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全天録  作者: AX-02
第二章 昼
84/261

発展途上

最近は戦闘しない回の割合が多い希ガス

チートの負うリスクか

「ねぇ……ゼノムってどんな人?」


 馬車のくじ引きにより、ゼノムと分かれたシュアは、ゼノムの態度について聞かれている。


「良い人だよ。毎日、キスしてるし」

「ひゃー熱い」

「いいな………」


 〈天烈〉に入り強者になった天命か。そう言った話が、彼女らには来ないのだ。この前はDランクの……その前はBランクの……と焦り始めては、仕事の為に圧し殺す。を繰り返している。


 恋に飢えた者の前に、恋を越し愛を万年受容しているような者が現れた。感情が入り雑じる。


「どこで、どんな風にあった?」

「雪山の夜に、洞窟の中のゼルが作った部屋でー」

「……なに作ってんの……」

「部屋の中も凄いよ!例えば」


 恋バナに派生するより早く、ゼノムの異常性…明らかに進歩している技術が、ふんだんに使われたゼノムの部屋にシフト。

 魔法でやる部分を、魔法でしていないので理解に時間がかかる。


「でも、当時でそれってことは」

「お家が一瞬だったかなー、あっご飯もおいしいよ!」

「…………一人で生きて行けそう…」

「んーー、ゼルが言うには『癒しが消えたら絶対、荒むから……消えないでくれ』だって」


 荒ぶるの方が合っているのでは?と聞きたくても聞けなかった。話の続きへ戻そうとしたところ。


「あっ、ゼル!今お喋りしてたの」

「「…〈念話〉…」」


 再度の異常性、しかも生。驚き疲れて、発展することはなかった。

_______________________________________



 山の麓で〈天烈〉とキャンプだ。場所が決まった瞬間に精霊等のない木を切り倒し、燃料へ。《天地一体(オールフュージョナー)》で無理矢理、調味料を増量、BBQスタイルでの夕食となる。


「うぉぉぉ!足りねぇぇ!」

「予想、通り、だ、ね」


 ライの胃に吸われる状況を、ケイが噛みながら予想していた事を言う。

 出した箱から推測するに、今回の荷の3割は飯だ。一般論からすれば、食べ放題で食いまくった翌日に、命を懸けた行動なんて取れるのだろうか。


「ゼノム!元からあった分を出せ!!」


 ライさん?先輩にあたるとはいえ横暴では?そうは思いつつ、魚を出す。


(食うかは知らんが…《内対(ククラ)》)

[これからは、板前と呼んで貰おうか]


 出した魚を、硬化外套が刺身にして盛る。〈天烈〉は全員、嘘だろ……という表情だ。


「ゼノム…?一体、君はなにを…?」


 ケイからの質問が飛ぶ。さも当たり前のように答えよう。


「え?調理ですけど?」

「生だよ?」

「生なものです」

「わさび無し!ちゃんと抜いてよ、ゼル!!」


 シュアからの指令が飛ぶ。

 やれやれ、お姫様には刺激が強過ぎたんですかねぇ。


[犬な嫁に鼻に抜ける味を渡すという、鬼畜旦那はこいつです……虐待案件で逮捕っすわ]


 味のDV認定を受けた。まぁ、あの時のは魔が差した俺が完全に悪い。飯時に欠伸をしまくるシュアに、悪戯をしたくなり4×4×4mmくらいのわさびを、口へ飛ばした。

 遊ぶ時よりビクッと跳ねて、椅子から落ちそうになった。暫く警戒され、味にうるさくなったのも、この時からだろうと思う。


 匂いに誘われる獣はない。《内対》が気付いては、処理をしているからだ。絶滅しないよな。


「さぁ出来たぞ。食え」


 丁度、見た目が同じものが多かった為『後光射す 特盛ふぐ刺身』をする事にした。中央にある、わさび山で鬼畜感満載……。


「端と醤油にわさび入れてないから、真ん中に手をつけないなら大丈夫」

「本当だよね?」

「心配なら嗅いでくれ」


 シュアが恐る恐る箸を伸ばす。至福の光景を《内対》に激写させる。

 入ってない事を確認したシュアは、大きめの皿に盛る。それを見て〈天烈〉も手をつけ始める。


「うめぇ」

「これは良い」

「ソースが凄い」


 語彙力崩壊の旨さらしい。魚の食感が前世界と同じでなかったら、こうはいかないだろう。神に感謝する部分が増えたな。


「食べ終わったらこちらへどうぞ」


 外套が家の形へと変化する。見た目は小さいが、中は大きい。少なくとも20人は寛げる空間はある。

 〈天烈〉が急に集まり始めた。風の結界張った上にヒソヒソと話している。貫通して聞いた内容は。


『罠か?』

『仕掛ける意味がないよ』

『……夜這い……』

『んー〈魔王(ゼノ)〉だしあり得るが…』


 そんな内容だ。普通に警戒されているだけで安心した。されてなかったら、不穏なフラグにも程がある。結局、彼らは入らない事に決めたようだ。賢明と言えば賢明だ『駄目になる』シリーズが目白押しだからな。


「見張りの交代はどうします?」

「……俺が中で鈴を鳴らす」


 ライが覚悟をして起こしに来る事になった。俺とシュアの番は深夜の為、もう寝る必要がある。


「あーい、よろしくお願いしまーす」

「お休みなさ~い」


 ……二人きりの館。ナニをしない訳がなく……




チリーン チリーン


 鈴の音で、ブロック建築を中断セーブした俺はシュアを起こす。


「シュ~~ア~~」

「もうお腹いっぱい……」


 寝ぼけている。しゃっきりするまで時間がかかると思い、抱き上げて部屋を出る。


「お疲れでした」

「…いつから起きていた?」

「少し前ですよ。私は」


 三大欲求が〈性欲〉〈食欲〉〈癒欲〉となった俺。睡眠不要だが、休憩は必要。しかし意識が失せる事がなくて、問題が出ないのは不思議である。

 《内対》に聞いても、自分もいらないからよく分からない、との返答だ。何かが潜んでいるのだろうか。


 見張りとして一応、外には出たが《内対》による掃除の為、 二人とも暇なのだ。


「ねぇ、ゼル」


 お話になるのは当然な流れ。

 シュアの表情が少し硬い、ルート分岐しそうなイベントが起こりそうである。


「ん、何?」

「……………赤ちゃん……まだ……」


 秘密裏にやっていたが苦しめていたのか。素振りでも分からなかったし、非常に深刻と思っていたのだろう。直ぐに言うべきだな。事後承諾なのは忘れよう。


「まだ不安だから抜いてたんだ。黙っててごめん」

「何が不安なの?…わ………教えて?」


 今のは『私?』と続けそうだった。そうと言えばそうなんだが……。


「不安なんだ………お前や子供を……守れるのかって」


 絶対はないという絶対性のある世界なのは、どこも共通だと思っている。どれだけ強さを完備しようが、どうしようもない時もある。下手に他世界を眺め続けたせいで、上から殴られるという構図が出来上がっている。

 想定しているのは準備品の多い〈天烈〉の比ではないと思ってる。(たて)可能性(よこ)の創造、操作、破壊。時空間圧縮物質。問答無用のHP0固定。ビッグバン、ビッグクランチ。光速戦闘………想定していた相手と渡り合える気がしない。

 

 前世界で『間違いなくアホの部類だな』と思っても止められなかった。『その考え方が出来るなら可能』という希望的でしかない理論を、心の奥底で信じて。前世界のような物理の、魔法や異能がなく『自分の身体』で出来る事が少ない世界にいた時から、それらと戦う事が使命とみなして『現実逃避』を否定していた。


 それが現実となり、限界突破と言えるものを一回した。


「まだだ、まだ俺の強さより上に居るはずだ。俺が想定していない時に、この世界に居るんだ。俺を泣かせる為に、俺を打ち倒す為に、動く事になる存在が」

「その時に、私も?」

「狙われるだろうな……想定がおかしいのは分かってる。けど…お前を一回、手にしたんだ…!どうしようもない〈暗殺者(アサシン)〉が相手だったからなんて、言い訳をしたくない……!!」

「ゼルの為に?」

「………はは…………そうだな……なーんだ……俺の為に…勝手に他人を苦しめてたのか………すまんな、こんな奴を夫にさせて………」

「………」


 シュアは無言で立ち上がり、俺から距離を置く。当然だ。自分だけで解決するべき問題を、俺が抱えてるだけだし。

 工程にしてみてもそうだ。(おれ)が作って出したのを、(シュア)は受け止めた上で、形を変えて出さなければならないのだから。彼女の方が、負担が大きいと決まっている。それを深く考えずにやってしまった………離婚までが加速したな。


 背伸びをしてシュアが戻って来る。なんて言葉が出るのかな。


「乗っていい?」

「うん」


 対面で彼女は俺の太股に乗り、そのまま唇が重なる。唇を離したら俺の頭を撫で始めた。


「なんだよ」

「いい子にはご褒美を上げなくちゃ」

「………は?」

「私の旦那様を守ってて、私と、まだいないけど子供も守ろうとした子。名前は………そう…………上木 悟」

「っ?!」


 驚きの余りシュアを強めに抱き締めてしまう。《内対》が教えたのだろうが、呼ばれるとは思わなかったからだ。


「ちょっと、緩めて欲しいかな?え~っと」

「ゼル」

「………前の名前はいいの?」

「お前を抱いている、目の前の男は一人。ゼノム・ルマ=アウゴ」

「ゼル、緩めて欲しいな」

「やだ」

「男の子じゃん!」


 あぁ、嫁に突っ込まれるって最高だぜ。この夜は永久保存だ。これからやることもな。


「さーて、身長とか縮めて」

「本当に男の子……え?ゼル?何直に触って、んっ……皆、起きちゃ」     

《内対》[とうとうコイツやりやがった]

《天地一体》「あとはこの形態でのルシ×ゼノだな」


勇者「レク×ゼノ」

《内対》[私の模倣形態になるのでNG]

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