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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
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真の場

Q 「日にち」忘れ


A いや、ダンジョン内の感覚の乗りの保護のために《内対(ククラ)》があえて告げなかったんだ。タイマーはやるけど。

 天の水門が開かれ、地は海と化す……そんな表現が合うような滝が生成された。ここは海へと沈むであろう。


「あれに乗れば、地上に出れそうだな」


 サイフィが冷静に、中央に出現した魔法陣を指す。そういうものだと信用するのも、いいがそれよりも気になる事がある。


「そうだな。先に行ってていいぞ」

「何を考えている」


 帰還の自由を伝えたら、勘が働いたようだ。同類への推察か?


「床や天井が壊れた覚えは?」

「……少なくとも、ここではここだけだな…まさか」

「そうだ。どうする? 別にないかもしれないが」


 ダンジョン内でサイフィと戦った時でさえ、上の階にいたシュア達に、流れ弾が行ったという事がない。なのにこの階は床にヒビがはいり、天井にいたっては、大穴が穿たれた。


「この階までで6,200km」

「…………途中で疲れたから、乗せて貰っていたりしたが」


 サイフィ達の体力は人外領域であるが、そこまで長続きな訳ではない。また魔力や精神回復のために、睡眠を挟んでいたりした。三時間程度の連続で、その間も俺にくるまれ、階を進んでいたのだ。


「そしてこの階は101km」

「あと70kmか」


 合計6.301km。地球と同じになるまで、あと70km。そしてこの階が壊せるとくれば。


「ダンジョン裏か、星の核に到達する。どうだ?」

「……パスだ、危険にも程がある。星の守人(もりと)が確実に居るからな。俺はお前より、困る人数が多いんだ」


 サイフィは断りを入れ、光の中に消えた。忍者も追い、数日ぶりの二人きりとなる。


「シュアはどうする?」

「もう、帰りを待ちたくない」


 シュアは上目遣いで腕を胸に挟み、付いてくる意思を伝えた。

 一回、死んだもんな俺。うん、それは離したくなくなる。


「ありがとう。じゃあ、しっかり掴まっててね」

「また、これぇ…………好き」


 ドリルによる直下掘りで進む。推進優先の為に、二人がギリギリ入る大きさしかない。

 シュアが蕩けた声を出すのでセーフだ。


「ゼル……これ何?」


 俺を擦りながらシュアが耳元で、艶やかに問う。冷静になれないが。


「生理現象」


 単語だけは冷静だ。《内対》よ、掘り進める音が聞こえないぞ。星の中心へ向かう以上、外と内の遮断は強固にする必要があるだろうが、こんな時にまで別途体力を使いたくはないぞ。


「じゃあ、シュアがギュってしてあげる」


 種族の変更、何時やったんだっけなぁ。




 掘り進めて一時間は経過した頃。


[抜ける]


 星の中心に最も近い地下帯を抜け出した。引力が逆転したのか、真の中心の大地を上に、着地。

 そこは何とも紅い世界だった。全てが熱され伝わり、爆発は鼓動と紛う調を刻む。そして玉座のように創られた大地に座るは。


「〈巨人(ティタン)〉……それも火による……なるほど」

『我は「スルト」』


 火の〈巨人〉が目覚めたのか俺と声が被る。

 どうなってんだ。ルシュフェルに引き続き、こいつも前世界と同一名だ。何かが起きてないと、ここまで被る訳がないぞ。


『〈魔王(ゼノ)〉よ。我との戦いは早すぎるのだ』


 何だ? 大きいからって優しいんか?


『そして遅い……逃れる事は出来ん』

「そいつはどうも」


 優しくはなかった。いや俺と同じく、苦痛少なく殺すタイプだったか。ならば仕方あるまい、星の守人の強さを土産にするしかないか。サイフィ達、楽しみだろうなぁ。


[それはない]

『ふ、特殊な魂体よ。そして……』


 スルトの目が一点に集中している。俺ではないなら。


『何故〈魔王〉に与するのだ』


 シュアしかないだろう。シュアは質問の意図が分からないのか、かなり悩んでいる。助け船として会話をしよう。


「お堅いなぁ〈魔王〉でも俺単騎だと、人畜無害。相乗の魔物だって狩ったり」

『黙れ。闇の言葉なぞ、全て戯れ言なのだ』

「あっはぁ。お前も思春期か」


 自分の宣言すら戯れ言に聞こえ、戯れ言になるように動いていた事がある俺に、そんなものはダメージにならない。


「無駄に考え、頭までファイアーに教えてやれ」

[過去へのブーメラン]


 シュアに率直さを求めた。考えるだけ深みに嵌まり、不正や不誠実に行着くのはよくある。だから率直に、素直に思っている事を。


「愛してるから」

『……そうか』


 言えば黙らせる。最早、前置きは不要。


『ならばその愛、消燼してくれよう!!』

「シュア、攻撃や妨害には回るな。自身の防御と俺への回復だけでいい」


 スルトが火の大剣を取り出し、降りてくる。奴の属性は火と地。硬い、でかい、重いの三拍子で負けイベントな気になる相手。だからこそ、ぶち壊すに限る。


『ぬぅ!』


 シュアを中心大地へ投げた直後、大剣が3m先を叩く。風圧と熱量により、俺は2km飛び低く。

 着地までには1秒もかかっていない、にも関わらず刃は既に目の前。


「ぐっん!」


 剣の横腹を拳で打ち、反動で体を飛ばし直撃は避けた。が〈痛覚遮断(ペインキラー)〉を抜けてのダメージが来る。拳も一瞬の接触のはずなのに、ズグズグになっていた。


『ヴェラド神に下賜されし剣。〈魔王〉程度でどうにも出来まい』

「〈魔王〉じゃ無理? なら〈魔神(ディーペスト)〉になるまでよ」


 減らず口を叩く。言わないと逃走本能がバリバリの精神を、抑えられない。

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