サイクルはお早めに
俺「ルシ姉をもて余してると思ったやつ、正直に手を挙げなさい。先生怒らないから」
一同 (スッ)
俺「あ"ぁぁあぁ"ぁ"ぁぁ"ぁぁぁぁ"あ"!!!」
《内対》[発狂しないとは言ってないもんなぁ]
細切れから更に骨粉となったものを瓶に詰めて、中央ギルドへ入る。
「〈魔王〉にはあんな可愛い娘がつくの? なら俺もなる」
「活動開始から一年も経ってないって可笑しい…」
「神の試練にしても酷だな」
「でも幸せなら良しなんだ。呑まれようぜ」
獣人なシュアは、受け入れられている。伝説存在が現実化している今だからこその受け入れだ。シラフなら排斥が9割だろう。
貝手繋ぎで窓口へと進む。歯ぎしりが聞こえたが無視だ。
「依頼達成報告で~す」
「はい、ただいまぁ…………ゼノムサマデスネ」
「…ゼル、〈保養〉した方がいい?」
「俺の相手を終えてからな」
最初は正妻として、壊れてからは恐怖で俺に胸を預けたシュア。精神が危険と判断したのか、俺に回復許可を要請する。
俺の相手が嫌で壊れたのに、相手をしながら修復は鍛練じゃないか。いや苦行とも言える。なので俺の相手を終えてからにした。
「〈パイ草〉の採取っす」
「デワ コチラニオイテクダサイ」
受け取りまでする激務感。これは壊れますわ。
〈パイ草〉を篭に入れたまま渡す。が、取り出して。
「オカエシシマス」
篭にも規定があるのだろうか?まぁ後でケイに聞くか。
「それと、なんか強そうなスケルトンの討伐したんですが」
「ショウメイヒンワ ゴザイマス?」
「骨を粉にしたものと、変色した草ですかね」
取り出して机に置く、受付は鑑識の方へと持って行き。
「シバラクオマチクダサィイ!」
そう言って倒れてしまう。シュアが急いで〈保養〉をかける。
満足するかけ具合なのを見て、シュアの手を引き、椅子へと座る。
席は空いているのに、シュアは俺の上に乗る。仕方なしに撫でる、心臓の辺りをトントントン……。
「スピー…………」
騒がしいはずのギルド内で眠ってしまう。愛おしく見ていると。
「ゼノム、呼ばれてるぜ」
何ともチャラい、情報屋してそうな兄ちゃんに声をかけられる。見れば先程、受付した所に別の人が立って、ひきつった笑顔で待機していた。
が、動けばシュアを起こしてしまうので、電話機能という最上級のテクノロジーを使う事にした。
《天地一体》で外套が俺の席から真上に伸び、天井、壁を伝い受付へ。そして受話器の形となる。あとは俺の使い方を見せて。
『はい、何でしょうか』
音が向こうに行ったのは、リアクションで分かる。片方を耳に、もう一方を口へ持っていくんだ、と動かす。
焦って逆である事を伝えやっと。
『そるが……その……先程の〈既死〉討伐の証拠品。買い取りはしますが、ランクアップ等には何ら影響はございません』
噛んだが重大ではないので無視、ランク上げは軽微な事だ。ん? ランク?
『分かりました、上がる訳ではないのですね。ランクと言えば、私に討伐難度があった気がします。どうなってます?』
『ぁあ~………無くした方がよろしいでしょうか?』
あるんだな。どうにも出来ないだろうけど、討伐目的で来る可能性大なんだな。
『いえ一応の確認です。ありがとうございました』
そう言って俺は、受話器から手を離すよう伝え、机に置かれてから回収した。
「はー、すっげえ物だな。離れてても話があんな風に出来るって」
兄ちゃんは目を輝かせている。拡声器は魔法で出来るから、人工物内での通話は直ぐだろう。
一回見せただけで、技術革命の可能性が50%は上がるのが魔法世界だ。前世界の試行錯誤を、いくらか飛ばせるのも大きいだろう。
次の依頼を悩む。薬草採取や低級魔物の討伐、後は護衛か? う~む悩ましい。どうでもいいから。
[お前にとっての最高難度の結婚は済んだしな]
(誰から出された依頼なんですかねぇ)
[親しかないだろ]
(達成報酬、貰えないZE!)
[異世界なんて来るから、そうなるんやで]
悩んでいたら《内対》が茶々を入れてくる。前世界か……どうなってんだろうな………。しみじみ浸っていると。
「あっ居ました!」
誰かに発見されたようだ。声の方を見れば。
「暇だろ、手伝いな」
「来てくれないかな? 報酬は弾むよ」
〈天烈〉からの仕事の誘いだ。何故ついて行けるのかが気になる。
「いいけど、なにやるの?」
「僕らの荷物運びだよ。いつもなら護衛する羽目になるからって、荷物を減らしたり、手前の拠点までだったりだけど」
〈運び屋〉か。普段なら物品サポートでしかない者が、切り札に変わる。典型的な沼であることを承知で、頼んでいると思いたい。
「次に行くのは北の激戦、紛争区域。鎮圧対象は分かるよね?」
前世界の馬鹿と、馬鹿なウチがやらかした案件である。〈魔王〉起因の事件より、俺の責任だ。受けるしかない。
「了解した。ギルドでやる事、済まして早めの行動をするか」
「受付したら、出て左の方にある広場に来てね」
そう言って〈天烈〉は先にギルドを出る。流石はAランク、一々の同席が不要になっている。
言われた通りに受付に話をつける。勿論、シュアは寝ているので又も通信でだ。
なるべく、振動を起こさないようにギルドを出るが。日射しの変化を感じたのか、シュアの目が覚める。
「おわった?」
「次の仕事が入った。多少の因縁があるから絶対に行く」
「がんば…ふぁ~~………がんばってね!」
愛妻の欠伸を見てホクホクし、左を見てドン引く。
「何を……いや、何もかも想定した結果か……」
積まれた荷物が山を形成していた。実力者は準備から徹底しているとはいえ、量が多すぎる。効率から言えば低能並みだ。
「「「よろしくお願いしまーす」」」
笑顔で揃った礼を見せる。ライとケイ以外は、いつもの準備に不満しかないのかよ!




