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少女とアイテム探し(別名空き巣)

精神を回復させて少女と会話する余力ができたのは太陽がそろそろ沈もうとする夕方ごろであった。

悪魔を倒したのが昼ごろで、それから考えると四時間ないし五時間は経過したことになる。

昼から何も食べていない。

正直なところ精神を回復したというよりはただ単に空腹具合が落ち込み具合より勝っただけである。

少女は名をサシャという。

名づけたのはアイで伝えたのは俺だが、まあサシャは喜んでいた。

『はじめての共同作業ですね』

女性声だがAIに言われてもうれしくない。

現実で言われたことのない、というか年齢イコール彼女いない暦だった俺には縁のなかったものだ。

ついでに俺の名前も悠馬からユーマへと変えた。

というのも新しい世界で漢字が通じることはないだろう想定をしていたのだが当たっていた。現にサシャに簡単な漢字を見せてもは通じていなかったのである。もっというならカタカナもひらがなも通じなかったが口からでた言葉が通じるのなら漢字は使わずにそのまま読めばいいかと切り替えたのだ。

ユーマ・クロスブレイド。

これが俺の新しい名前となった。

ちなみにこの世界の文字は俺には読めない。ただ言葉は通じるのは何か魔法的なものが働いているのだろうと思われる、とアイが言っていました。

俺? そんなこと言われるまで気づきもしなかったよ。会話が出来るという疑問にはまったくもって引っかかることがなかったくらいに切羽詰っていたのだ。

『アイ・クロスブレイドですか。格好良い感じが出ますね』

かっこよさなんてわかるのか。いやそれ以前に君も名乗るんだと思ったがアイはアイですごいことをやっていたようだ。

俺が落ち込んでいた間に俺の記憶を覗いていたようである。

もはや何でもアリ。

記憶を再現し、なんと映画なども再現できるらしい。今は映画三部作の第一部を鑑賞中ですと言われた。お前本当にAIですかと問いたい。あと俺にも見せてほしい。

さて、俺もサシャも今無人となった民家を荒らしている。

戸棚を開け、食料となるものやその他便利品を集めて回っているのだ。

資料となりそうなものはその場でパラパラとめくっておく。

速読にもほどがあるだろうという速度で、それで読めるのかというサシャの視線が気になるが実際俺も読めていない。当然ながらこれを読み込んでいるのはアイのほうである。あとでそれらを統合して教えてもらうことになっているのだ。

それにしても気分はドラゴン・ファンタジーの勇者である。他人の家に土足で上がりこみ勝手に戸棚を開けてまわるアレだ。

子供心に他人が見ている目の前で戸棚を開ける勇者の神経って図太いのだなとか思っていたが、三十にもなって今似たようなことを現実にやっているとは子供のころの自分も思っていなかったろう。

俺やサシャになる前のあの悪魔を召喚したサタニストと呼ばれる者達が隠れ住んでいたアジトのような場所がここだった。

あの召喚のときにサタニストをまとめて吹き飛ばしてしまった結果住人ゼロとなってしまっていたのだ。

それに意外なことに探索中は硬貨が結構な頻度で見つかった。サタニストたちの工作用資金なのかもしれないな。ありがたくいただいていくが額も数えたら結構な大金ではないだろうか。

それにしてもサタニスト以外が住んでいなかったというのも驚きだが、村を形成できるほどには生きていけたというのもまた驚きだった。

『悪魔召喚ができる彼らはそこいらの村人よりは強いですから、魔物に襲われそうになってもなんとかなったのでしょう』

なるほどね。

魔物いるんだ。とか思いつつも、魔界やらなにやら単語が飛び交う世界である。まあいるんだろうなくらいには思っていたので受けた衝撃はあまりなかった。

そんな話を脳内でしつつ、食料やそのほか必要なものは順調に集まっていく。

食料は日持ちのするものをアイテムボックスや手荷物に放り込み、日持ちのしないものは調理してしまうことにする。アイテムボックス内の時間の流れなどがどうなっているのかいずれ検証しないといけないが、現時点ではこのような使い方となってしまう。

俺たちはそれぞれの家から使い勝手のよさそうな調理器具や皿まで分捕り、一番大きな家で食事を取ることにした。

調理担当はサシャである。

「なんか失礼なこと考えてないか?」

若干の不満顔をサシャが向けてくるが、そんな様子すらかわいく見えるのだから美人とはいいよなと思う。

「いや、なんでもないよ」

悪魔が調理できるのかとおもったがそこはなんとかなるらしい。

一回目の現界のときに主人の身の回りの世話もしていたらしくそういったことはあらかたできるとのことである。

「ユーマはできるのか?」

「出来ないと思う」

一応フライパンで焼く程度は出来るだろう。味付けといわれるとしょうゆをたらす程度だろうか。

というのも悠馬としては炊飯器とか、混ぜれば簡単とかそういう便利グッズがあったから何とかなったのであって、じゃあ釜でご飯炊けとか、レシピの細かい部分、しょうゆ、みりんが大匙いくらでとかいわれると出来ないと自信をもっていえる。

「だから、おおいに期待してるよサシャ」

「ふふ、ご主人様から頼られるのはいいものだよ。わかった楽しみにしているがいい」

にやりとした笑いも美少女がやるとさまになるのだな。

ご主人様なんて美少女から言われると少しばかりこころが踊るよね。メイド服などあれば着せたいくらいだ。スレンダーなサシャのことだからきっと着こなしそうである。

出来上がりを居間で待ちつつこちらは作戦会議である。

といっても傍目には俺一人しかいないので会議場所は脳内になる。

『会議始めましょうか』

アイの言葉で脳内に広がるのは地図である。

これは先ほど民家から押収したものを脳内で再生したもので、日本で見るようなあの精巧な地図とは違って縮尺も微妙そうである。だがそれ以上の地図は見つからなかったので仕方がない。

まずは現状から。

俺達がいるのは大陸なのか島なのかもわからない。なにせ世界地図なんてものがないからだ。だからそのあたりは一度ほうっておく。

さて、この村を中心に考えると地図上では北、北東側はほぼ山だ。山を越えれば国があるようだが、ひとまずそれは置いておく。すぐ南西へ行けばある程度の都市があるようでそこから東西へ街道が延びている。

さらにその都市から見てみる。

東へは山に沿って向かうことになるが、ほぼ一本道でその先にも都市がある。

西は平野部分となっていていくつか街道が分かれているが最終的には山に阻まれこれまた一本道になる。山の切れ目ほどでまた道はあちこちへ広がるのだがそのあたりは地図には載っていない。

次に南部に目を向けてみる。

この村は面していないが南西に存在する都市は海に面している。湾の形なので港町としても栄えていそうである。もしかしたら海路などでどこかともつながっているかもしれないが、そのあたり地図ではわからない。

『北部の山は魔物の住処となっているようです。だからこそ一般人があまり近づかないのでサタニストがこうして潜伏していたようですね』

脳内の地図に魔物のアイコンが書き込まれる。

クロスブレイドの討伐クエストで見慣れたもので非常にわかりやすい。

『先ほどの海路の件ですが、一応海にも魔物は存在するようです。もしかしたら南西の都市は海路がまったくない、あるいは海軍力の強い都市である可能性があります』

地図はこれくらいにして次はこれからどうするかだ。

そもそも俺は弱い。装備のおかげで段違いの能力になっているが、装備がなければ人間の赤子にヒットポイントでも劣る程度でしかない。

無理して魔物のいる世界を旅する必要があるのかどうかだ。

『一応肉体の成長はあるようです。マスターは致命的に成長速度が遅いですが、一度成長すれば能力上昇率からして赤子以下から少年程度には能力が上昇するかと思われます』

それでも少年なのか。まあいい。成長するということがわかればそれで。

このあたりの魔物の強さとかわかるだろうか。

『観測範囲での魔物では危険なものは少ないです。剣蜘蛛や大蛇などに遭遇しなければ問題ないかと。あとは野生の熊あたりですね』

熊ですら怖いのに名前からして強そうな剣蜘蛛や大蛇など相手に出来る気がしない。どんな姿かがわからないから余計に怖い。

『成長するには戦闘は手っ取り早いですが、それ以外でしたらいろいろと経験するのが良いようですよ』

いろいろと? どんな?

『何によって成長するのかは不明ですが、戦闘以外でも成長する余地があることがわかったのは大きな収穫かと思います』

確かにな。いろいろ試してみる必要があるが、これってつまりは、

『人生を楽しめということですね』

そういうことだろうか。

最後に悪魔、特に大罪の悪魔についてだ。

『七つの大罪ですね。こちらの世界では強欲、暴食、嫉妬、怠惰、色欲、憤怒、傲慢となっています』

悠馬として生きた世界と変わらないな。人間はどの世界でも変わらないということだろうか。

ともかくとしてこいつらを呼び出して何をしようとしているのかだ。

民家を探し回った結果として数冊の日記や資料が見つかっている。それらを流し読みしアイにまとめてもらった結果だが、まあ簡単に予想していたこととあまり外していない結果が出てきた。

すなわち世界の滅亡である。


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