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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
74/261

同じ通り

すまない、まだ相対チートの領域でしかないんだ

「あぁよく分かったよ。君の状況が」


 新たな〈魔王(ゼノ)〉は〈奈落之一(アビスアイン)〉を理解した気になっている。

 

 ゼノムは大きく考えていない。ただ暗闇から誰かしらに、鎖に繋がれた女性が現れただけだと。


「ほぅ……余を解ると?」


 〈奈落之一〉は興味深そうに続きを催促する。


 第一印象からのイメージの時点で、好奇心しかないのだ。彼女の時代は原初……つまり始まったばかりの世界だ。歪みと言っても、ゼノムの前世界程の業の深さはない。特に〈色欲(ラスト)〉は、純粋な行為を貪欲に求め続けるだけであり、決してアブノーマルな行為をも網羅する必要はない。〈色欲〉の悪魔達はしていた可能性もあるが、彼女は記憶までも共有した訳でない。そして見合う相手が当時の最高神しか居ないので、当然のように未経験。『別に知らずとも、問題ないのだろう?』と気迫で全てを黙らせ、神も教えなかった。そう、言ってしまえば彼女は生娘なのだ。




「俺にもあった時期だが、君は無間の空間のせいで時期が長くなったんだ」

「つくづく無能なのだな」

「真に全能なら君を落とす必要がない。もっと盛れば自分以外は要らないはずなのに、創っている。これは全能性の否定と人と神の思考差異による理論だが」


 〈奈落之一〉は感心していた。神の力の否定を密にしている存在、それは神の敵になるも同然であり自分に近い存在だと。


「否定して、その先は?」

「〈無〉しかないだろう。観測者のいない、真にそうであるかも掴めてない〈無〉。俺は〈有〉を信奉するがね」


 全能の否定とは万物の否定。それを伝えながら、ゼノムは過去を思い出していた。ナチュラルに魔王の思考になり、誰も行かない偏りこそ至高とし、無我に入り、仮面を被るようになったと話す友人を。『自殺者は賢者か愚者。ほとんど愚者だが』というような名言の通り、ゼノムにとっては賢者の友人。

 ……彼は自殺という行動すら不要と言うし、火力が上がったりするなら間違いなくやるだろう。


(([人間は解らない]))


 〈奈落之一〉は心を読めている。ゼノムが伝えていない事でも、彼女は知ってしまう。前世界の友人という存在は、手段だけは合っているが目的が全く違う。『手段の為に目的を選んでいない』と言われた方が理解が出来る狂存在。


「君は既に許されている」

「なんだと?」

「償いの時はとうに終わっている。〈奈落(アビス)〉に居続けたのは、君の選択だ」

「あり得ぬ。この鎖は(やつ)の力で」

「君は誰に創られたのかな?」

「?!」

「理解の衝撃だね? ……そして罪を全て背負うのは、逃げるかのように自責にしただけだ。端から見れば、親の仕事を代行しようとして失敗し、親によって倉庫に閉じ込められた幼子と同等さ。純粋だね君も」


 『俺にもあった時期』とはゼノムの嘘。知的生命体のほとんどが通ってしまう事象だったのだ。

 〈奈落之一〉は固まる。否定材料不足と〈魔王(ゼノ)〉の賢さ(?)に思考が追い付けない。


「まぁこの理を受け入れないとしてもだ。真の闇を目指すには、光やその他を操る必要があるだろ? 分かってるはず、全能とはそういうものだと、〈叛逆の天使(ファーストリベリオン)〉の敗因はそれだと」


 言ってない情報が漏れた。いや〈奈落之一〉の発想は、全世界(どこ)でも行われていると。


「何故そこまで余を思える!! 魔法などない貴様の世界で!」

「……言ってしまえば知れなかったからだ。『あったかもしれない』『あるかもしれない』の領域がどこまでも広がる世界だ。無知が故の、想定と実行と結果だけが残り、それを伝え合う。そんな世界だったからじゃないかな」


 ゼノムは図星をつき続けた。結果として〈奈落之一〉は情を露にしてしまう。


 ゼノムは宥めるように〈奈落之一〉を抱き締める。


[うわぉ。不倫かよ]

(違うぞ?! 哭いてる子を安心させる最善手だから!! 不純物はないから)

[今は。が抜けてると思うんですがそれは]


 内側はいつも通りの修正をしている。これが〈有〉の全てだと物語っているかのように。


「さて、鎖を〈奈落〉から外し………いや君なら内包が可能か」


 ゼノムは闇の使い道を考えた結果、〈奈落之一〉に入れる事にした。


「流石に余でさえ……」

「故に名を付ける。これまでとは異なる堕天使に、なろうではないか」


 息を吸い、口上を考えるゼノム。思案を巡らしている時点で〈奈落之一〉は歓喜していた。


「堕ちてもなお善生(かがやき)を持つ(ほし)よ。大罪(かこ)を背負いて天へ舞い戻り、光と闇を司る象徴と化せし六対十二翼で、魔王(われ)の道を開きたまえ……〈ルシュフェル・ゼノ=セプテム〉……それが君の名だ」

「…そうだ……! …それでいい……!! ルシュフェル・ゼノ=セプテム。余は……堕天の主は再び天座へ至る」


 再びルシュフェルの名を冠した存在が現れた。それを祝福するかのように〈奈落(アビス)〉は門をくぐり抜け、門も崩れルシュフェルを中心に渦を巻く。渦は白と黒の光明を放ち、中心に在る者へ納まりゆく。


(かかか! 力が戻る!! いや………越えておる!? 神格未得の名付けで?!!)

______________________________________________





 名付けを終えた後、ルシュフェルを召喚待機空間に入れた。


『神格未得で〈原初球(エデン)〉の複製とはな。そなたは〈魔王(ゼノ)〉の中で最も強かろう』


 と謎な事を言っていたが気にしない。久々に収納空間覗いたら、地平線らしきものが見えたなんて言ってはならない。


 今後の処理を考える。


[とりあえずお前は死刑な?]

「不可抗力だよ! 自分が今〈大解放(パンデライズ)〉とか分かるか!!?」

[ほらほら、責任は取ってよ~~。自分だけ罪から逃れようとするなよ~~]

「ぼくまおーだからわかりません」

[何だ、今日は幼児退行日だったか]

「ククラママ、シュアママ、ルシママ」

[これは酷い…桃に入れて島流しにしなきゃな。これは使命……]


 やはり駄目だった。俺と俺に合わせたククラでは話が進まない。何せ死にたくないのだ。


「あっ……向こうに処刑の話流れてる可能性」

[ありますねぇ!]


 これではシュアとの結婚式が消えてしまう。具体的な方角を見て、『今ならやれそう』と転移の為に集中していたところ。


キィィィィ


 と機械的な飛翔音が聞こえた。首を上げて集中すると。


「何でスパロボがあるのかね?」

[ん~……虫の真似?]


 数十km先に人型の兵器が飛んでいた。まさしくスパロボの形状の尖り方。色は黒地に緋、光翼と見紛うように粒子が噴射されている。

 心が踊る。封印された超文明の兵器という認識しかないからだ。


「向こうからの救助か」

[ラーユー!!]


 救助を否定され、待つしかなくなった。頼むから敵対しないでくれ。       

Qまんまっすか


Aまんまっす

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