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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
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追う為に

 ダンジョン攻略が済んだら、ギルドへと報告するのは冒険者の定め。それに従い俺も〈グーバス王国〉中央ギルドへとやって来た。


 まず来て驚いたのが、そのままだった事だ。星の中心で核爆発を数度起こしたはずなのに、大した変化がない。ギルドの建物も、街も、城も。果てには〈ファイウダルの森〉さえ変化が少ない。そこそこの丸太が積まれているだけで、倒木がないのは何が行われたのか。


「英雄の片割れが帰って来たぞぉぉお!!」

「「「なんだってーー!!!」」」

「英雄だと?! 違う! 一対の神だ!!」


 いつの間にか英雄となっていた。


「やれやれ、あの程度の結界で大騒ぎとはな。(やつ)の技を見るだけで死ぬぞ、こいつら」


 ルシュフェルが呆れている。何をしたんだこの堕天使。


「ルシ()()さん、何をしたんです?」

「元皇帝とやらを増幅出力装置とし、耐震を付与して回らせた」


 流石は元最高位。サボり方や隠蔽の仕方が上手だ。動き回る事はないし、自分の仕業と天使にバレにくい。俺の監視は始まっている……というより、なんで速攻で来ないのだ〈天使軍(キリエ)〉。


「姉御! 望みの品です!」

(わたくし)からは、つまらないものですが化粧品を」

「受け取れ。下がるがよい」

「はっ!」


 喧嘩やナンパでもした後、下僕へと進んでなった者達だろう。それらからの品を俺に持たせる。巨大な魚は彼女が浮かせたままだが。


[高嶺の花の荷物持ち。出世したな]


 《内対(ククラ)》からモブのような現状と伝えられる。


(あぁ大出世だ。そして俺の方が実は上…凄く良い)


 状況を認識し変換する。凄く好みな展開だ。全力でモブを演じる事はないが、ナンバー9や執事の方が実は上位で……。


「済ませてこい」


 ルシュフェルから現実に引き戻される。小さい用件を済ませ、天使対策を進めるべきだと。焼き魚の匂いを遮断する。


 立ち向かおうとする意志を感じて、その前に行く。


「本日はどのような御用でしょうか」

「ダンジョンらしきものを踏破したのでな、素材とかを持って来たぞ」

「大量ですよね? ではあちらへ」


 かなり短く話を終え、次の素材買い取り所へと向かう。《内対》が言うには『そや顔』をしているそうだ。


 素材買い取り所はまだ弱かったのか。


「ヨウコソ ココ二 ソザイヲ」


 ロボット化してしまい。周囲の哀れむ目線が凄い。


 無線と、素材シューターを早める必要があるのだろうか。いや俺がイレギュラー認定だから、戦車等の発展文明も同じ末路か。


 素材を乱雑に置きまくる。同調しないと間に合わないので、ロボット化した方も雑に素材を投げる。それでいて、素材入れが傷つかない。


「オマチクダサイ」


 素材の取り出しを中断させられる。何かの限界が来たのだろう、素早く溢れさせようとする《内対》を抑える。


「カンキンガ ムリナノデス」


 レア過ぎたりして金が足りないか。仕方ないね。


「ヒトマズ コチラデ」


 どこかしらで見た、札束詰めのバッグと小銭袋を渡され、気分が高揚する。気分は社長のようだ。


[そのカードをこれと交換してくれ]


 どこかで見た社長を出されるが無視。


「ルシ義姉、終わったよ」

「……あぁ、行こう」


 巨大皿に骨と頭を残し、ルシュフェルは口を拭いていた。この場で往来の邪魔でしかない飲食をして、誰からも文句を言わせない。まさしく支配者だ。

 骨と頭を食い、ギルドを出る。出た後には。


『どっちが上なんだ?』

『俺は対等だと見ている』

『私は頭や骨を残した意味が、分からないの』

『それより彼奴の犬耳はどうした?』


 等の会話を聞かされた。




「さて、天使への対抗だが」

「はい!」


 威勢よく返事をする。堕天使から授かるのだから当然だ。


「其方の闇では照らし切られ、浄化されるのが見えておる」


 予想通りだ。回復主体のはずのラファエルにさえ、攻撃されたら貫通しそうなのだから。


「では?」

「簡単な事よ。余の加護をくれてやろう」


 簡単ではある。光と闇を併せ持つ彼女の加護、それを彼女は、与えるだけで良いのだから。


「俺にそんな器が?」


 他人の魂が存在し、〈竜〉を喰らい、なかったはずの能力(もの)を持って、それで器が余っている? そんな事があり得るのだろうか。


「知らんな。なければ魂を喰らうだけだろう?」


 主人から子分、子分から主人の相互関係。子分による下克上。どちらにせよ、ルシュフェルは得をする。流石は悪魔王、魂の取引では普通に上を行く。


「そうですね。ではお願いします」

「まぁ待て。余の加護は二度に渡って与えられる。日の沈みと日の上がりにな。その両方を受けきった時、其方は完成する」


 上位存在となれば意味合い、験担ぎが重要になるのだろう。それに彼女自身、二度産まれを経験したようなものだ。


 時刻は[15:06]まだまだ夕方には遠い。恐らくは日の沈みギリギリでの儀式となる。それまでは暇なので。


「ルシ義姉さんの昔話を聞きたいな」

「その前に、その呼び方になった訳を聞こうではないか」


 非常にゾクゾクしながら時間を潰す事にした。

 節々にあるルシュフェルの微笑みが心を常に射つ。俺のツボは押さえられていた。 

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