同じ通り
すまない、まだ相対チートの領域でしかないんだ
「あぁよく分かったよ。君の状況が」
新たな〈魔王〉は〈奈落之一〉を理解した気になっている。
ゼノムは大きく考えていない。ただ暗闇から誰かしらに、鎖に繋がれた女性が現れただけだと。
「ほぅ……余を解ると?」
〈奈落之一〉は興味深そうに続きを催促する。
第一印象からのイメージの時点で、好奇心しかないのだ。彼女の時代は原初……つまり始まったばかりの世界だ。歪みと言っても、ゼノムの前世界程の業の深さはない。特に〈色欲〉は、純粋な行為を貪欲に求め続けるだけであり、決してアブノーマルな行為をも網羅する必要はない。〈色欲〉の悪魔達はしていた可能性もあるが、彼女は記憶までも共有した訳でない。そして見合う相手が当時の最高神しか居ないので、当然のように未経験。『別に知らずとも、問題ないのだろう?』と気迫で全てを黙らせ、神も教えなかった。そう、言ってしまえば彼女は生娘なのだ。
「俺にもあった時期だが、君は無間の空間のせいで時期が長くなったんだ」
「つくづく無能なのだな」
「真に全能なら君を落とす必要がない。もっと盛れば自分以外は要らないはずなのに、創っている。これは全能性の否定と人と神の思考差異による理論だが」
〈奈落之一〉は感心していた。神の力の否定を密にしている存在、それは神の敵になるも同然であり自分に近い存在だと。
「否定して、その先は?」
「〈無〉しかないだろう。観測者のいない、真にそうであるかも掴めてない〈無〉。俺は〈有〉を信奉するがね」
全能の否定とは万物の否定。それを伝えながら、ゼノムは過去を思い出していた。ナチュラルに魔王の思考になり、誰も行かない偏りこそ至高とし、無我に入り、仮面を被るようになったと話す友人を。『自殺者は賢者か愚者。ほとんど愚者だが』というような名言の通り、ゼノムにとっては賢者の友人。
……彼は自殺という行動すら不要と言うし、火力が上がったりするなら間違いなくやるだろう。
(([人間は解らない]))
〈奈落之一〉は心を読めている。ゼノムが伝えていない事でも、彼女は知ってしまう。前世界の友人という存在は、手段だけは合っているが目的が全く違う。『手段の為に目的を選んでいない』と言われた方が理解が出来る狂存在。
「君は既に許されている」
「なんだと?」
「償いの時はとうに終わっている。〈奈落〉に居続けたのは、君の選択だ」
「あり得ぬ。この鎖は神の力で」
「君は誰に創られたのかな?」
「?!」
「理解の衝撃だね? ……そして罪を全て背負うのは、逃げるかのように自責にしただけだ。端から見れば、親の仕事を代行しようとして失敗し、親によって倉庫に閉じ込められた幼子と同等さ。純粋だね君も」
『俺にもあった時期』とはゼノムの嘘。知的生命体のほとんどが通ってしまう事象だったのだ。
〈奈落之一〉は固まる。否定材料不足と〈魔王〉の賢さ(?)に思考が追い付けない。
「まぁこの理を受け入れないとしてもだ。真の闇を目指すには、光やその他を操る必要があるだろ? 分かってるはず、全能とはそういうものだと、〈叛逆の天使〉の敗因はそれだと」
言ってない情報が漏れた。いや〈奈落之一〉の発想は、全世界でも行われていると。
「何故そこまで余を思える!! 魔法などない貴様の世界で!」
「……言ってしまえば知れなかったからだ。『あったかもしれない』『あるかもしれない』の領域がどこまでも広がる世界だ。無知が故の、想定と実行と結果だけが残り、それを伝え合う。そんな世界だったからじゃないかな」
ゼノムは図星をつき続けた。結果として〈奈落之一〉は情を露にしてしまう。
ゼノムは宥めるように〈奈落之一〉を抱き締める。
[うわぉ。不倫かよ]
(違うぞ?! 哭いてる子を安心させる最善手だから!! 不純物はないから)
[今は。が抜けてると思うんですがそれは]
内側はいつも通りの修正をしている。これが〈有〉の全てだと物語っているかのように。
「さて、鎖を〈奈落〉から外し………いや君なら内包が可能か」
ゼノムは闇の使い道を考えた結果、〈奈落之一〉に入れる事にした。
「流石に余でさえ……」
「故に名を付ける。これまでとは異なる堕天使に、なろうではないか」
息を吸い、口上を考えるゼノム。思案を巡らしている時点で〈奈落之一〉は歓喜していた。
「堕ちてもなお善生を持つ君よ。大罪を背負いて天へ舞い戻り、光と闇を司る象徴と化せし六対十二翼で、魔王の道を開きたまえ……〈ルシュフェル・ゼノ=セプテム〉……それが君の名だ」
「…そうだ……! …それでいい……!! ルシュフェル・ゼノ=セプテム。余は……堕天の主は再び天座へ至る」
再びルシュフェルの名を冠した存在が現れた。それを祝福するかのように〈奈落〉は門をくぐり抜け、門も崩れルシュフェルを中心に渦を巻く。渦は白と黒の光明を放ち、中心に在る者へ納まりゆく。
(かかか! 力が戻る!! いや………越えておる!? 神格未得の名付けで?!!)
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名付けを終えた後、ルシュフェルを召喚待機空間に入れた。
『神格未得で〈原初球〉の複製とはな。そなたは〈魔王〉の中で最も強かろう』
と謎な事を言っていたが気にしない。久々に収納空間覗いたら、地平線らしきものが見えたなんて言ってはならない。
今後の処理を考える。
[とりあえずお前は死刑な?]
「不可抗力だよ! 自分が今〈大解放〉とか分かるか!!?」
[ほらほら、責任は取ってよ~~。自分だけ罪から逃れようとするなよ~~]
「ぼくまおーだからわかりません」
[何だ、今日は幼児退行日だったか]
「ククラママ、シュアママ、ルシママ」
[これは酷い…桃に入れて島流しにしなきゃな。これは使命……]
やはり駄目だった。俺と俺に合わせたククラでは話が進まない。何せ死にたくないのだ。
「あっ……向こうに処刑の話流れてる可能性」
[ありますねぇ!]
これではシュアとの結婚式が消えてしまう。具体的な方角を見て、『今ならやれそう』と転移の為に集中していたところ。
キィィィィ
と機械的な飛翔音が聞こえた。首を上げて集中すると。
「何でスパロボがあるのかね?」
[ん~……虫の真似?]
数十km先に人型の兵器が飛んでいた。まさしくスパロボの形状の尖り方。色は黒地に緋、光翼と見紛うように粒子が噴射されている。
心が踊る。封印された超文明の兵器という認識しかないからだ。
「向こうからの救助か」
[ラーユー!!]
救助を否定され、待つしかなくなった。頼むから敵対しないでくれ。
Qまんまっすか
Aまんまっす




