目的
三度目の
飛ばしても大した問題にならない回
[選ばれたのは〈パイ草〉でした]
薬草採取に決めた俺は、〈ファイウダルの森〉を目指す。期日まで余裕がありすぎるので、のんびりと向かう事にした。
王都を出て、シュアと共に地下へ潜り、地中を生活可能な部屋で掘り進む。
「ふ~ん。中ってこうなんだ」
窓から見える土の中に、少々興味をシュアが持つ。が、すぐに飽きて隅のベッドで眠りに入る。
俺は睡眠不要なので、このまま進むのもありとは思ったが……。
内側を目指す。俺の深淵、魂の内部に降りる。真っ白な空間であり、地面を意識しなければ延々と落ち続ける。
一旦、降り立ち目標を探す。まだ下の方に彼女が居る。
「決行から3.34秒。遅いゾ」
ククラが待っていた。俺の見た全て、俺の思った全てを知って俺の不注意を正したり、乗ったりな美女が。
「二回目だから許せ」
「駄目だな。女神の戦士なら、色目は通用しないにゃ」
「チね」
女神…まぁシュアの為の戦士ならともかく、こいつには自分の顔を『存在が大きすぎる』と言った前科があるので、油断ならない。
唐突に始まったミュージカルを捌きつつ、目的を告げる。
「そろそろ切れたと思ってだな」
「あぁ、走り屋がパンパンするお」
シュアに了承を取ってある、とても神聖な行為を始めた。性能が跳ね上がる事がなければ、しなくて良かったのだが……〈キテル〉の思考の片鱗さえ見えるこれを、せずにはいられない。
実質、二人目をつくっている。彼の初回無修正まであと一人だ。俺の生産量から言えば、あと四倍の人数は欲しいが……。
「やっぱお前、あれが最後の記憶なんだよな?」
ククラから、こっちに来る前の記憶について確認される。
俺は、ゲームやネットサーフィンを終えて眠りについた。その後に夢を見る事もなく、覚めればククラの中。それに違いはなく、何があってこちらに来たのか、全く情報がない。記憶の封印にしても〈魔王〉覚醒で戻さないという、何処まで行けばいいのやら状態。問題はないが……記憶の完全再生を可能としている今、記憶にないのが恐ろしい。
「止まってる」
「すまぬ」
行為を中断していた。相変わらず、思考の為にしか頭が働いていないようだ。再開するが。
「おらぁ! 点じゃなくて面制圧だるぉ!?」
指南が飛ぶ。行為というより神聖さの為の訓練となってしまうのが、いつもの事だ。
「チッ、やはり前後しかないか」
「8点場の到来っ」
本編開始から数分後、俺はククラから弾かれた。
「受け過ぎそうだったわー」
ククラは体の外側の洗浄を始め、俺も供給管の手入れを始めた。無言ではあるが、これが心地良い。
「お? ルシュフェルが来てね?」
「最近、呼んでなかったもんなー。んじゃ帰るか」
堕天使を誰も迎えないのは、まずいので内側から出る事にした。
[で、帰る時にはサブフレームを叩き出すのがお前なんだわ]
《内対》に呆られながら、ルシュフェルの相手をし始める。
「ルシ姉、何用?」
「〈擬似原初球〉は見飽きたからな。来てやった」
「ありがたやー」
ルシュフェルは暇をもて余している。波乱さえ来てくれれば、ノリノリで殲滅してくれるだろうが、来ない間はストレスでしかない。
はてさて、一体どうしたものか。
何か遊ぶものを探しているようにして、対応を考えていると。
「妹?」
ルシュフェルがシュアを見て、そう呟いた。理解出来ないが。
「な訳ないだろ。嫁だ」
「そうか嫁に……問題は出てないか?浄化されかけたり」
「ないかな~」
精神の浄化作用ならありまくりなのだが…ルシュフェルの質問の意図が掴めない。
とりあえず間を持たせる為の、カードゲームを始める。数字を足して100にした人の負けとなるルールのものだ。《天地一体》操作の《内対》、ルシュフェル、俺の順になる。
一応の為に、心を読む、目の反射等での手札把握は禁止にした。
「ふふ。人の遊戯にしては凝っておる」
[罰ゲーム無しとかやる気が]
そこそこの評価だ。絵柄をファンタジーに変えた甲斐もある。そんな風に遊んでいると、目的地に到着したようだ。
[は~~。次は魔王様な二輪車な?]
遊びながら運転していた《内対》からの注文である。それで大自然を駆りたくなる気持ちは凄く分かる。どうせ戦車が流出しているのだ、二輪車程度は許されよ。
到着はしたもののシュアが起きない。起こしても夢の中が良いのだろうか、全く覚める気配がないままだ。添い寝をするしかない。
[18:51]シュアが目覚めるが〈パイ草〉は日中に摘まなければ、効果がなくなるという不思議な毒消しだ。
働く事無く、夕暮れをシュアと眺めていると。
『なんだ貴様か……隣は……獣人…居たのか』
グームが現れた。獣人に興味があるのか、鼻を動かしている。
「あぁ俺の嫁、シュア・フィエータ=アウゴだ。シュア、この熊さんはグーム。この森の主的な存在だ」
「よろしくね」
俺を抱き締めながら、シュアとグームは目を合わせる。獣の第六感での会話でもしているのだろうか。中々、気になる。
しばらく合わせ続けて、グームから俺に質問が飛ぶ。
『最近の魔物が活発でな。収めるのが苦労なのだ』
「あぁすまん、俺が〈魔王〉になったせいだわ」
『また貴様の所業か……』
グームにため息をつかれる。贖罪の魔物狩りと冒険者登録をした事を伝えると。
『星々でも渡り、魔物を狩るのか?』
どれだけ飛躍した想像をしたのだろうか、当たっているのが素晴らしい事だ。
「そうだな。それの為に地道な薬草採取だ」
『採り尽くすなよ……あぁそうだ。南の方から濃い邪気を感じているのだった』
超気になる発言だ。のそのそと向かおうとするのを止め。
「俺も混ぜろ。薬草採取中のトラブルならセーフだ」




