初見攻略
ゼノムが現れてから、我々は忙しいものだった。知恵がありすぎる魔物な彼は、地中深くを移動し、そうでなくとも姿を変え〈ボア・ソニック〉並みの移動をする。予測不能そのものだ。
軍勢は蹴散らされ、精鋭は失敗続きで一時解散。しばらく動かず、処刑されたと思いきや〈帝都の死〉からの冒険者登録……。
「してキース、現在の奴は?」
「はっ! 薬草採取の依頼の遂行中です」
「事故が起きるような存在ではない。単純に討伐も不可能に近い………」
そして私の王への説明責任だ。毎度、失敗や捕捉不能の報告をするので、体に不調を来す。王は王で頭痛でしかないだろう。余りに異質で、対処のしようがないのだから。
今回の冒険者登録を、国の手柄にするのは賭博的過ぎる。例えば、彼を違反者として剥奪しようものなら、枷からの解放でしかない。彼はそういう存在だ。本当に一人で生きて行ける存在……不老不死であれば永久に生きる存在なのだ。
「………家でも買わせるか……」
精一杯の手である。自分の国に、こじんまりと〈魔王〉の家を置かせるという。
「であればどのような家でしょうか」
「幽霊屋敷が丁度、良かろうて」
王はそう笑っているが、私には幽霊を従える彼しか見えなかった。
ゼノム対策に、幽霊屋敷を渡す。というほんの少しの抵抗の決定で終了した。
「もうダメだ……おしまいだ……」
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グームにシュアを乗せて南へ向かう。
確かにこれは濃密な邪気だな。俺やルシュフェルが吸うか、シュアが浄化し切るかを迷う程度に濃い。
南に何かあっただろうか? 疑問に思い《内対》に話かける。
(昔に何かあった? 南は?)
[……記憶にない]
マニアであるはずの《内対》ですら記憶にない位の何もなさ……俺が原因の突然変異しかないな。
[22:22]流石にこれ以上の進行が辛いのか、グームが睡眠を要求する。
『落としたら鍋……落としたら鍋……』
どうやら脅しが強すぎたみたいだ。明日は全毛刈りに罰則を軽減しよう。
グームの為に、落ち葉をかき集め木材を組み合わせ、祠のようなものを作る。
『あぁやっと眠れる……』
「ありがとう、グームさん」
シュアはグームへ感謝を伝え、速攻で俺に飛びつく。切り替えは迅速そのものだ。
「今日は何する?」
「食べ物」
飯を忘れていた。移動に集中し過ぎだな。
「おにく~~」
不意に過った言葉の確認の為、シュアのお腹を摘まむ。
「ゼル?」
首を傾げながら目が泳いでいる。決定的にするために抱き上げて。
「《内対》差はどうだ?」
[7kg………]
食べる顔を眺めたくて作っていたが、これは脂肪と糖の制限をせねばなるまい。
「さーて、豆でいくか」
「え? 嘘だよね? ね?」
真実のまま進行。畑の肉とサラダで食卓を埋める。冷蔵庫代わりの空間収納は、シュアは発現していないので、これを食べるしかないのだ。
完食しておきながら、同じベッドで怒り気味のシュアを見るのは凄く良かった。
[8:12]朝食と朝の訓練を終え、グームに落熊時の毛刈り宣告をして出発。
道中、勝手に《天地一体》が起動して、木の中に入れられた。シュアとのコミュニケーションが《内対》的に駄目だったのだろう。
しかし、彼女の為には……食事にも無理のないダイエット……そうだ…あれがあるではないか。
シュアの腹部に外套を巻き付け、振動させる。食べてから時間は空いているし、問題はなかった。
「お腹があ"あ"あ"」
グームからの『振動が辛いので、降ろして欲しいのですが』な視線を無視して、進んでいると。
『ぬう……来るぞ』
グームの声と共に、魔力を感じる。かなりの大きさだ。保有量は70m級の〈エルダルマテリ〉と同程度。
そしてその見た目は。
「新たなる〈魔王〉よ。何をしに来た」
骨だ。生前はさぞ健康的だったのだろう骨が、会話を求めている。何故〈魔王〉と分かったのか、方法を知りたくはなるが。
「いや? 大した事じゃないさ。討伐だから」
と、ヌケヌケとした発言をする。これで怒気を放てば、生前からそんな奴と見れる。
「異質なる者……これ以上は不要」
はい、戦前会話終了。
地面から武装した骸骨達が現れる。配下持ちだから、エルダーかロードかキングは付くかな。
グームが粉砕してゆく。数が多いのと、彼にとっては本調子でなさそうなのが見える。
「〈消傷〉、〈破障〉だよ!」
これだけ生命でない存在が集まったのだ、死の穢れが発生しやすいのは目に見える。グームは、魂だとかは理論的に分かっていないだろうから、入ってしまう。
シュアが一応の回復をしている。自分達にかける事はない。影響が出ないと分かりきっているから。
「何処を見ている!!」
「冷静に考えたら、朝から居れる強い方なんだなーって」
肉体にとっての死角から黒い靄を、骨が飛ばしてくるが危なげなく避けて、感想を伝える。日が天にある内から、行動出来る黒い属性の魔物なんてかなり上位。
「まぁ、配下には要らんがな」
尖った岩を突きだし、その中から黒いオーラを纏う触手が生えてくる。全て変化外套が切り伏せた。
「もっとだ」
黒い炎も黒い球体も黒い雷も、食いながら接近する。ルシュフェルの闇に比べれば『炭酸抜き炭酸水』のようなものだ。
「これではただの黒塊だ。まだ食える!! 甘いぞ!!」
[甘味を感じる? お前の舌はおかしい]
そういえば料理の製作を忘れていたな。記憶喪失するカツ丼、天国へ到達するメロンパン、触手が這いずるゲソ。そして辛味でなく辛味の混沌鍋。
「……至った深淵を見せてくれ……死の淵に在る王なのだろう?」
「何なのダ貴様っ!!」
怨霊が射出されるのを銃撃で相殺。斬りつけようとしたところ、黒を纏う剣と鍔迫りになる。
近接もいける汎用性はある骨だ。やる気がそんなにない俺と同等なら…多分この大陸じゃ、〈天烈〉がボス骨単騎で討伐可能、サイフィが配下含めてソロ討伐。という具合だろう。
「お前も言ったじゃないか、異質なる者って。で結末が」
「ワレガここで終わル?! 馬鹿なバカなバくわナ!!」
俺の後ろから来る触手をグームが踏みつけ、俺の刀が優しい光に包まれる。シュアの〈既死〉への手向けだろう。
骨を細切れにする。外殻が消え失せ、見えた怨念の核を砕く。
「レアドロだったとして多分、要らない……」
[ゲーム脳、深刻アルネ]
そうは言いつつ、変色した草は取ってしまうのが俺だった。




