追う為に
ダンジョン攻略が済んだら、ギルドへと報告するのは冒険者の定め。それに従い俺も〈グーバス王国〉中央ギルドへとやって来た。
まず来て驚いたのが、そのままだった事だ。星の中心で核爆発を数度起こしたはずなのに、大した変化がない。ギルドの建物も、街も、城も。果てには〈ファイウダルの森〉さえ変化が少ない。そこそこの丸太が積まれているだけで、倒木がないのは何が行われたのか。
「英雄の片割れが帰って来たぞぉぉお!!」
「「「なんだってーー!!!」」」
「英雄だと?! 違う! 一対の神だ!!」
いつの間にか英雄となっていた。
「やれやれ、あの程度の結界で大騒ぎとはな。神の技を見るだけで死ぬぞ、こいつら」
ルシュフェルが呆れている。何をしたんだこの堕天使。
「ルシ義姉さん、何をしたんです?」
「元皇帝とやらを増幅出力装置とし、耐震を付与して回らせた」
流石は元最高位。サボり方や隠蔽の仕方が上手だ。動き回る事はないし、自分の仕業と天使にバレにくい。俺の監視は始まっている……というより、なんで速攻で来ないのだ〈天使軍〉。
「姉御! 望みの品です!」
「私からは、つまらないものですが化粧品を」
「受け取れ。下がるがよい」
「はっ!」
喧嘩やナンパでもした後、下僕へと進んでなった者達だろう。それらからの品を俺に持たせる。巨大な魚は彼女が浮かせたままだが。
[高嶺の花の荷物持ち。出世したな]
《内対》からモブのような現状と伝えられる。
(あぁ大出世だ。そして俺の方が実は上…凄く良い)
状況を認識し変換する。凄く好みな展開だ。全力でモブを演じる事はないが、ナンバー9や執事の方が実は上位で……。
「済ませてこい」
ルシュフェルから現実に引き戻される。小さい用件を済ませ、天使対策を進めるべきだと。焼き魚の匂いを遮断する。
立ち向かおうとする意志を感じて、その前に行く。
「本日はどのような御用でしょうか」
「ダンジョンらしきものを踏破したのでな、素材とかを持って来たぞ」
「大量ですよね? ではあちらへ」
かなり短く話を終え、次の素材買い取り所へと向かう。《内対》が言うには『そや顔』をしているそうだ。
素材買い取り所はまだ弱かったのか。
「ヨウコソ ココ二 ソザイヲ」
ロボット化してしまい。周囲の哀れむ目線が凄い。
無線と、素材シューターを早める必要があるのだろうか。いや俺がイレギュラー認定だから、戦車等の発展文明も同じ末路か。
素材を乱雑に置きまくる。同調しないと間に合わないので、ロボット化した方も雑に素材を投げる。それでいて、素材入れが傷つかない。
「オマチクダサイ」
素材の取り出しを中断させられる。何かの限界が来たのだろう、素早く溢れさせようとする《内対》を抑える。
「カンキンガ ムリナノデス」
レア過ぎたりして金が足りないか。仕方ないね。
「ヒトマズ コチラデ」
どこかしらで見た、札束詰めのバッグと小銭袋を渡され、気分が高揚する。気分は社長のようだ。
[そのカードをこれと交換してくれ]
どこかで見た社長を出されるが無視。
「ルシ義姉、終わったよ」
「……あぁ、行こう」
巨大皿に骨と頭を残し、ルシュフェルは口を拭いていた。この場で往来の邪魔でしかない飲食をして、誰からも文句を言わせない。まさしく支配者だ。
骨と頭を食い、ギルドを出る。出た後には。
『どっちが上なんだ?』
『俺は対等だと見ている』
『私は頭や骨を残した意味が、分からないの』
『それより彼奴の犬耳はどうした?』
等の会話を聞かされた。
「さて、天使への対抗だが」
「はい!」
威勢よく返事をする。堕天使から授かるのだから当然だ。
「其方の闇では照らし切られ、浄化されるのが見えておる」
予想通りだ。回復主体のはずのラファエルにさえ、攻撃されたら貫通しそうなのだから。
「では?」
「簡単な事よ。余の加護をくれてやろう」
簡単ではある。光と闇を併せ持つ彼女の加護、それを彼女は、与えるだけで良いのだから。
「俺にそんな器が?」
他人の魂が存在し、〈竜〉を喰らい、なかったはずの能力を持って、それで器が余っている? そんな事があり得るのだろうか。
「知らんな。なければ魂を喰らうだけだろう?」
主人から子分、子分から主人の相互関係。子分による下克上。どちらにせよ、ルシュフェルは得をする。流石は悪魔王、魂の取引では普通に上を行く。
「そうですね。ではお願いします」
「まぁ待て。余の加護は二度に渡って与えられる。日の沈みと日の上がりにな。その両方を受けきった時、其方は完成する」
上位存在となれば意味合い、験担ぎが重要になるのだろう。それに彼女自身、二度産まれを経験したようなものだ。
時刻は[15:06]まだまだ夕方には遠い。恐らくは日の沈みギリギリでの儀式となる。それまでは暇なので。
「ルシ義姉さんの昔話を聞きたいな」
「その前に、その呼び方になった訳を聞こうではないか」
非常にゾクゾクしながら時間を潰す事にした。
節々にあるルシュフェルの微笑みが心を常に射つ。俺のツボは押さえられていた。




