1話 ファブラ・プリムス
初投稿です。
自分の妄想を文にしたためるのは慣れていないので至らないとこもあると思います。
ラストはかなり遠いですが、モチベが消えない限り続けるので頑張ります。
長編と長編の間に設定やストーリーのすり合わせの時間を要することがあります。
貴方は神々といった伝説の存在を信じるか?
これは決して危ない宗教の勧誘では無い、純粋な質問として問い掛けてみた。
こういう伝説の存在────
────神器を使う者や概念を操る神そのもの、既存のファンタジー作品などによくあるようなような様々な魔法を使いこなす者、そして有象無象の火を吹く翼竜などの魔物たちといった存在。
君達が住んでいる世界ではまずありえない存在だろう。
神は概念といった人の目には見えない存在なので証明しようがない。
神器といった現在、一応は世界に形には残ってるという存在もまた、神から受け取った武器という証明が出来ない。魔物なんていた形跡すらない。
その存在が『あった』という情報より『ない』という情報の方が現実味があるのだ。
つまり、"今の所は"伝説はただの伝説になってしまっているのである。
勘違いされては困るので弁明しておくが、私はこのような存在が断じて無いということを言いたい訳では無い。寧ろこの世界にいたらいいことだという期待も込めてハッキリと結論付けてはいない。
このように伝説の存在と言われるものは昨今までこの世で信じてはもらえず、幾度も否定されてきた。
なんということだ、実につまらない!
例え、それが本当に存在しておらず、架空の存在だったとしても、信じることを否定することが一番つまらない事だ。
「存在の否定が証明出来ているのなら否定して当然なのでは?」とかい戯言が聞こえて来そうだがそうでは無い。
「分かりにくい、結局お前は何が言いたいんだ?」という声に対して出来るだけ分かりやすく答えよう。
分かりやすく例えるならサンタを信じる子供に対して大人が子供の目の前でサンタなんていないと言ってしまうのと同じ。人の夢や希望を挫くのも同然の発言だ。
信じるものを否定されて良かった試しなんて1つもない。寧ろ夢や希望を挫いてはメリットどころかデメリットでしかない、究極に無駄な事だ。
前置きはこれくらいにして、ここから先は神、魔物、魔法。そんな今ではもしもの存在となってしまった物が実際に存在し、そのまま発展を遂げた世界。
これからその世界で起きる大事件の中心人物に迫って物語をお送りしよう。
■■■
神なんて本当に必要な存在なのか
それについて、最近俺はよく思う。
勝手に人類という知性ある存在を作っておいて何もせずに傍観してるだけで…いや、それだけならまだ良かった、だが────
「おーい、何ボーっとしてるの?」
男は女性の声に呼び止められ、思考を遮り女性に顔を向ける。
今のうちに軽く自己紹介をしよう。今呼ばれた男、俺の名前はヒロ。黒髪黄眼の学生。成績は普通の"ある点"を除いて普通の生徒だ。
そして今俺を呼んだ女性がマイという名前。黒髪ロング赤眼の同じ学校のクラスメイト。一言で性格を表すと世話好きな性格。クラスのみんなから、スリムで容姿端麗、理想の優等生という評判を受けている。
俺とマイは少しややこしい関係なので関係性はまだ説明はしないでおく。また後でしよう。
「ごめん、ちょっと考え事してた」
「別に悪いわけじゃないけど、悩み事でもあるの?」
マイは少し間をおいて答えたヒロを心配する。
「そういうのじゃないんだ」
ヒロがそう答えると、マイは「ふぅん」と言い、少し不服そうな顔をした。
「あっ次の授業の先生厳しいし、まだ時間には早いけど行きましょ」
「ああ、そうだな」
マイは近くにある時計を見て言い、教室へ2人で向かう。
ここはカルミア学園という場所。ここでの学生は社会に出てからの魔法を学ぶ学校だ。
この世界では「魔法」により様々な道具や機械を動かし、生産している。
「魔法」はこの世界を構成する万能エネルギーといったものだ。
この世界において「魔法」は誰でも使えるものとなっていて、かなり身近なものになっている。
ここでは社会に出て、そのような機械を動かす為の魔法を学ぶ専門的な学校"だった"。
何故過去形なのか。その理由は、10年前に起きた、ある神による大量虐殺事件がきっかけである。
───この世界における神は俺たち人類のことをただの玩具だと思っているらしい。傍観するだけでは無くとうとう手を出してきやがった。
だが、人の身では神に逆らう事も何も出来ずにいる。
この国内にも神に反抗する勢力を作っているという噂を聞くが真相は分からない。
今の所は俺たち人間は神が仕掛けてくる"遊び"を理不尽にも"災害"として受け入れるしかないのだ。
その事件以降、子供の頃からの学校教育で社会の為の魔法以外にいつまた来るか分からない脅威に対しての自己防衛の為の戦闘用の魔法や剣術を学ぶことになった。
剣術を教えているというが実際にそこらの一般人が直剣を持っている、という訳ではない。棒を使った護身術の術を習うといったものだ。
戦闘用の魔法は昔は発展していたらしく、大規模な爆発魔法なんてものもあったのだが、工業が発展してからは一切の戦闘用魔法の発展もせず、工業化の影響で大気の魔力が減り、大規模魔法が出来る者もいなくなってしまったらしい。
一応、事故防止などの治安維持の為に街中で緊急時以外魔法を使うことは禁止されている。
正直俺にとってはいい迷惑だ。自分でも剣は人より使える自信はあるからいいのだが──
「さっきヒロが考えてた事ってやっぱり"魔法が使えない"ことだったり?」
マイは申し訳ないような顔をしながら聞く。
「あっ、いや、これは違う…」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしながらヒロはぎこちなく答えた。
───これは事実だ……だから迷惑なんです……
俺は何故か魔法が使えない。
少し難しい話だが、物や機械を動かす為の魔法は元から漂っているエネルギーを制御する為の魔法陣を描いたり操作すればよく、自身がエネルギーを使う必要は無いのだが、自己防衛用の魔法は自身を介して発動させるより体内でエネルギーを使う必要がある。
分かりやすく例えて言うと水(魔力)を通すパイプを外部(魔法陣)で使うか、内部(体内)で使うかだ。俺はこれを内部で使えないのだ。
それが出来ないのは100歩や500歩譲ってまぁいいだろう、日常社会で生き抜くためにはあまり関係ないからだ。問題は学校で理不尽にも成績がついてしまうことだ。
運動が苦手な人を想像して欲しい。
彼ら、彼女らは"根本的に"体を動かすという行為が苦手なのである。幾ら練習した所で限界値が常人かそれ以下なのである。
それなのに体育の授業において理不尽に低い成績が付けられてしまう。
これは今の俺の境遇と同じだろう?!相違ないだろうか!?
いくら練習しても出来ないし流石におかしいから専門家に調べてもらったら「魔法使うのは体質的に無理ですね」とか言われたしで泣きっ面に蜂状態。
……泣き寝入りするしかない現状でとても辛いです…。
「ヒロのその悩み事を1人で抱え込む癖そろそろやめなよね、心配するから」
「心配しすぎだわ、お前は俺のお母さんかよ」
マイはヒロを諭してみるが、ヒロはそっぽを向き適当に返すのであった。
■■■
そのあとも諭され続けられ、同じように適当に返す会話の無限ループを繰り返していると教室へ到着する。
そして扉の目の前に到着すると扉が勢いよく開き
「やっと来たな!」
扉の目の前でヒロ達を待ち侘びていた男の距離感を無視した大声が迎え入れた。
「ユウキ、お前は相変わらずうるさいな、身体の中にセミでも飼ってんの?一週間経ったら静かになるの?」
「律儀に扉の目の前で待ってたのね…」
ヒロ達はジト目で目の前のユウキと呼ばれた男に問いかける。
こいつの名前はユウキ。年齢18歳同級生。俺より少し身長が高い、金髪天パ黒目のいつも
笑ってる陽気な性格の男だ。だいぶ長い付き合いの親友だ。
「ごめんごめん、これから始まるのに遅過ぎたから」
ユウキは少し申し訳なさそうに笑顔で頭を搔く。
「遅い?余裕を持って教室来たつもりなんだけど…あっ」
マイは背伸びをしてユウキの肩から覗くように教室内を見ながら不思議そうな顔で答えるがその違和感にすぐに気づく。
「なんかあったならすぐに言えよな…あ」
遅まきながらヒロも気づき、呆けた声を出してしまう。
「教室に誰もいないじゃない!」
マイは驚きながらそう言う。
「移動教室だからな、急いで準備をしてこい!」
ユウキが笑いながらそう言い扉から離れる。
その瞬間ヒロ達は青ざめた顔で急いで準備をして新しい目的地へ向かうのであった。
■■■
-放課後-
「足痛てぇ…体罰になんねぇのかあれ」
「私の管理不足で…」
「いやー、こっぴどく怒られましたなー」
「何でお前は全然元気そうなんなんだよ、ユウキ」
結局、授業には遅刻し酷く叱られた後にマイ以外は1時間直立で立ったまま授業を受けることになった。
授業を聞くことだけでは蓄積する足の疲労感を紛らわすことが出来ず、放課後になった今でも少し痛い。
マイは女性だということを考慮してなのか、いつまでも授業へ行こうとしない俺たちを注意しに行ったと思い込んだのか軽く注意されただけで終わった。
それなのに落ち込んでるのは自分たちの遅れた原因は自分だと思い込んでるのだろう。世話好きとしてのプライドもあるのだろうか?
「この遅刻事件の原因である俺がいうのもアレだけど、ユウキ、お前は知ってたなら早く迎えに来てくれれば良かったのに」
「マイがいるから大丈夫かなとか思ったからな」
それを聞き、ヒロは黙り込む。
これで納得出来てしまうくらいマイは面倒見がいい。
マイだってミスはあるから頼りすぎも良くないと思っているが、俺もユウキも無意識下で頼りきってしまっている気がする。
「そうだよな、マイ、ごめんな、俺がもう少しちゃんとしてたら…」
湧き上がってきた反省の気持ちでヒロはマイに謝る。
するとマイは今まで下げていた顔を上げ、口を綻ばせながら開ける。
「じゃあ…お願い聞いてくれる?」