発展途上
最近は戦闘しない回の割合が多い希ガス
チートの負うリスクか
「ねぇ……ゼノムってどんな人?」
馬車のくじ引きにより、ゼノムと分かれたシュアは、ゼノムの態度について聞かれている。
「良い人だよ。毎日、キスしてるし」
「ひゃー熱い」
「いいな………」
〈天烈〉に入り強者になった天命か。そう言った話が、彼女らには来ないのだ。この前はDランクの……その前はBランクの……と焦り始めては、仕事の為に圧し殺す。を繰り返している。
恋に飢えた者の前に、恋を越し愛を万年受容しているような者が現れた。感情が入り雑じる。
「どこで、どんな風にあった?」
「雪山の夜に、洞窟の中のゼルが作った部屋でー」
「……なに作ってんの……」
「部屋の中も凄いよ!例えば」
恋バナに派生するより早く、ゼノムの異常性…明らかに進歩している技術が、ふんだんに使われたゼノムの部屋にシフト。
魔法でやる部分を、魔法でしていないので理解に時間がかかる。
「でも、当時でそれってことは」
「お家が一瞬だったかなー、あっご飯もおいしいよ!」
「…………一人で生きて行けそう…」
「んーー、ゼルが言うには『癒しが消えたら絶対、荒むから……消えないでくれ』だって」
荒ぶるの方が合っているのでは?と聞きたくても聞けなかった。話の続きへ戻そうとしたところ。
「あっ、ゼル!今お喋りしてたの」
「「…〈念話〉…」」
再度の異常性、しかも生。驚き疲れて、発展することはなかった。
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山の麓で〈天烈〉とキャンプだ。場所が決まった瞬間に精霊等のない木を切り倒し、燃料へ。《天地一体》で無理矢理、調味料を増量、BBQスタイルでの夕食となる。
「うぉぉぉ!足りねぇぇ!」
「予想、通り、だ、ね」
ライの胃に吸われる状況を、ケイが噛みながら予想していた事を言う。
出した箱から推測するに、今回の荷の3割は飯だ。一般論からすれば、食べ放題で食いまくった翌日に、命を懸けた行動なんて取れるのだろうか。
「ゼノム!元からあった分を出せ!!」
ライさん?先輩にあたるとはいえ横暴では?そうは思いつつ、魚を出す。
(食うかは知らんが…《内対》)
[これからは、板前と呼んで貰おうか]
出した魚を、硬化外套が刺身にして盛る。〈天烈〉は全員、嘘だろ……という表情だ。
「ゼノム…?一体、君はなにを…?」
ケイからの質問が飛ぶ。さも当たり前のように答えよう。
「え?調理ですけど?」
「生だよ?」
「生なものです」
「わさび無し!ちゃんと抜いてよ、ゼル!!」
シュアからの指令が飛ぶ。
やれやれ、お姫様には刺激が強過ぎたんですかねぇ。
[犬な嫁に鼻に抜ける味を渡すという、鬼畜旦那はこいつです……虐待案件で逮捕っすわ]
味のDV認定を受けた。まぁ、あの時のは魔が差した俺が完全に悪い。飯時に欠伸をしまくるシュアに、悪戯をしたくなり4×4×4mmくらいのわさびを、口へ飛ばした。
遊ぶ時よりビクッと跳ねて、椅子から落ちそうになった。暫く警戒され、味にうるさくなったのも、この時からだろうと思う。
匂いに誘われる獣はない。《内対》が気付いては、処理をしているからだ。絶滅しないよな。
「さぁ出来たぞ。食え」
丁度、見た目が同じものが多かった為『後光射す 特盛ふぐ刺身』をする事にした。中央にある、わさび山で鬼畜感満載……。
「端と醤油にわさび入れてないから、真ん中に手をつけないなら大丈夫」
「本当だよね?」
「心配なら嗅いでくれ」
シュアが恐る恐る箸を伸ばす。至福の光景を《内対》に激写させる。
入ってない事を確認したシュアは、大きめの皿に盛る。それを見て〈天烈〉も手をつけ始める。
「うめぇ」
「これは良い」
「ソースが凄い」
語彙力崩壊の旨さらしい。魚の食感が前世界と同じでなかったら、こうはいかないだろう。神に感謝する部分が増えたな。
「食べ終わったらこちらへどうぞ」
外套が家の形へと変化する。見た目は小さいが、中は大きい。少なくとも20人は寛げる空間はある。
〈天烈〉が急に集まり始めた。風の結界張った上にヒソヒソと話している。貫通して聞いた内容は。
『罠か?』
『仕掛ける意味がないよ』
『……夜這い……』
『んー〈魔王〉だしあり得るが…』
そんな内容だ。普通に警戒されているだけで安心した。されてなかったら、不穏なフラグにも程がある。結局、彼らは入らない事に決めたようだ。賢明と言えば賢明だ『駄目になる』シリーズが目白押しだからな。
「見張りの交代はどうします?」
「……俺が中で鈴を鳴らす」
ライが覚悟をして起こしに来る事になった。俺とシュアの番は深夜の為、もう寝る必要がある。
「あーい、よろしくお願いしまーす」
「お休みなさ~い」
……二人きりの館。ナニをしない訳がなく……
チリーン チリーン
鈴の音で、ブロック建築を中断セーブした俺はシュアを起こす。
「シュ~~ア~~」
「もうお腹いっぱい……」
寝ぼけている。しゃっきりするまで時間がかかると思い、抱き上げて部屋を出る。
「お疲れでした」
「…いつから起きていた?」
「少し前ですよ。私は」
三大欲求が〈性欲〉〈食欲〉〈癒欲〉となった俺。睡眠不要だが、休憩は必要。しかし意識が失せる事がなくて、問題が出ないのは不思議である。
《内対》に聞いても、自分もいらないからよく分からない、との返答だ。何かが潜んでいるのだろうか。
見張りとして一応、外には出たが《内対》による掃除の為、 二人とも暇なのだ。
「ねぇ、ゼル」
お話になるのは当然な流れ。
シュアの表情が少し硬い、ルート分岐しそうなイベントが起こりそうである。
「ん、何?」
「……………赤ちゃん……まだ……」
秘密裏にやっていたが苦しめていたのか。素振りでも分からなかったし、非常に深刻と思っていたのだろう。直ぐに言うべきだな。事後承諾なのは忘れよう。
「まだ不安だから抜いてたんだ。黙っててごめん」
「何が不安なの?…わ………教えて?」
今のは『私?』と続けそうだった。そうと言えばそうなんだが……。
「不安なんだ………お前や子供を……守れるのかって」
絶対はないという絶対性のある世界なのは、どこも共通だと思っている。どれだけ強さを完備しようが、どうしようもない時もある。下手に他世界を眺め続けたせいで、上から殴られるという構図が出来上がっている。
想定しているのは準備品の多い〈天烈〉の比ではないと思ってる。時と可能性の創造、操作、破壊。時空間圧縮物質。問答無用のHP0固定。ビッグバン、ビッグクランチ。光速戦闘………想定していた相手と渡り合える気がしない。
前世界で『間違いなくアホの部類だな』と思っても止められなかった。『その考え方が出来るなら可能』という希望的でしかない理論を、心の奥底で信じて。前世界のような物理の、魔法や異能がなく『自分の身体』で出来る事が少ない世界にいた時から、それらと戦う事が使命とみなして『現実逃避』を否定していた。
それが現実となり、限界突破と言えるものを一回した。
「まだだ、まだ俺の強さより上に居るはずだ。俺が想定していない時に、この世界に居るんだ。俺を泣かせる為に、俺を打ち倒す為に、動く事になる存在が」
「その時に、私も?」
「狙われるだろうな……想定がおかしいのは分かってる。けど…お前を一回、手にしたんだ…!どうしようもない〈暗殺者〉が相手だったからなんて、言い訳をしたくない……!!」
「ゼルの為に?」
「………はは…………そうだな……なーんだ……俺の為に…勝手に他人を苦しめてたのか………すまんな、こんな奴を夫にさせて………」
「………」
シュアは無言で立ち上がり、俺から距離を置く。当然だ。自分だけで解決するべき問題を、俺が抱えてるだけだし。
工程にしてみてもそうだ。男が作って出したのを、女は受け止めた上で、形を変えて出さなければならないのだから。彼女の方が、負担が大きいと決まっている。それを深く考えずにやってしまった………離婚までが加速したな。
背伸びをしてシュアが戻って来る。なんて言葉が出るのかな。
「乗っていい?」
「うん」
対面で彼女は俺の太股に乗り、そのまま唇が重なる。唇を離したら俺の頭を撫で始めた。
「なんだよ」
「いい子にはご褒美を上げなくちゃ」
「………は?」
「私の旦那様を守ってて、私と、まだいないけど子供も守ろうとした子。名前は………そう…………上木 悟」
「っ?!」
驚きの余りシュアを強めに抱き締めてしまう。《内対》が教えたのだろうが、呼ばれるとは思わなかったからだ。
「ちょっと、緩めて欲しいかな?え~っと」
「ゼル」
「………前の名前はいいの?」
「お前を抱いている、目の前の男は一人。ゼノム・ルマ=アウゴ」
「ゼル、緩めて欲しいな」
「やだ」
「男の子じゃん!」
あぁ、嫁に突っ込まれるって最高だぜ。この夜は永久保存だ。これからやることもな。
「さーて、身長とか縮めて」
「本当に男の子……え?ゼル?何直に触って、んっ……皆、起きちゃ」
《内対》[とうとうコイツやりやがった]
《天地一体》「あとはこの形態でのルシ×ゼノだな」
勇者「レク×ゼノ」
《内対》[私の模倣形態になるのでNG]




