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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
75/261

逃避

あっやっべ。前回のルビ振り忘れてた。



あと邪神(ゆうじん)から、ブクマ数が上がってると聞いて

「(≧∀≦)ノファーィ」してました

「〈神会〉を始める」


 宇宙の会議室で、ヴェラドは開始を宣言する。

 召集をかける前に集合しいてるという、極めて異例な奇跡が発生した今〈神会〉。危機……でなくとも〈乱調者(バランスブレイカー)〉は確実な存在の誕生に、神々は集結したのだ。


「〈魔王(ゼノ)〉誕生を防ぐ事は叶わず、イレギュラー対応Lv5を発動した。〈天使軍(キリエ)〉が向かっているのだが」


 〈天使〉が動いている。いよいよ脅威の高みが現実となったと思ったのが、ほとんどだろう。


「とある存在が本体ごと〈原初球(エデン)〉に召喚された」


 一体、何なのだろうか。各々は自種族の封印対象を思い出しているが、解除も何も聞いていない。

 分からなさという危機だが、その程度の存在なのだろう。という空気になる。


「それは〈奈落之一(アビスアイン)〉原初の神に仕え、叛逆し、自身に加担した全てを喰らいし存在」


 随分と昔から封印されていた存在のようだ。実際に会った事があるものが。


「な~んだあの子か~」

「ほんの少し私より前の」


 無邪気な笑顔を振り撒く妖精フローと、少しの差に不服な精霊レエしかいないのだ。印象に残るも何もない。自分が産まれた時には、既に封印されてあった存在を脅威と思えるだろうか。


「八代目と三十代目〈魔王〉の時に、一部の召喚がされた程度でしたよね?」

「その通りだ。管轄はその時の最高神だから、これは俺のミスだな」


 ヴェラドの失敗が珍しく、会場の目は点となる。


「ほぅ……一度は戦いたかったが」

「レプトの戦闘脳が再燃か。かくいう我も」

「落ち着け。お前らが動くと、星系がどれだけ壊れるか分からん」


 点より早く戻ったレプトとグリナが、戦闘準備を始めそうだったのを、ヴェラドが止める。


「調べたところ〈奈落(アビス)〉も消えているが。どれだけの闇が凝縮されていたのだ?」

「正確に測った覚えはない。感覚的には1.4フローなんだが」

「え~、あんたしか上ないじゃ~ん」


 ラビオンの質問にヴェラドが答え、フローが突っ込みを入れる。

 全くもって笑えない。それだけの闇を圧縮した存在が、調整された〈原初球〉に召喚? ゼノムより〈乱調者〉ではないか。


「問題はね。名前の無かった〈奈落之一〉に名付けした上に、召喚主として認められてるゼノム・ルマ=アウゴ。既に出した〈天使軍〉に追加情報として、これらを伝える事が出来ないって事さ」


 詰んでいる……先々代の転生先がゼノムだったらどれだけ、話の道筋が理解出来ただろうか。この場の思考が一つになった。


「それで、今の〈魔王〉は?」


 センペカが現行を知りたがっている。人を侵略しているかどうかが、気になってしょうがないのだ。


「現在〈対巨人用戦機(ティタンキラー)〉が応戦中だ」

____________________________________


「やっぱ格があると無理なのね」

[近接に変えろぅ]


 機体を肉眼で確認出来た瞬間に、金属弾が掃射され(トックリ)ハ(")チの巣になった。

 

 お返しと言わんばかりに、撃ち込まれた弾を錬成して銃を作ってみたが、威力が足りない。装甲を貫いても即座に修復される。弾丸の属性を変えたり、口径を変えたり、余ってた魂を撃ったりしても同じ事。


 光線が背中側に迫る。着弾すれば爆殺確定であろう、桃か紫の光線だ。魔力にしても異質なものと感じている。神性が含まれていそうとも思った。


[そういや放った後に、認知して避けたよな?]


 読みだと思いたい事を《内対(ククラ)》が問いかける。光速に反応している訳がないだろう。読みとか魔力の初期微動とかだ、それ以外は認めない。


[まぁいいや。空を飛べウリャア!!]


 俺の最高火力は今のところ、打撃によるものだから空を飛ぶ必要がある。飛ばなくてもいい方法としては、相手への引力を倍加させて無理矢理の着地だが。機械……金属というのは五大属性的な考えで行けば、土や地に当たる。引力もまた同じ系統とされる作品の方が、多いので使えない。

 

 理で行けば空中に浮くよりは、地面をしっかり掴んでいた方が打撃の威力は高い。だから俺は単純な飛翔魔法ではなく、一手間加えた。


「〈気箱(スカイブロック)〉」


 気体を気体のまま固定化する魔法を使う。遠目からすれば飛翔魔法と同じだが、微妙な違いがある。足首が斜めではなく真っ直ぐな上昇のだ!!


[細か過ぎて伝わらないシリーズ]


 とは言うものの《内対》は分かっている。こちらの方が火力が高いと。


 相手も近接に移行、光刃を取り出した。なんてSFな存在なのだろうか、本気で拿捕しようと思う。


[光刃は右手〈炬剣(ヒートブレイド)〉左手〈雷剣(ライトニングブレイド)〉と少し性質が違うからな。多分、他の属性への切り替えも可能だと思うから、注意して]


 何にせよ当たる気はないんだがな。まぁ、一属性のみで範囲攻撃不可な装備。と舐めてたら死ぬ事もあるだろうし注意しておこう。


 光刃が交差して俺に斬りかかる。普通の剣の軌道ではない事を読み、一気に下へ下がり、裏へ跳び上がる。


 読み通りに、普通の剣ではあり得ない太刀筋をしていた。何せ当てれば勝ちみたいなものだ。手首を曲げるだけで、恐ろしい範囲が間合いとなる。仮にスレスレだったとしても、今の属性だと実質直撃だ。


[鬼畜な範囲、虚偽の判定、死せる]

(ん? 地ならしでもするか?)


 《内対》が何か進みたがっているが、適当な相づちをうって切る。


 後ろから、がら飽きの腰部に近付き正拳を放つ。大穴が穿たれ、下半身が落ちてゆく。


[部位切断は鮮度が命!!]


 完全に同意し、下半身を回収しに下へ跳ぶ。触れて収納空間行きだ。


 上を見れば、修復を終えこちらへ急降下中だった。流石に真っ正面はキツイので横へ跳ぶ。km単位での動きだが、もう気にする事はない、諦めた。


 過ぎたのを確認して超速旋回。今度は、空間が切り取れるかのような爆弾を撒かれる。


「当たらなければ無意味だ、無駄だ!!」


 そう言いながら宙を飛び回る。これで相手に線と点が見えたら、パーフェクトだろ《内対(ククラァ)


 光刃をすり抜け、行けると俺の拳が叫んだので、手刀で一刀両断にしようとしたが。溝尾辺りに居た、搭乗員の頭の半分で手を止めてしまった。


「お前かよ……ドッペ」

「師匠、久しいですね。今、向こうの料理はトマトダレブームです。私のオススメは鍋とパン挟みでしてね……」


 普通は会話不能のはずの状態に、突っ込むべきだろうが、顔見知りをまたも手にかける必要が?との葛藤により忘れていた。


「引いてくれない?」

「無理ですね。貴方は特異過ぎなんですよ」


 『異なるというのは争いの根源』とどこかで見かけた言葉が浮かぶ。その通りに後戻りはない。


 光刃が自傷するかのように迫る。分体をコックピットに放ったが、直ぐに対応されるだろう。搭乗員の保護まで行うスパロボ……廃スペックにも程がある。


 ともなればコア・エンジン探しが基本。弾幕と連撃を避けながら全身を隈無く、破壊し続ける。


 結果としては、全身一気に消滅が最善と《内対》が出した。無茶だな、最高火力な打撃を越える範囲攻撃となれば、Mになった王子のように、自爆をかまさなければならなくなる。死にたくはないので拒否。しかしそれ以外の手が思い浮かばない。


 堂々巡りを開始しそうなところで。


(〈対巨人用戦機(ティタンキラー)〉か。土地を支配せよ、相手は回復が不可能になるぞ)


 ルシュフェルからの〈念話〉が届く。そんな昔からある機体の型という事だ。


(いやはや恐れ入ります。まだ余ってますので魂を送りま)

(もう腹は膨れておる)

([堕天使が見返りを要らないだと?!]) 


 情報へのお返しを、遠回しに断られて困惑した。いや種族特徴……あぁでも〈ゼノ〉も付けたし別に不思議でもないか。


「我は高潔たる星の導きに従う!!」


 地に魔力的な目を向けると、魔力の川が見えた。恐らく龍脈と言われる系統のものだろう。見ればドッペの位置へと、高く波打つ瞬間がある。これで耐久が半端じゃないことになるのであろう。


 巨人よりも土地から吸収すれば勝てるじゃん。のような発想なのか。だったらやるべき事は一つだ。

 龍脈の位置をズラした上で、結界に閉じ込め撃破すればいい。


 《内対》に一旦、龍脈の情報を集めさせる為に、地に降り硬化外套を深く突き刺す。


 何をしているのか予想が付いたのか、ドッペが猛攻を始める。斬撃を打撃を銃撃を魔法を次々と。俺はそれに合わせ舞う。

 斬りかかる腕を抱き折り、蹴りを受け流し大腿部分を裏拳で砕き、収納空間を利用し弾を反射、耐性を別途上げた分体で魔法を消化する。


[クケケケケ!! 土地支配だと? 上を行ってやるわ!!!]


 《内対》がそう言った途端、機体の動きが鈍る。いや、飛行制御系に至っては機能停止だ。


(まさか)

[処理落ちだ]


 何て恐ろしい情報科なのだろう。ファイアウォールを逆手に取るという……そのうち鈍るどころではなく防御結界ごと、永久凍結しそうで怖い。


[地面についてるけどここ数十km、脈なしだから安心DA☆ZE。ゆったりとトドメだよ! 殺ったねゼノちゃん!]


 さらっとえげつない事を《内対》は言った。

 トドメだと。俺に人を殺れと。容赦のない追撃を仕掛けろと。


[会話が一応は可能な存在でも、殺さなきゃね? 戦意喪失も再燃の可能性あるからなー]

(大丈夫だって。ドッペをコックピットから引きずり出せば)

[搭乗員を光の玉にして強制的に乗せるぞ]


 そしてただ単に出せば終わりではない。身の中にあったオーラの具現かもしれない。そんな殺るしかない条件を多数持っていたのだ。


 それに気付かず、戦いをここまで進めた俺は……責任を取らねばなるまい。


「あー。俺の分も食ってくれや」

「家族は?」

「独身」

「恋人は?」

「なし」

「同僚へは?」

「ゼノムとの敵対は止めとけ。ライバル止まりにしろ」

「それは伝えない方がいいな。いや……王には言っておくか……」


 よくコックピットを見れば、ドッペの席の後ろにはあの虹剣が刺さっており、王命で来たのだと察した。ならば王に。


「王には?」

「ないない」


 裏が本当に少ない方だな。これからの彼の人生…その全てを奪うのだ。重圧に耐えきれず、無意識からだろうか。


「ん、じゃあな。我望む、疲れた英雄に永久なる安らぎを〈死眠(ヒュプノス)〉」


 あくまでも、眠らせただけと思い込めるような詠唱をした。  

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