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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
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不正な誠実

Q 腕使えるの?使えないの?


A パンチに「は」使えない

 死の避けられぬ熱量弾が溜められている。〈キテル〉等の行った太陽顕現を、遥かに越す退魔性。スルトはイレギュラー〈魔王(ゼノ)〉対処『Lv4』でもある存在なのだ。


「ゼル…」


 二度目の喪失感を味わいたくないシュアは、考えを巡らせる。手を……手を……と思考の波に呑まれる内に、自身の内面に目を向け始める。

 内側の底、そこにはゼノムとの繋がりがある。これを使えば、遠くからでも彼の助けになる。という考えだ。


 考えは甘く、彼女の魂は余りにも深かった。


(これは……誰の記憶?)


 外で虫に噛まれる奴隷、女性初の院生、星々を巡る、大海を常に泳ぐ………何度の生を享けていたのか。

 訳の分からないまま、より深く入り始め。


「うぅ」


 体に痛みが走る。背中の方から何かが飛び立とうするような、体の引っ張られ具合。


『妹達よそれで良いのか』


 シュアは察した。進めば戻れない事を。自分の種族が変化するのだろうと。彼のお気に入りの存在から、一旦、外れる事になるのだろうと。

 

 だからこそ彼女は止まらない。愛する存在の為に、魂の深淵へと身を投げ続ける。


『我等は(しもべ)、主の下で動くもの』


 背中が割れた。耳や尻尾が無理矢理、押し込まれた。胸に力が収束された。


『我はミカエル』

『我はガブリエル』

『我はウリエル』

「我はラファエル」


 力が全身へ駆け、波動が周囲へ漏れる。人格が掘り起こされ、同時に〈集合令〉が出されていることを知った。


『イレギュラー〈魔王〉へ〈天使軍(キリエ)〉の発令。最近辺基地の〈(ルナ)〉に集合』


「あぁ…」


 この場で彼を助けるべきなのか? より強い退魔が待ち構えているのに。

 助けないのか? 隔てない癒しの権能を、与えられた自身が。

 助けるのは? 愛すべき夫? 同じく神の僕である火の巨人?


「………彼は……そう……発令された〈天使軍〉にてすべき」


 彼女は拡大解釈を行った。天使の行いの不履行を目指す存在は、神の敵だと。


「主よ。御心の邪魔を排除いたします」


 三対六翼でゼノムの元へと、ラファエルは向かった。

____________________________________


 シュアとの回路から力が流れ込む。癒しを主にした力が。ボロボロの体は万全を通り越し、成長している。


 シュアがいる方から何かが飛んでくる。そう理解した瞬間。


ギュウゥゥ


 凄くいい匂いの何かに抱き締められ、戸惑いしかない。


「大丈夫? 怪我してるとこない?」


シュアの白い翼で包まれた上に抱擁。白い翼となればアレだ。とにかく無事を伝えよう。


「無いぞシュ」


 彼女の指が俺の口を押さえる。名前を呼ばれたくないらしい。


「今の私はラファエル、癒しの権化………好きなだけ吸って」


 話を聞きながら指を吸っていたら、そう言われた。ついでに胸の強調をしてきたので、目が行く。


[最後から2cmアップ……これが天の威か]

「んー………魔力による身体構造の変化だから、ゼルと同じだよ?」


 まじめに彼女は対応してる。

 自分の呼び方は変えさせて、俺の呼び方は変えない。実際に上だが驕りをやられるのは嫌いなので。


「ひゃっ! そこは駄目…めっ!」


 翼の付け根を撫でたら怒られた。獣成分が別方面に行ったが、愛くるしさが相変わらずなので全然大丈夫。


『答えよ、天使』

「既に〈魔王〉は〈天使軍〉による討伐が確定している。貴方は相手してはいけない」


 遠回しな嫁からの殺害予告を受けた。《内対(ククラ)》が大爆笑しているのがよく分かる。俺だって笑うしかないのだから。

 とりあえず距離を空ける。


『我の任の中に』

「天使の決定より優先されると思いで?」


 ここまでの強気は初めてだ。あぁ、踏まれたい。


『しかし背任するわけには』

「簡単です」


 彼女はスルトと俺に向かって何か放つ。効果は。


「互いに治癒能力を下げての決闘なら」


 さらりと〈巨人(ティタン)〉の、それも星と繋がった存在の回復能力を下げる。これが嫁か、誇らしいものである。


「はい、開始」


 宣言は唐突だった。

 


 回復能力を下げたとして、依然、体力の多さは変わらない。これまでより無茶な動きがしにくくなったので、削りにくさも上がっている。


 基本は回避を優先して逃げ回る。しかしスルトの攻撃は通常で高範囲、高威力。地上じゃ地震どころか、断層だらけになっていそうだ。


[あれ? 弱火じゃね?]


 《内対》に言われて剣を見る。後から取り出した方の火が、弱まっているのが分かる。もしや剣が本体? 次の好機では武器破壊を狙う事にした。


 聞いていたのか、遠距離か下賜の剣でしか来なくなる。いや、これは下賜を先に折ろう。


「〈雷化(スパーキング)〉」


 急速接近で意表を突く。勿論、狙うのは本体剣だが。


『ぅぬ!』


 下賜を差し出しにくる。遠慮なく折らせていただこう。


「〈刀死(ソードブレイク)〉」


 見覚えのある特殊な刀の折り方を真似る。勿論、自分の身体では無理なので変化させた体で挟み。折る。


『馬鹿な?!』


 まさか本当に折れるとは思っていなかった。これはどういう事だろうか。


[知らなくて良いこともある]


 絶対、訳が分かってる。教える気がないのはどうしてだろうか。


『〈炉心解放〉』


 相手の手札を全て見た訳ではなかったからか。ならば仕方ない。

 本体剣から炎が吹き上がり、また消える。いや剣に収斂しただけか。


 『〈緋線〉』


 実質、光刃と化した大剣が振られる。狙って紙一重で避け、剣先と刀身の根元を掴み、軸を根元に回転させる。

 スルトはバランスを崩し、剣から手を離す。


 離れた剣が暴れるように爆発と灼熱を繰り返すが無問題。そのまま剣を上に掲げて、手放し。


「〈羅拳(カノン)弐之打〉」


 鍔と刀身に拳を入れると剣より光が漏れる。大爆発の前兆だ。 

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