は?私はマイ、今から来るお兄ちゃんはヒロって名前よ」


「…ハナ…わたしハナっていうの」


「じゃあ、ハナちゃん一緒に行こう!」


互いに名前を交わし、ハナの手を引きヒロの入った店へ向かおうとすると、タイミングよく店からヒロが出てくる。


その手にはハンガーラックを無理やり分解して手に入れたのであろうステンレス製のパイプを2本持っていた。



「2人とも後ろだ!しゃがめ!」


ヒロは出てくるとマイ達、2人の背後へ向かってくる黒いモノを見て叫び、持っていた1本のパイプを黒いモノの顔面に投げつける。


マイはすぐに後ろを確認してハナと一緒に伏せる。


鉄パイプは無事に顔面へ命中。それは大きく仰け反りそのまま倒れた。



「走れェェェ!!!」


ヒロは命中を確認した瞬間2人に向かって再び叫び、マイはハナを抱えてヒロと合流し逃げる。




■■■




「さっきと…顔が違う…」


「…!?」


走りながらマイはさっき女性の首を噛み殺していた人のようなモノの顔を思い出し呟く、それを聞くとヒロは驚き青ざめる



「オイオイ…ってことはアレ、複数いるのかよ…」


ヒロはアレいえばと後ろを向くと、


アレは四足歩行で走ってこちらに向かい追いかけていた、人型で四足歩行で走ってくる姿は不気味で見ているだけで気持ち悪い。


「頭に直撃してたのにもう動けんのかよ!?」


ステンレスのパイプを頭に直撃させて脳震盪を起こしてダウンさせた筈なのにすぐにこちらへ起き上がって向かってきたアレを見て叫ぶ。


幸い、人型で四足で走ることは向いてないらしく、走るスピードは人並みであるが、こちらには女児を抱えた女性と魔法を使って加速出来ない男がいる。


追いつかれるのも時間の問題だ。



(じゃあどうする俺!?)



────このまま逃げる?

いざとなれば魔法を使えるマイはともかく、俺は追いつかれる。その時には体力がもう無いから確実にさっきのように一時的に倒すことすらも無理だ。



────戦う?

敵の力量は分からないが、パイプを投げつけても手で受け止めたり避けたりするという知能は無いように見える。本能のままに攻めてくるだけなら再び倒すのも簡単なのかもしれない。だが、敵は複数。マイを守りながら時間をかけて戦ってれば数の差で間違いなく死ぬ。



すると1階から悲鳴以外の新しい声色が聞こえる。



───怒声だ。それと同時に店内のシャッターが閉まる音が聞こえる。

店内の従業員はこの店で奴らを封じ込めることにしたらしい。しかも、誰一人生存者を非常口に誘導する声もない、完全に見捨てる気だ。まだ生きている人間が沢山いるんだぞ!?



いや、こっちも怒ってる暇はない、早く、早く手を考えなきゃ。でも、どうするどうする…!店外へ逃げるという手が非常口が何処にあるかすぐに分からない今、多くの手段が出来なくなった。



他にも案はあるにはあるがどれも俺かマイ達、どちらか死ぬ可能性がある。


どう考えても俺だけ死ぬけど2人を助けられる策をとってもいいのだがマイはそれを許さないだろう。でも、もう考えてる時間も無い…!考えろ考えろ考えろ…!



「ヒロ!」


「…!?」


ヒロはマイの名を呼ぶ声で意識を戻す。


「私は大丈夫だから、ヒロを信じるよ」


その一言でヒロは決心し、逃げる足を止め、後ろを向き、黒いモノに対しパイプを両手で構える。


「マイ達はラウンジに向かえ!後ですぐに迎えに行く!」


その時互いに「信じる」と意味を含んだ目配せを交わす。



この案は数点、不安要素があるが慌てて出した案にしては3人の生存確率が一番高い作戦...のはずだ。


不安要素の1つ目は奴の索敵能力だ、知能が低いことから目に映る人間しか狙わないことに賭けるしかない点。


不安要素の2つ目はラウンジルームの中でもう既に奴がいる可能性がある点だ。防衛方法がないマイ達が遭遇したら最悪の結果になる。


だがマイの決意の目に気圧され、この方法に決めた。



(でも、まずコイツを真正面から倒せるか、だな)


獣のようにこちらへ走って向かってくる黒いモノはヒロの数メートル前で人間ではありえないくらい高くジャンプしそのまま飛びかかるが、そこにやはり防御行動はどこにもない。


「だったらそのまま…ッ!」


ヒロは全身に力を入れ、飛びかかってきた奴の口にパイプを突き刺しそのまま地面に叩き付ける。



勢いよく叩きつけられたソレは顎は外れ口が開いたままになり、勢いよく足から地面に着いたことにより足の骨が粉砕して立ち上がれないのか、こちらを見たまま手足をバタバタ動かしている。


その光景に思わず恐怖で一瞬固まったが


「早くマイの元に行かなきゃ…!」


ヒロは目的を思い出し走ってラウンジに向かった




-2階 ラウンジルーム-



「マイ!大丈夫か!?……!?」


ヒロはラウンジルームに何事もなく到着し扉を開けてすぐにマイを呼ぶ。扉が開く瞬間、血の匂いがして顔をしかめる。


ラウンジルーム内には何故か血痕は多くあるが死体がない、マイとハナは生きており、呼ばなくとも見える位置に居た。


ヒロは安堵するがマイの手に持ってるものを見て驚愕する。


「その剣はなんなんだ…マイ!?」



────マイは謎の黒い瘴気を纏った剣を持っていた。

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