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ようこそ異世界へ(さっそく絶望)

驚くべきことが発覚した。

最初俺は異世界転生だと思っていた。

ところがだ。異世界転生というのは異世界に赤子として生れ落ちることが異世界転生というそうではないか。

じゃあなんなのといえば異世界召喚というのが自身に当てはまるのではないか、とのアイの言葉である。

はあ、なるほどね。

ところがだ。それをまた覆すような話をアイは始めたのだ。

この体、つまりドッペルゲンガーとしては赤子としてこの世界に誕生したらしい。

なんだそれは。意味がわからない。

最初に悠馬ゲームキャラが異世界転生としてゲーム上の種族そのままにこの世界、より詳しく言えば魔界に生まれる。つまりドッペルゲンガーの赤子として魔界に生まれた。

ドッペルゲンガー自体には赤子という概念はなく本来の姿も何年経とうが一定のようだがそこはおいておくとして。

さらにそこからである。こんどはこの世界の人間界に悪魔召喚で呼び出されたのようだ。

まさかの二段階召喚。

通常生まれたばかりの魔物は悪魔召喚では呼ばれることはない。

だが特定の条件しだいでは稀に人間界へ呼び出されることがあるらしい。

例えば、「特定の役割をこなしかつ簡単に御せる、もしくはその程度の強さの悪魔」を狙って召喚したような場合である。

あの召喚のときは俺が生まれた瞬間にたまたま呼び寄せられた挙句に悪魔が二体同時出現という稀に見る事態が起きていたのだ。

なんの奇跡だよといいたいし、どうせ奇跡が起きるならもっとマシな類の奇跡をよこせといいたい。

もっとも頭が痛いのはこれだ。

簡単に御せる、もしくはその程度の強さの悪魔。

それってつまりだ。

『マスターは正直申し上げて装備がなければただの雑魚です』

はっきり言いやがったちくしょう。

特定の役割をこなす。

これは問題なかったようで、強欲という役割を持つ悪魔が存在する、ということがあのローブたちが望んだことらしいのでこれに関しては条件を満たしている。要は人間界に存在していればいいのだから。

二つ目の簡単に御せる、もしくはその程度の強さの悪魔という部分によって、さっき倒した悪魔と俺が召喚された理由になるらしい。

なるほど、さっきの悪魔は現界できるならなんでもいい、というスタンスだった。つまり御しやすい。

対して俺は能力的に恐ろしいほど弱いから召喚されたというわけだ。

なにこれへこむ。

ローブたちの誤算は二体出てきてしまったことと、俺のほうのスキル関連とか装備が強さには加算されなかったことだろう。

『装備やスキル等も加味して、という文言を入れるべきでしたね。こちらの世界でスキルとやらをどういえばいいかわかりませんが』

いやそういうダメ出し聞きたいわけじゃないんだ。

俺の能力的なものがわかるか?

そうアイに問いかければすぐに一覧として表示してくれる。

それはクロスブレイドで見慣れたステータスボードである。おそらく見やすいかとクロスブレイドにあわせてアイが用意してくれたのだろう。地味なところでこちらにあわせてくれるアイは本当に有能である。

そんなことを考えつつもそれぞれ能力値を見ればすぐにわかった。

クロスブレイドでは能力値は以下のとおりに表示される。

左側に何も装備をつけていない状態での数値。つまりこの体自体の強さだ。右側には「+」表記と装備分の上昇値が表記されている。

クロスブレイドでは装備で強化できるのはヒットポイント以外のすべてであり、ヒットポイントはどの種族でもレベルアップによる上昇か課金によって直接上げるしか方法はなかった。

そしてクロスブレイドのゲームシステム上防御力をいくら上げようが攻撃があたればヒットポイントは必ず一は減るようになっていた。

そうしなければ装備も充実する格上相手に勝利など難しくなってしまう。そのあたりを考えられた処置だった。

悠馬の見ているステータスボードのヒットポイント欄は一桁。他のステータスが装備を含めて(というか装備分だけで)五桁には届く中、それだけが一桁。

三という数字しか書いていない。

『概算ですが人間の赤子で四~五ですので、赤子以下ですね。最弱おめでとうございます』

うれしくねぇぇぇ!

え、こんなに弱いの? そりゃ召喚もされるわ!

『なおこの召喚がなかった場合、魔界での戦いではまず何度も死ぬことを繰り返していたかと思います』

そうか召喚されて人間界にいるってことは死んだとしても魔界には戻れるんだよな。ちなみに今戻るとどれくらい死ぬことを繰り返すんだ?

 死んでもなんとかなるという情報は俺にとってはありがたい情報だ。

すこしばかり気分が高揚したのだが、

『魔界での戦いというのは激しいものです。殺し殺されのそういう世界ですのでこのステータスでは数秒生きられればいいほうだと仮定すると約一億五千万回ほど死亡してようやく一分生きられるようになるかと』

即座に霧散した。

 気分の向上分も誤差の範疇といえるくらいに下落である。

やってられるかあぁぁぁ!

リスポーンキルみたいなものである。心がもたない。修羅すぎる。死亡で魔界戻りは却下だ。やはりヒットポイント三で人間界を生き抜かないといけないようだ。

『なおマスターの場合は能力上昇率を極限まで上げた結果逆に成長しづらくなっております』

は?

『マスターの世界の言葉で経験値、ですか。これの必要数がこの世界の人基準で数倍以上となっています』

つまり必要経験値が通常よりも数倍多いと?

『そのとおりです』

そういえば必要経験値を上げる代わりにレベルアップ時の成長率上げる設定にしていたな。

何してくれてんだ俺えぇぇぇ!

勢いよくテーブルに突っ伏す。

おでこが強打されるがそんなことかまっていられない。

心を覆うのは絶望である。

どうやって生きていくんだよ、そう問いかけたところで答えが返ってくることはない。むしろ、

『今の強打でヒットポイントが二に減りました』

更なる絶望へ叩き込まれる。


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