異世界の食事
野菜くずが多いもののスープは美味であった。少ないもののベーコンも見える。魚の干物を焼いたものなのかおかずもあるし、主食にはびっくりしたことに白米があった。
この白米には内心感激である。味は現代日本のものからすれば微妙なものだが、白米は白米。まさか異世界で食べられると思わなかったので感激もわかってもらえると思う。
スープの味としてはコンソメだろうと思うが確証がない。というのも悠馬として生きたときには白ご飯にたくあん、具のない文字通りの味噌汁といった最低限くらいしか一人暮らしではまともに食べていなかった。コンソメスープなど数度あったか程度だったのである。
(そう考えるとさびしい食事だったな)
それもユーマがゲームを優先して手の込んだ料理など作ろうとしなかったせいであってつまり自分が悪いのだが。
フライパンで野菜を炒めてという工程すら「手の込んだ」と考えるユーマの現実の料理スキルなどお察しである。
「味はどうだ?」
向かいに座ったサシャがこちらの様子を伺っている。少しばかり不安そうな顔に俺は満面の笑みを浮かべて「最高」と答えた。
これで最高とはどういう食事をしてきたんだお前は、とサシャに苦笑されたが心なしか嬉しそうであった。
この世界の農村の食事事情などわからない。わからないが十分豪勢なのではないだろうか。たくあんとごはんの食事風景に比べれば。
とりあえず明日にはここを出て都市へ向かう旨を伝えるとサシャも異論はないようで黙って頷いた。
食後はもう就寝である。
この世界、娯楽というものがあまりない。日本でも良く見たトランプらしきものがあって少し驚いたが、見つかった娯楽などその程度。電気もないこの世界では日の出とともに起き、夜になればさっさと布団に入る生活をしているらしかった。
明かり用の油などそういったものを潤沢に使えるほど農村には物がないのだろう。サタニストたちのいたこの村でもそういった資源は乏しかった。無駄に起きて物を消費するくらいなら夜はさっさと眠るに限るというわけだ。
サシャによれば町に行けば明かりの魔道具などもある程度は普及しているらしく農村とはまったく生活が変わるらしい。
これは町に行くのが楽しみである。
あとはさっさと寝るだけなのだが少しばかり問題があった。