問題の進み方
「で、お前どこまで見せた?」
「心配ないさ、中二な時しか見せてないから」
「三番目に駄目やつやん」
「秘蔵フォルダ、リアルでコラは見せてない」
「ならマシか………………」
内側でククラに何を見せたか問う。比較的まともな方で助かった。
あれらは見せてはならない。相手の癖と、自身の画像が既に流出している事を知って、SAN値直葬しない存在と思えない。
「で、これからはどうするよ?」
「総当たり訓練しかなかろう」
「全部、実践か……付き合うぞ。どうせその極みには行くつもりだったし」
ククラさん? あんた、俺が入らなくても害悪認定されそうじゃない? そう思っていると。
トゥルルルルーン
トゥルルルーンーン
トドムーンーンーンルルル
[6:20]謎の変化をする電話音が鳴った。何なのだろうと四回目の『伊じゅ』で何故か配置されている、固定電話を取る。
『もしもし、ボス?』
「ハァイ、ジョージィ」
『乗り悪いな』
「コーヒーの方のドッピオならございますが」
恐らく、可視化された〈念話〉なのだろう。このタイミングで掛けて来るような事の、想像がつかないのだ。
『さて、例のような展開で悪いが』
「おぅ」
『お前に案内された開拓地。入る度に色々変わる、ダンジョンだった』
突如の告白。魔法世界の重要資産が、呪われてそうと思っていた無人島にあった。となれば、謎に人が流れるのも頷ける。養分として誘き寄せられたのだと。
「再突入は?」
『洞窟に明後日の朝だ。来れるよな?』
「共同依頼なのだが………仕方ない。『もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな』にしてくる」
『……お仲間ドンマイ。じゃ、明後日の朝に』
「へーい」
〈念話〉が切れる。サイフィの情報により〈天烈〉の予定崩壊が確定した。
「ゼ~ル~たーすけれー」
「どうした?シュア」
シュアから救援を求められる。はて、何の攻撃を受けているのだろうか。見た目では分からないものは怖い。
「足に力が、入らないの」
[元凶特定]
またも俺のせいだな。
「回復……いや無理か」
「魔力切れも~! ゼールー!!!」
……となるとシュアは現在、全方面に自衛が不可能と言っていい状況にある。あんな吐露をして、颯爽と窮地に落とす。まさに鬼畜に相応しい〈魔王〉である。
とりあえず、シュアを車椅子に乗せて外へ出る。目覚めは三番目と言える。
「おはよう」
爽やかにケイが声をかけてくる。朝の気持ち良さの、破壊が躊躇われるくらいの爽やかさ。が、言わなければならないだろう。もう少し起きてから言おう。
後、二人の所で俺は声を大にして伝える。
「えー、明朝に知り合いから〈念話〉が飛んで来ました。その話の事例に間に合わせる為に、予定を完全に前倒しします」
全員、薄ら笑いを上げる。当たって欲しくない予想が、当たったかのようだ。
「で? どうする気だ?」
「まず襲撃予定の何かしらを」
「確定二ヶ所と疑惑が三ヶ所」
「地図」
「そう書いた箱があるはず」
《内対》が雑に取り出す。破れてないからセーフだな。
地図を見る限り、潰れた五角形のような位置関係だ。二つの距離が近いので、片方が聞き付けて戦車、作製者を逃がす可能性が高い。となれば。
「俺が四ヶ所を叩く。〈天烈〉は全力でここだ」
確定の一つを任せる。ここから一番遠い場所のもので。
「どうやって行かせるつもりだ? あ?」
ライから当然のように、切れぎみに急かされる。最早、禁忌であるがやるしかない。
「大地系の転移魔法を使う」
「「「「…おっ…おぅ……」」」」
大地系転移魔法:地属性や龍脈を伝う必要性のある転移魔法で、空中と水中には使えない。必ず地面、床、天井、岩等の置物から生える。生命力が不思議であるが『石のなかにいる』からと攻撃されると、先制攻撃を受ける事になる。
《天地一体》があるから出来ることだ。なお風…空気を駆ける系は、魔力消費が半端ではないので不使用だ。
「安心しろ。館近くに冒険者が生える構図なだけだ」
「……凄く奇妙……」
奇妙で、普通の移動の意味を考え始めそうだが、Aランクの受け入れは早い。いや、俺がどうしようもないと思われてるだけか。
「前準備が『まだ』要るし、無制限じゃないもんな」
「まだ?」
「遍在……自分が立っている可能性の操作による転移とかが出来ないからな………」
自分がいっぱいを否定したが、患者だらけの世界では『最強』を名乗るのに必要と知ってから、真逆になったんだったか。
ケイが理解に苦しんでいるが無視して、魔力を練る。
大地が震える事はない。精密操作しているものが、無駄な振動を起こす訳がないだろう。それでも濃密な気配を感じて、近くに俺ら以外の動物反応はない。
「我ら地を伝うもの。母なる大地の脈の、原初に含まれていた存在。一時は回帰し、我が望みの地へ。我らの身、心、魂を導き、送り給え〈地伝転移〉」
土に高速で埋まる。ポリゴンの隙間に落ちたのか、とサイフィが見ていたら言うだろう。そんな風に埋まると今度は、大きな力を感じる事となる。地属性だけではなく、様々な属性の混じった…若しくは無属性である、星の血にあたる龍脈の力を。そしてその後は上がるだけだ。
「本当に着いたね」
「依存しそう………」
「無駄な時間を飛ばせるぜ! ケイ! 開発しろ!!」
無茶な事を吹っ掛けられて、始まった口喧嘩を横目に、外套が大型二輪車を作る。
「なんだぁ、そらぁ?」
「戦車と同じく、有ってはならない物さ」
「見た目まで変えてるし」
銀髪で上裸に剣を担ぎ、腰に二丁拳銃。本来なら前開き赤服だが止めておく。目立ってしょうがないからな。
「お揃い」
膝上に座るシュアが髪の毛を絡めてくるのに、理性を保ちながらエンジンを吹かす。
[きっちり300万まで回せ回せ回せ回って回って…]
走らせたくてウズウズしてる《内対》が非常にうるさい。バイクのエンジン音が完全にないので、余計に声が大きく聞こえる。
「じゃあ、ここ任せたぜ」
「あぁ」
ライと腕を打ち合わせた直後に。
[ヒャッハ-待てねぇ!!]
急発進する暴走車両。風を切る音しか耳には届かない。




