先立ち
「何をした?」
無傷の俺は剣の残骸を食らう。力は大したものではない、少なくとも目の前の天使よりは。
「何の事?」
ラファエルは首を傾げ俺に近づく。それを俺は彼女の腰に手を当て、距離を取る。一応は敵対の立場であり、真意を掴んでないからだ。
「惚けるな。スルトが明らかに弱体化していたぞ」
〈天使軍〉と抵触するからといって、星の守護者より天使が上だったとして、それを行った彼女は何なのだろうか。得体の知れなさで遠ざける。
「ゼルが勝って生き残った。ならそれでいい」
俺の縛りは強固なのか? いや、首輪も紋章も消してある彼女を見るに、完全に俺本位ではないのだろう。
天使は忠実なる神の奴隷。機械という解釈をした作品もあった程、神の為の無慈悲な存在。慈悲を司るラファエルは『与えない、奪う』も可能なのだが。
果たして俺が生き残って神の益になるのか?そこをぶつけよう。
「教えてくれ。〈天使軍〉とは何だ?」
「文字通り天使の軍勢。ヴェラド神の元に残る数名を除き、全ての天使が集まる」
「……ならば君も」
「うん。でも〈軍〉じゃないから今は自由」
「それが例えヴェラドに反していても?」
少し彼女は思案しているようだ。反するではなく無益の方が良かっただろうか。
「遍く全て、それは魔も範囲内。スルトも貴方の中で、共に癒される」
成る程、結果論で反していなければセーフなのか。そういえばルシュフェルは、ユダガムをしていなかった。
少し理解したが、やはり敵と言えば敵だ。仲を良くする訳に。
「んっ……」
ラファエルが口内に舌を入れ込む。当てていた手を回し、空ていた方で彼女の頭を押さえる。
数分はそのままだった。互いの呼吸と鼓動が合い、各々の性の匂いと波動が混濁する。しかし心は非常に穏やか。
「ぷはっ……好きにしていいのは、此処だけだよ?」
恐らく外に行けば、天使や神が手を込ませずに、此方を見ることが可能になるのだろう。
「ふわふわのベッドがいいなぁー。押し倒されて、キスされて、それから……」
物欲しそうな目と延々に合わせる。
[〈魔王〉に〈熾天使〉がおねだりをしている。理想のワンプレイやぞ、据え膳を食うがよい]
《内対》からのGOサインが出る。本当に裏がないようだ。
ベッドへと変化させ、そこへ彼女を押し倒す。既に表情は恍惚としていた。
「受けさせて………ゼル…」
「NO.My engel.軍行動に支障が出るのは頂けない」
「意地悪……裁かれちゃえ……」
[12:00]三時間、密に搾られて。『送って?』と言われたので、また二人密着で掘る。出るのはダンジョンでなく、海になりそうだが気にしない事だ。
「スー………スー……」
天使の寝息に癒されながら上に進む。犬耳と尻尾も良かったが、この翼も良い。包まれれば、胎内のような快を覚える。
(妹の力を感じ、来てやったぞ?)
ルシュフェルが内に来たようだ。一番、聞きたい相手には違いないので、内側へと行く。
「本当に天使ですか?」
「そうだ。疑いようもなく彼女はラファエルだ」
堕天使からの天使の情報は信用出来る。彼女もまた一応は、神の敵なのだから。
「堕天使の召喚が原因ですよね?」
「闇が動けば、光の動くは当然だろう」
考えなしに闇の消費を悪魔へ使ってしまった。その代償は、嫁との敵対である。召喚しなくても、イレギュラーなので、と消される可能性は十分にあるが。
「シュアが戻る事は?」
地味に気にしていた事なので、聞いてみる。種族は戻れずとも、見た目や関係を戻したいのだ。
「シュアはラファエルの一面に過ぎないが、逆に言えば扱えるということ。だが、神の許しがなければ、貴様の傍にいる事は」
ヴェラドのフットワークが、軽い事を祈るしかないのだろうか。とにかくラファエルとなったシュアが、手元にいる状態にする為の手立てを考える。考えても埒が開かない。結果としてヴェラドに全てが委ねられているのだから。
海へと出る。暗く全てを認識するのに、時間が少しかかる。
「ウォウ」
「ヒサシーナ」
〈キテル〉が待っていた。何て出待ちなのだろう、心臓に悪い。
「ヒカリノハドウ」
「俺の嫁からだ」
「ダメカ」
「当然だ。渡せない」
ガチの邪神が〈熾天使〉を喰らう……想定される内、最悪の事態だ。絶対に渡せない。
「天使について知っている事は?」
「トップガシダイノチカラトシカ」
四大属性になぞらえてあるそうだ。まぁ普通ではある。
「ワレノアイテハ リュウダッタカラナ ホカノシラヌ」
あの〈龍〉を相手に消滅させられないとは、中々に恐ろしい耐久力だったのだろう。
食えないと分かり、少しの会話の後に〈キテル〉は自分の住み処に戻る。
(ほぅ、奴を狩り残してしまったか)
(ルシ義姉の知り合い?)
(数度も引き分けている)
当時のルシュフェルが引き分けを続ける存在するか。それは強い。
(妹が目覚めるな、余は一度離れる事としよう)
(〈対天使〉はルシ義姉が頼りだから。お願いします)
ラファエルの目覚めを、感知したルシュフェルが退場する。一応の切り札だからな、隠しておいて損はない。
「おはよ」
「おはよう」
彼女に最後となるかもしれない、目覚めの挨拶をする。それを分かってか、彼女もまたしょんぼり気味だ。
「そういえば、何処にお出かけ何だ?」
「〈月〉にイレギュラーの報告……あっ、ゼルだけじゃなくてサイフィさんのも」
イレギュラーは正義であれ制裁されるようだ。可哀想な元皇帝、俺とそこそこ張り合ったばかりに、天使に滅ぼされるのだから。
「そう。じゃあ後で迎えにいくから」
「………うん。行って来るね」
小鳥のキスをして、ラファエルは飛び立つ。
「……履いてない……」
呟きの直後、氷塊が降る。羞恥も変わっておらず安心だが。
「夜が寒いなぁ」
シュアのいない、夜の寂しさを感じてしまうのだった。
《内対》[盛りますねぇ!]
サイフィ「あと2つの要素で、奴のコンボが完成する」




