突入前
眠い
[8:18]大波に乗ってサイフィの元に向かう。意図してではなく、普通に波がたったからだ。
前世界では、色々と気にして出来なかったサーフィンを体験中。
「わふ~~!!」
シュアの状態回復が遅い。わざとかと思うくらいに遅いのだ。小さい方が消費少ない理論が通じてしまっているのか、それとも単にこの姿のままでいたいのか。
いずれにせよ彼女を考えながら、ダンジョンへ挑む事になるだろう。
波が消えても流れは変わらず強い。
そして俺から放つ圧で、肉食な存在が寄り付かない。感情呼応物質があるので、殺気だとかが本当に伝わる世界。前世界の実力の通り魔なら、余裕で遭わないように出来るだろう。
流れが止まった。シュアとの旅を優先なので、スクリュー船で行く。比較的ゆったりとした速さになる。
電磁波で本体を浮かせる事により、船の揺れは最小限に抑えられている。平衡感覚が抜群なはずのシュアを考えてだ。耐性をつけさせた方がいいだろうが……常に他人にも求めるのはどうかと。
それでも速いものは速いので、無人島近くに数時間で移動出来た。
向こうが肉眼で確認したのだろうか。
「そうだよな……〈魔王〉を歓迎するのだから!」
矢、投げ槍、投げ斧が矢継ぎ早に飛んでくる。勿論、属性は別々。白の強い青は。
[高品質な光属性で]
〈魔王〉に絶対効く属性だった。とりあえず投げてる奴は……全員か。しかしサイフィがいない、何処からか奇襲でも仕掛けて。
ドゴン
明らかな爆発音が森の方から聞こえる。そして飛翔する人影があった。それが海岸の砂に頭から刺さる。完璧だ。
「実戦訓練中止!!!」
「サイフィ!!」
「何でも長!」
部下達は、刺さって動かないサイフィの元へ集まる。
実戦訓練ねぇ……具体的な脅威の想定を、しやすいだろうな……あんだけ街をやったんだし。
引っこ抜かれたサイフィ。
「あと少しだったのに……滑り落ちて行くぅ!!」
第一声がギャルブルで失敗した人になる。叫び、落ち着ききったサイフィがこちらを見る。
「ようこそ牙城へ。そっちの娘は?」
「シュアだ」
「…………奥さん亡くしたからって、愛娘につけ」
検討違い過ぎたので、デコピンをかまそうとしたが。
「ほう……腕を上げたな」
「お戯れを」
忍者な人の短剣に止められる。普通の城壁なら粉砕する威力はあるんだがな…あと数秒の命の短剣と、彼の技量に感動していた。
「シュアはシュアだよ?」
「なんて洗脳教育を」
「馬鹿野郎! ここは魔法世界だぞ?! 幼児化くらいあるわ!!」
サイフィの情報を修正したい。いや、彼として分かっててやっているのだろう。そうしよう。
「でだ、これまでのダンジョンアタックは?」
「まぁ、まだ二回しか行ってないんだが……」
逃亡先として俺が転移させた島。サイフィ達はそこを開拓していたのだが、どうも魔物がわいてくる。学生が半年はいれる場ではないので、原因を調査し、洞窟から〈ファング〉タイプが群れで現れたのを目撃。その後、数名が洞窟探険した結果、ダンジョンであることが判明。判明してもう一度入って。
「で、一回の時に作った地図が役立たず。魔物の出現も、獣系から植物系に変わってたと」
「そういう事だ」
そして再突入をしたいが深くは潜れない。が〈決壊〉の恐れを排除したいので、俺を誘ったらしい。
「逃げ場が無さすぎる」
船にせよ有翼、飛行魔法な奴にはボコられるしな。正しい判断だ。
「お前の方の嫁は?」
「メイドさんとビーチバレー中だ」
姿を見ないので聞いてみたら浜辺の遊びをしていた。それより。
「え? あの中を切り抜けたメイド?」
あの〈大解放〉を回避していないと、この場にはいないのだ。ならばその存在は。
「暗部と兼業なのだよ」
そうきたか。暗殺効率としては、かなり上位に食い込む方法だ。必要とあらば嫁すら殺す気だったか、そうでもしないと王権維持がキツイのか……。
色々あるんだろう。俺は要職になんてつけないだろうけど。
「さっきの爆発はなんなんだ?」
「あはー………あれはな」
サイフィは俺が見せた〈対巨人用戦機〉の再現をしようと、魔導エンジンを作ってた。そして試作のうち一つが、先程の爆発を引き起こしたそうだ。
「やっぱ、俺が機体に合体しなきゃならんのか……」
自分も一つのパーツとしてなら、既にBランクの戦闘であれば可能な機体はあるそうだ。しかしAより先となれば、耐久出来る素材や効率の良い魔力回路形成、に行き詰まる。
「高品質な素材なら少し出せるが……」
俺のカオス素材を渡す。硬さと弾力を兼ね備えた中級素材だ。
「で、魔力回路は」
「俺だと俺に繋げた方が絶対に良いからな」
「だよなー。どうやってエンジンにするか」
サイフィはブツブツいいながら、森へと消える。主の移動に配下も動き、シュアとまたも二人っきりだ。
「何しようか」
「走ろ?」
シュアと浜辺で鬼ごっこだ。
[事案発生してますわ]
なんて聞こえない。地域住民とのふれあいすら、出来ないじゃないか!
「あぁっ! ゼールー」
シュアが何かを見つけて足を止める。手に持ったのは貝だな。
「食べれる?」
食欲の塊。まぁ、小さい子は何でも口に入れたがるしな。
[はいそこ、閃かない]
(食べ物をやるつもりだぞ?)
[切り取り可能で味付けしてあるくせに…白々しい]
最初はシュアとのごっこ遊びのつもりだったが、匂いに釣られて彼らが舞い戻り。
「ヤキソバ4つ」
「ゼル! またヤキソバの追加だよ!!」
「畜生! 何Lの消費をさせる気だ!! って《内対》さん、寝ないで!」
海の家を始めさせられた。
〈フェリオス王国〉の調味料が恐ろしい勢いでなくなり、何往復したか………突入前でありながら疲れを感じる。
Q やはりシュアのIQが
A ほら、今回はデバフかかってるから………




