真の場
Q 「日にち」忘れ
A いや、ダンジョン内の感覚の乗りの保護のために《内対》があえて告げなかったんだ。タイマーはやるけど。
天の水門が開かれ、地は海と化す……そんな表現が合うような滝が生成された。ここは海へと沈むであろう。
「あれに乗れば、地上に出れそうだな」
サイフィが冷静に、中央に出現した魔法陣を指す。そういうものだと信用するのも、いいがそれよりも気になる事がある。
「そうだな。先に行ってていいぞ」
「何を考えている」
帰還の自由を伝えたら、勘が働いたようだ。同類への推察か?
「床や天井が壊れた覚えは?」
「……少なくとも、ここではここだけだな…まさか」
「そうだ。どうする? 別にないかもしれないが」
ダンジョン内でサイフィと戦った時でさえ、上の階にいたシュア達に、流れ弾が行ったという事がない。なのにこの階は床にヒビがはいり、天井にいたっては、大穴が穿たれた。
「この階までで6,200km」
「…………途中で疲れたから、乗せて貰っていたりしたが」
サイフィ達の体力は人外領域であるが、そこまで長続きな訳ではない。また魔力や精神回復のために、睡眠を挟んでいたりした。三時間程度の連続で、その間も俺にくるまれ、階を進んでいたのだ。
「そしてこの階は101km」
「あと70kmか」
合計6.301km。地球と同じになるまで、あと70km。そしてこの階が壊せるとくれば。
「ダンジョン裏か、星の核に到達する。どうだ?」
「……パスだ、危険にも程がある。星の守人が確実に居るからな。俺はお前より、困る人数が多いんだ」
サイフィは断りを入れ、光の中に消えた。忍者も追い、数日ぶりの二人きりとなる。
「シュアはどうする?」
「もう、帰りを待ちたくない」
シュアは上目遣いで腕を胸に挟み、付いてくる意思を伝えた。
一回、死んだもんな俺。うん、それは離したくなくなる。
「ありがとう。じゃあ、しっかり掴まっててね」
「また、これぇ…………好き」
ドリルによる直下掘りで進む。推進優先の為に、二人がギリギリ入る大きさしかない。
シュアが蕩けた声を出すのでセーフだ。
「ゼル……これ何?」
俺を擦りながらシュアが耳元で、艶やかに問う。冷静になれないが。
「生理現象」
単語だけは冷静だ。《内対》よ、掘り進める音が聞こえないぞ。星の中心へ向かう以上、外と内の遮断は強固にする必要があるだろうが、こんな時にまで別途体力を使いたくはないぞ。
「じゃあ、シュアがギュってしてあげる」
種族の変更、何時やったんだっけなぁ。
掘り進めて一時間は経過した頃。
[抜ける]
星の中心に最も近い地下帯を抜け出した。引力が逆転したのか、真の中心の大地を上に、着地。
そこは何とも紅い世界だった。全てが熱され伝わり、爆発は鼓動と紛う調を刻む。そして玉座のように創られた大地に座るは。
「〈巨人〉……それも火による……なるほど」
『我は「スルト」』
火の〈巨人〉が目覚めたのか俺と声が被る。
どうなってんだ。ルシュフェルに引き続き、こいつも前世界と同一名だ。何かが起きてないと、ここまで被る訳がないぞ。
『〈魔王〉よ。我との戦いは早すぎるのだ』
何だ? 大きいからって優しいんか?
『そして遅い……逃れる事は出来ん』
「そいつはどうも」
優しくはなかった。いや俺と同じく、苦痛少なく殺すタイプだったか。ならば仕方あるまい、星の守人の強さを土産にするしかないか。サイフィ達、楽しみだろうなぁ。
[それはない]
『ふ、特殊な魂体よ。そして……』
スルトの目が一点に集中している。俺ではないなら。
『何故〈魔王〉に与するのだ』
シュアしかないだろう。シュアは質問の意図が分からないのか、かなり悩んでいる。助け船として会話をしよう。
「お堅いなぁ〈魔王〉でも俺単騎だと、人畜無害。相乗の魔物だって狩ったり」
『黙れ。闇の言葉なぞ、全て戯れ言なのだ』
「あっはぁ。お前も思春期か」
自分の宣言すら戯れ言に聞こえ、戯れ言になるように動いていた事がある俺に、そんなものはダメージにならない。
「無駄に考え、頭までファイアーに教えてやれ」
[過去へのブーメラン]
シュアに率直さを求めた。考えるだけ深みに嵌まり、不正や不誠実に行着くのはよくある。だから率直に、素直に思っている事を。
「愛してるから」
『……そうか』
言えば黙らせる。最早、前置きは不要。
『ならばその愛、消燼してくれよう!!』
「シュア、攻撃や妨害には回るな。自身の防御と俺への回復だけでいい」
スルトが火の大剣を取り出し、降りてくる。奴の属性は火と地。硬い、でかい、重いの三拍子で負けイベントな気になる相手。だからこそ、ぶち壊すに限る。
『ぬぅ!』
シュアを中心大地へ投げた直後、大剣が3m先を叩く。風圧と熱量により、俺は2km飛び低く。
着地までには1秒もかかっていない、にも関わらず刃は既に目の前。
「ぐっん!」
剣の横腹を拳で打ち、反動で体を飛ばし直撃は避けた。が〈痛覚遮断〉を抜けてのダメージが来る。拳も一瞬の接触のはずなのに、ズグズグになっていた。
『ヴェラド神に下賜されし剣。〈魔王〉程度でどうにも出来まい』
「〈魔王〉じゃ無理? なら〈魔神〉になるまでよ」
減らず口を叩く。言わないと逃走本能がバリバリの精神を、抑えられない。




