表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全天録  作者: AX-02
第二章 昼
82/261

初見攻略

 ゼノムが現れてから、我々は忙しいものだった。知恵がありすぎる魔物な彼は、地中深くを移動し、そうでなくとも姿を変え〈ボア・ソニック〉並みの移動をする。予測不能そのものだ。

 軍勢は蹴散らされ、精鋭は失敗続きで一時解散。しばらく動かず、処刑されたと思いきや〈帝都の死〉からの冒険者登録……。


「してキース、現在の奴は?」

「はっ! 薬草採取の依頼の遂行中です」

「事故が起きるような存在ではない。単純に討伐も不可能に近い………」


 そして私の王への説明責任だ。毎度、失敗や捕捉不能の報告をするので、体に不調を来す。王は王で頭痛でしかないだろう。余りに異質で、対処のしようがないのだから。


 今回の冒険者登録を、国の手柄にするのは賭博的過ぎる。例えば、彼を違反者として剥奪しようものなら、枷からの解放でしかない。彼はそういう存在だ。本当に一人で生きて行ける存在……不老不死であれば永久に生きる存在なのだ。


「………家でも買わせるか……」


 精一杯の手である。自分の国に、こじんまりと〈魔王(ゼノ)〉の家を置かせるという。


「であればどのような家でしょうか」

「幽霊屋敷が丁度、良かろうて」


 王はそう笑っているが、私には幽霊を従える彼しか見えなかった。

 

 ゼノム対策に、幽霊屋敷を渡す。というほんの少しの抵抗の決定で終了した。


「もうダメだ……おしまいだ……」

____________________________________



 グームにシュアを乗せて南へ向かう。

 確かにこれは濃密な邪気だな。俺やルシュフェルが吸うか、シュアが浄化し切るかを迷う程度に濃い。


 南に何かあっただろうか? 疑問に思い《内対(ククラ)》に話かける。


(昔に何かあった? 南は?)

[……記憶にない]


 マニアであるはずの《内対》ですら記憶にない位の何もなさ……俺が原因の突然変異しかないな。


 [22:22]流石にこれ以上の進行が辛いのか、グームが睡眠を要求する。


『落としたら鍋……落としたら鍋……』


 どうやら脅しが強すぎたみたいだ。明日は全毛刈りに罰則を軽減しよう。


 グームの為に、落ち葉をかき集め木材を組み合わせ、祠のようなものを作る。


『あぁやっと眠れる……』

「ありがとう、グームさん」


 シュアはグームへ感謝を伝え、速攻で俺に飛びつく。切り替えは迅速そのものだ。


「今日は何する?」

「食べ物」


 飯を忘れていた。移動に集中し過ぎだな。


「おにく~~」


 不意に過った言葉の確認の為、シュアのお腹を摘まむ。


「ゼル?」


 首を傾げながら目が泳いでいる。決定的にするために抱き上げて。


「《内対》差はどうだ?」

[7kg………]


 食べる顔を眺めたくて作っていたが、これは脂肪と糖の制限をせねばなるまい。


「さーて、豆でいくか」

「え? 嘘だよね? ね?」


 真実のまま進行。畑の肉とサラダで食卓を埋める。冷蔵庫代わりの空間収納は、シュアは発現していないので、これを食べるしかないのだ。


 完食しておきながら、同じベッドで怒り気味のシュアを見るのは凄く良かった。


 


 [8:12]朝食と朝の訓練を終え、グームに落熊時の毛刈り宣告をして出発。

 道中、勝手に《天地一体(オールフュージョナー)》が起動して、木の中に入れられた。シュアとのコミュニケーションが《内対》的に駄目だったのだろう。

 しかし、彼女の為には……食事にも無理のないダイエット……そうだ…あれがあるではないか。


 シュアの腹部に外套を巻き付け、振動させる。食べてから時間は空いているし、問題はなかった。


「お腹があ"あ"あ"」


 グームからの『振動が辛いので、降ろして欲しいのですが』な視線を無視して、進んでいると。


『ぬう……来るぞ』


 グームの声と共に、魔力を感じる。かなりの大きさだ。保有量は70m級の〈エルダルマテリ〉と同程度。


 そしてその見た目は。


「新たなる〈魔王〉よ。何をしに来た」


 骨だ。生前はさぞ健康的だったのだろう骨が、会話を求めている。何故〈魔王〉と分かったのか、方法を知りたくはなるが。


「いや? 大した事じゃないさ。討伐だから」


 と、ヌケヌケとした発言をする。これで怒気を放てば、生前からそんな奴と見れる。


「異質なる者……これ以上は不要」


 はい、戦前会話終了。

 地面から武装した骸骨達が現れる。配下持ちだから、エルダーかロードかキングは付くかな。


 グームが粉砕してゆく。数が多いのと、彼にとっては本調子でなさそうなのが見える。


「〈消傷(ヒール)〉、〈破障(キャンセルダウン)〉だよ!」


 これだけ生命でない存在が集まったのだ、死の穢れが発生しやすいのは目に見える。グームは、魂だとかは理論的に分かっていないだろうから、入ってしまう。

 シュアが一応の回復をしている。自分達にかける事はない。影響が出ないと分かりきっているから。


「何処を見ている!!」

「冷静に考えたら、朝から居れる強い方なんだなーって」


 肉体にとっての死角から黒い靄を、骨が飛ばしてくるが危なげなく避けて、感想を伝える。日が天にある内から、行動出来る黒い属性の魔物なんてかなり上位。


「まぁ、配下には要らんがな」


 尖った岩を突きだし、その中から黒いオーラを纏う触手が生えてくる。全て変化外套が切り伏せた。


「もっとだ」


 黒い炎も黒い球体も黒い雷も、食いながら接近する。ルシュフェルの闇に比べれば『炭酸抜き炭酸水』のようなものだ。


「これではただの黒塊だ。まだ食える!! 甘いぞ!!」

[甘味を感じる? お前の舌はおかしい]


 そういえば料理の製作を忘れていたな。記憶喪失するカツ丼、天国へ到達するメロンパン、触手が這いずるゲソ。そして辛味でなく(つら)味の混沌鍋(フードカタストロフィ)


「……至った深淵を見せてくれ……死の淵に在る王なのだろう?」

「何なのダ貴様っ!!」


 怨霊が射出されるのを銃撃で相殺。斬りつけようとしたところ、黒を纏う剣と鍔迫りになる。

 近接もいける汎用性はある骨だ。やる気がそんなにない俺と同等なら…多分この大陸じゃ、〈天烈〉がボス骨単騎で討伐可能、サイフィが配下含めてソロ討伐。という具合だろう。


「お前も言ったじゃないか、異質なる者って。で結末が」

「ワレガここで終わル?! 馬鹿なバカなバくわナ!!」


 俺の後ろから来る触手をグームが踏みつけ、俺の刀が優しい光に包まれる。シュアの〈既死(アンデット)〉への手向けだろう。

 

 骨を細切れにする。外殻が消え失せ、見えた怨念の核を砕く。


「レアドロだったとして多分、要らない……」

[ゲーム脳、深刻アルネ]


 そうは言いつつ、変色した草は取ってしまうのが俺だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ