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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
88/261

突入1

短編集ならぬ断片集

「さて、突入するぞゼノム」

「あひゃ……」


 ゼノムの返事は生気がない。夜通しの海の家が一体、彼の何を削りきったのか……。


「キューン」


 彼の嫁であるシュアも、心配な鳴き声を上げている。見た目が萌えの塊に、頭を撫でられても虚ろな目が変わらない。


「換金しまくって……全部、他人の胃に……俺ら…」


 一応の社会人のはずだが、無慈悲な大量消費を目の当たりにした結果、燃え尽きているようだ。


「じゃあ、お前はまた今度な」

「…それは行く…」


 駄々っ子のようになっており、連れていっても精神面で邪魔にしかなりそうにない。こういうタイプの人間は、ハイかローでニュートラルが存在していない。ダウナーかと思いきや、ふとした瞬間から誰もついて行けないハイヤーへと変貌するからだ。


「安定させてから来い」


 と自分で言っていて無理だとは思っている。安定したと思い込む事や、ほんの少しでぶれまくるのが見えているからだ。


カサカサカサカサカサカサ

「……」


 ゼノムはシュアを乗せ、ゴキ型の外套形態の中で寝始めた。


「ごめんね?」

「いや、良いんだけどさ」


 何故、奴の意識が薄まっても動いているのだろうか。それを問う。


「旦那さん寝たけど、何で動くの?」

「え~と、中にククラって人が居て、その人が動かしてて」


 ゼノムの魂の形態は特殊過ぎるようだ。

_______________________________________


 全くもって呼ばれていない。原因は明確だが、不服ではある。


 『まだルシ姉を喚ぶ必要はない』と思われている。堕天使の実力を信用しているが故にだ。

 つまらないものだ、会う事がなく騙す機会がないのは。


 暇潰しに〈破魂(ソウルバースト)〉を狙うにも、不能だった。召喚主の魂の構図が、当人の中に他人があり、他人の最深。

 当人第一層は素通り、第二層である他人の最深を狙うと必ず妨害が入る。

 他人の最深を無視して、当人を探すも見当たらない。他人を脅そうと。


『私ですら見えた試しがないのだ。諦めよ〈堕ちて輝く星〉』


 としか返って来ない。

 この力を持ってしても、見える事がない魂の最深。興味深く、探し回るが。


「タイムアップ。彼が目覚めるぞ」


 ゼノムが目覚める時に中に居れば、かなりの衝撃をくらいつつ弾き出される。しばらく身動きが出来なくなるのは回避だ。


 神性の欠片も無しに、どうやって、ここまで引き上げたのか。未だ答えは見えない。

____________________________________


「もう一撃deth!」


 目覚めた瞬間に拳が飛来。勿論、避けられる事はなく顔を軸に吹き飛ぶ。


「……おはようダメージ」

「流石にやり過ぎたからな。殴らせてもらった」


 一体、擬似睡眠の間に何があったのだろうか。話しを始めてもらいたい。


「闇属性ガン盛りやめろ」


 話はそれだけで終わり、次の25階層へ全員向かおうとする。冷静に見つめ直せ、と暗に言ってるのだろうが……冷静になるために寝たはずなのに、その間こそ暴走するという矛盾をどう解決しろと。


(え? 何かあった?)

[怖い……]


 《内対(ククラ)》が本気で引いている。本当に無自覚、無意識の闇属性ガン盛りとなったからだろう。


[《闇威者(ダークネス)》のOFFが不可能になっていた。出す全てに負なものが、与されていて、もう色々と真っ黒だったわ]


 そしてサイフィが止める為に俺へ攻撃を仕掛け続けて、さっきのダイナミック目覚ましへとなった。

 そりゃ引きますわ、迷惑にも程がある。解決策を考えるのと実験をサブに、ダンジョン攻略をしますか。


 現在は24階層。1~10は鳥系、11~20は植物系、そして21~は人……怪人系らしい。生殖狙いがいないのが大きいのかな?録画された脳内映像を見ながら、階段を降りる。


 シュアが前を歩いてしまっている。胸辺りが冷たく寂しい。これまでがくっつき過ぎたのだろうが、それでも嫌なものだ。


 階段はいたってシンプルな石造り。壁はまんま岩や土で、松明はなくサイフィの〈(トーチ)〉だけが視覚的な明かりだ。


「ゼノム。先頭に交代だ」


 階段を降りきり、少し赤みを帯びた色の洞窟で先頭を任された。初っぱなから先頭にするとか、何考えてるのかさっぱりなのだ。


 同じように〈灯〉を出してみるが黒いし、範囲が狭い。


「脱色する」


 4.5秒かけて普通の炬のような〈灯〉に戻す。気を抜くと黒に戻ると思うので、意識の分配が難しい。


「あっ〈ホブゴブリン〉」

「ギュギーー! ギュイーーーーー!!!」


 身長が高めになっているゴブリンを見つけ、仲間を呼ぶ叫びを許してしまう。仲間なら本当に問題ないのだが、場合によっては恐怖存在(イビル)を呼ぶ事もあるのだ。


 幸い、恐怖存在は現れなかったが。


 「重い……」

 「魔王……」

 「止めて……お願い……」


 〈灯〉の制御か《天地一体(オールフュージョナー)》の制御。一つの《闇威者》OFFしか出来ないようで、近くを通るだけで負荷になっているようだ。


 「済まない………かなりの漏れが発生するくらいの量か……」


 このままでは俺原因の撤退をする事となる。授業のバレーボールの失点でさえ、重く感じてしまう俺には耐えられないだろう。

 攻略を置いて《闇威者》の解決に頭を回す。ルシュフェルに投げるのは、止めておくべき。サイフィとの激闘も駄目。シュアの浄化も負担が大きい。となれば。


 下への階段に。


 「沈み落ちよ漆黒。死を積み上げ我が道を作れ〈蝕煙(ヘヴィスモーク)〉」


 手を付きだし思い切り闇を込めた空気を送る。これで俺の中からは闇が消えるはずだ。

 試しに〈灯〉を使い黒くならない事を確認する。


「何を流し入れてくれてんの?殺す気?」

「大丈夫だ。しばらくすれば問題なくなる」

「いやいや、下に貯まるだけだろ?」


 サイフィは普通の洞窟での、気体の扱いと同等に考えているがそれは間違いである。


「心配するな。ここはダンジョン……言わば半生命体、もしくは消化器だ」

「……………地上の方が危険じゃねぇか! あと逆流も考えてねぇな?!」


 体内に酷いものが入った時、無理矢理にでも排出しようとするのが普通の反応だ。リバースと腹下しのような違いはあるが。


「黒い空気でダンジョン……40階くらいから〈既死(アンデット)〉だな」

「よし決定した。お前を半殺しにしてから進む事にするわ」


 何を嫌ったのか、サイフィが俺に向かって剣を向ける。そういえば戦った覚えがないな………渡来者同士でやるのも一興だ。


 戦闘開始前に、シュアと忍者さんを上の階層へ移動させる。


「ちょっとお話ししてくる」

「ばかぁ…………でも…愛してる……」

「王ではない、人としてすべきことを為す」

「増長されてますなぁ……」   

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