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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
73/261

やること真っ黒

 全身に力が迸る。手を振るだけで更地になるような、突風を起こせそうだ。


[性能上がって、統合成長してますわ。手間省けて良かった……]

(面倒くさいよな。分かるぞ)

[元凶ですもの]


 どうやら能力が統合されたようだ。細かく倍率を計算する上に、効果の出る属性や攻撃方法を俺に説明する。という面倒な事が消えた。


[情報感知、操作系は私が内包する。《物体変化》も《天地一体(オールフュージョナー)》に統合。追加されたのは《闇威者(ダークネス)》闇や亡霊の支配の奴と思う]

(ふ~ん。お前を《内演算》というのも違うから……《内対(ククラ)》でいい?)

[好きにしろ。けどそれ私が対になってね?シュアは?]

(ほら……お前は癒しじゃないし? 脳筋な俺の内側からの補助だから)

[こんな美人に何て事を言うのでしょう]

(事前と事後の比較中のBGM流さなくていいから)


 正体は当人だった《内対(ククラ)》つまり相当に毒された天才……駄目だ『ククリティーナ』何て頭が裂けても言えない。全ネタを見透かされている今、俺の思考は《内対(ククラ)》に筒抜けだ。

 裏切られたが最期、夕方に心臓に杭を刺されて死亡な未来が過る。


「グガァァァァァアァ!!」


 西洋竜がこちらに、無属性の息吹(ブレス)を放つ。何の対策もしていない、ただ破壊の為のものだ。


[ゼノムの体にイートイン!]

(変換効率は?)

[10%となります]


 息吹(ブレス)を吸収した俺は、属性を乗せて返す事にした。勿論、手に入れたばかりの闇属性で。


 漆黒と少しの煌めきの一条は、竜の防御結界を貫き腹部を掠める。


 防御結界を考える知能かセンス。張り直し、式を複雑化させる保有魔力量。強敵に分類されるのだろう。


(やはり……ドラゴンはそうでなくてはな)


 初めての超幻想存在に、テンションがうなぎ登りだ。竜ともなれば全身素材は当然で、場合によれば魂さえも装備品の為に使われる。


[やっぱ前世界の創作は逞しいわ]


 《内対(ククラ)》が呆れている。ないからこその発展を遂げた世界を、あるからこその停滞を遂げた人に見せる。齟齬が基本だろう。


 竜は、爪を立て心臓を抉りに来る。流石に二指は無茶過ぎるので、左手で掴む。


「ググ」


 引こうとした爪を引けず竜は困惑している。

 俺はそれを見ながらほくそ笑む。これが、魔法世界における保有魔力量と操作練度の差だと。遠距離にしか防御出来ないのか?と。


 そのまま爪を折る。そして瞬間的に《天地一体(オールフュージョナー)》を起動し、デュラムの骸と混ぜ合わせる。

 形を無くしながら、思い出に浸る。訓練の日々、内緒の日々、謝れない事……思い返せば、訓練中のはカミングアウトの兆しだったのか。と思いながら手甲と足甲を作成する。


 出来上がりは良好、竜の手足と見紛うものが完成した。作成時間は19秒、経済崩壊的な早さである。


 竜は尻尾を振り付ける。先端は音速を裕に越え、雷速にさしかかっているだろう。爪を立てて迎え打つ。


「ガガァア"!!」


 尻尾の先端が切れ、竜は悲鳴をあげた。恐らく、人間にとっての足の小指……いや指と爪の間にドリルな痛みなのだろう。


「茶番は終わりだ……」


 この竜の格が駄々下がりなので、早めに締める事にした。


[雑魚狩り、カッコ悪い]


 《内対(ククラ)》もそう言っている。


「オォォオオォォォ!!!」


 咆哮。しかし今の俺には、揺れ草の音程度でしかない。

 竜が黒く輝く。黒曜石を思い出させるような艶が、鱗に見え始める。


[ほぅ……これは]

「砕破しかねぇな」


 黒の巨躯が線になる。速い。対応は間違いなく不能だ、あくまで対応だがな。

 読んでいた俺は、手甲の形を握り拳がしやすいように変え。


「〈羅拳(カノン)〉」


 正面から打ち抜いた。ただ単に力を込めた一撃だ。それで竜の体は、顔の全てから尻尾までの一直線が消滅した。拳に当たらず吹き飛んだのだ。


[素材がぁ! 現れてぇ! 素材がぁ! 格下にぃ! 斬撃読んでぇえ! 折ってゆくぅ! 素材がぁ! っ! 近付いてぇ! 素材が失せたあぁあぁ!!!]

「食べて効果あると思う?」

[案外いけるかもね。やってみれば?どうせ格は低めだし]


 竜を胃に入れる。気分的にじっくりと味わう。胃に味覚……まぁ俺は元から全身胃か。


「これらの使い道は…グボッ………なんじゃこりゃぁ!!」


 周りの死体と魂を眺めていたら咳込んだ。押さえた手を見れば真っ黒。


[あー消費しないとまずいね。どうする?]


 物質化した闇を抱え込める体でないようだ。全部、吐き切る方法を考える。


「闇……扱うのは…邪悪……悪……悪魔……だな」


 思い出したのは詠唱。その内の一つだ。


「けど〈召喚門〉無しはな……死体を集めるか」


 儀式玄人()な考え方に行き着いた俺は、死体を集める事にした。どうせ皆死んでいるんだ、こんな暗黒に染まった土地で〈既死(アンデット)〉になるよりはマシ。







 製作30分の〈召喚門〉が完成した。


[早速〈魔王(ゼノ)〉だよ……なにそのセンス]


 《内対(ククラ)》にドン引きされる。

 基本的に、20~30代を一番下、その上に10代以下を乗せて、10代の上に40以上の年齢分け。俺から見て右に女性、左に男性の身体性別分け。扉は俺が引くように開き、素材に分けはない。門の中央には、老若男女を継ぎ接ぎした顔をシンボルとして付けた。


 そして、受肉の素材の為のクレイスの骸を、フォークリフトのように持つ。開けた時に投げ入れるつもりだ。


 悪魔召喚に相応しい門が出来上がる。うむ、前世界の深夜放送すら拒否られそうな門。よいではないか。


 恐らく前は自身の力と、準備品が足りなかったから何もなかったのだ。竜を屠り、闇を抱え、大量に恐怖にひきつる霊魂のある今なら。


 「冥府の扉は開かれた。無間なる〈奈落(アビス)〉の〈初罪(アイン)〉となりし〈明星(ルシュフェル)〉よ! 闇に圧死せし魂を糧に、この少女の身に宿れ〈最上位悪魔召喚(ツミナルモノヘノサケビ)〉!」


 大量の黒い何かが死体から沸き、俺からも出る。魔力が吸われている感じはなく、ただ単に暗黒物質が移動しているかのよう。


 門は黒に染め上げられた。若干、デザインが変更されてる気がするが無視。


オオオオオオオオオオオオオオ


 呪詛のような音と共に、門の扉が開かれる。中は、本当に一寸先は闇と言った状態だ。


[遺棄り太郎]

「反論の余地なし」


 クレイスの骸を投げ入れる。《内対(ククラ)》からは、前世界の法を持ち出されぐうの音も出ない。が、思い付いたら止まらないのが転生・転移者。更に俺は人外要素持ちで、前世界から人としてズレていた。

 幾度となく障害や病気を疑い、『まともだ』と言われても病的に疑い続けた覚えがある。心に響かないからと、親の言う事をガン無視した時期もあった。


「黒魔術~黒魔術~。禁忌は手遅れ、なーのーだー」


 リズムを刻み前世界を忘れる。変化がない。まさか歌まで奉る必要でもあるのか。

 

 地球温暖歌を歌う事20分。〈キテル〉の時と同じような、格が近付く感覚がした。


 扉から、純粋な光を放つ鎖に両手両足と首、胸、腰を拘束されているクレイスの姿が現れた。王者の風格に圧されながら。


(あの肌色……髪型とか整形すらせずに、ここまで印象を変えれるのか……黄昏に互いが制服姿で二人きりになり、男は縛られ目隠し状態。そして女は机に座った状態で、クスクスとした見下すような笑いをしながら、上靴を脱ぎ黒ニーソの足を……)


 最早、男としての尊厳を放棄した妄想を始める。いや…尊厳をかなぐり捨てているが、女を笑わせる事に成功しているなら良いではないか。


[うわ]

「……呼んだのは貴様か?」


 数秒の間があり、悪魔の方から質問がある。

 さぁ、ここからが本番と言ったところか。悪魔は騙してくる前提で、話を進めなければならない。重要部や長期的な目で、俺が損する事を避けなければ。


「そうだ。我が名は、ゼノム・ルマ=アウゴ。職はない」

「早速、嘘か〈魔王(ゼノ)〉よ」

「縦も横も分からずに来てしまったからな。その辺りも享受していきたい」


 歴史もIFも大して調べず、最上位を呼び出してしまったからな。ズレは絶対出る。


 にしても職業〈魔王(ゼノ)〉か。乗りで言っていたのが、一応の正解だったとはな。


「こちらからも質問をしたいのだが」

「三つまでだ」


 出ました、詮索制限。その三つも、まともな回答を得られるか不明という糞要素。面接の時に『解無し』の問題のはずが『面接官(むこう)の好みの解を出せ』に変わってる並のもの。


「一気に言えば。名、その鎖、貴女の罪を聞きたいと思う」


 名前の有無、又は意味合いは重要だ。一応、明星(ルシュフェル)を文言にいれたが、あくまで前世界の名なので、対応した何かの可能性を探る。ある作品では、名無しの格上に名前を付ける事により、吸収される。という設定もあった。

 鎖は外したい。顧問になって貰いたいがあれが付いてる限りは、仕事が終わっては地獄か魔界に撤収、再度大量の霊魂を用意して召喚する。という流れが見える。シュアにバレないようにするのは至難なので、人の魂を使うのは、これ一回きりにしたい。

 罪は悪魔に重要。神自身が対抗馬として創り、罪と罰の例にしたかのような存在。それが悪魔だ。中には、属性的に黒い人、山羊角+蝙蝠羽の種族の場合もあるが、彼女は封印される位の危険度の保証はされている。罪の方向は悪魔の力の方向でもある。絶対に聞きたい。


 悪魔は目を瞑り考え始めた。久々の対人で、経験の引き出しが遅いようだ。

 待ってる間に絵でも書こう。


「全てに答えよう」


 マジで?! 太っ腹ですな。見当違いなら、(みらい)には死あるのみだが。


「名はなくなった。罰として剥奪されている」


 名付けシステムは、名付け親に逆らい(にく)くする機能が備わっているようだ。『ルシュフェル』の名を付けるのは当然として。


「この鎖は解けることはない。(やつ)の束縛絶対令だ」

「………そうか」


 無表情で返したが、内心では両手を上げて喜んだ。まさか見当違いは彼女だったとは。


「罪は全て。以上だ」

「あぁよく分かったよ。君の状況が」

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