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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
72/261

覚醒

「感じたか? レクス」

「あぁ。対策は無意味だったようだな」

「てな訳で〈魂蝕(ディーペストブレイカー)〉を返してくれ。あれがないと、まともに闘れる気が」

「性格と目標はともかく〈星壊級(スター)〉だからな」


 レクス王は急遽、知古を頼る事にした。あの〈ゼノ〉の覚醒が行われた。しかも醒めただけで、ここまで存在を示すのだ。(かみ)の判断を仰ぐまでもなく、手を打たねばならない。


「しっかしドジな奴。真下にやべぇもんがあんのに」

「地下に伸ばしたのは別人やも知れん」

「うへぇ。あんなに近くに居て、微塵も知覚不能て」

「注意しろ。相手は〈万象庫(アカシックレコード)〉外だ」

「へいへい。んじゃ、征って来ま~す」

____________________________________


「体が重い……」

「お前が重い程度で済むか……見た目より外部に影響なし?」


 ゼノムの配下に飛ばされた俺は、仕方無しにマーシャと部隊を連れて脱走した。

 皇帝は違いなく降りるつもりだ。かと言って責任取りで、処刑される気はない。封印出来る量の保有魔力ではない事が判明しているし、ゼノムと同じようなものを食らわなければ、問題の大抵は解決出来る。


 無理なものと言えば、今まさに蒼天を冒涜する漆黒の玉。その周りを飛びながら、息吹(ブレス)や属性を乗せた攻撃をしている西洋系の竜だろう。


 何よりマーシャを置いて向かえないのだ。恐らく俺から離れれば、圧に負けて死ぬ。現に、飛んでいたであろう鳥魔物が、群れで墜ちている。勿論、連れて行ける訳もない。


「サイフィ様…」

「逃げた者に様を付けるな」

「……サイフィさ~~ぁ……~ん。どうするべきでしょうかね?」

「新たに領域に入る者は無くそう。その後の再建は俺には無理だから……」


 瞬間、背筋が舐められる。急いで精神保護結界を張る。マーシャが過呼吸で倒れ、回復持ち全員が駆け寄る。俺を含め全員、足が震えている。


「サイフィ……」

「オワタなー。あれ」

「えぇ、あんな恐ろしいモノは消えて良いのです」


 並の戦闘者には、暗黒球が上方から霧散しているように見えている。俺は下の端の事を言っていた。


 闇から一点、大きさは人が一人程の雫が垂れかけている。凝縮な成長と思って『オワタ』と言ったのだ。


 竜も狙いをそこに変え、攻撃している。竜は通りが良くないと判断し、滞空に移行した。


「あー不味いね。これ密集していた方が良いよ」


 俺は先程の作戦を撤回し、待機させる事にした。竜は動けば新な『脅威ではない』敵が現れたと、狙って来るに違いない。

 

 それに雫が落ちそうだ。あんな闇が、着陸して周囲に撒き散らす割合なんて、粉塵より闇属性のナニカが占めてるに決まっている。


 雫が自由落下を始めた。恐怖で精神を何周もし、痴呆のようにそれを眺める。


 落ちた瞬間に声が響く。耳ではなく魂に聞かされるような。


『我が名は、ゼノム・ルマ=アウゴ。〈進なる王〉として目覚めし〈魔王(ゼノ)〉なり』



________________________時は戻り___________________


「あははははははは俺の初の犠牲者だよ生な眼前の犠牲者だ命を奪いし完全なる悪だわ。え? ゴブリンに盗賊? 洞窟の蟲達? 知らないね自分原因の身内の死より野生を心痛めて殺す人なんて居るの? 馬鹿なの? 死ぬの?」


 デュラムの骸を前に、ゼノムは狂っていた。それはそうだ、前世界にはない繋がりが切れるのを見たのだから。

 ちっぽけな青年で、前世界では命を預かったり懸ける事はなく、またこちらでもどうにかやれるだろうと、進んで来てしまったのだから。


「力が足りなかったね。で? このあとは?」

「うるせぇな。死人への吐露の時ぐらい静かにしろよ《内演算》」


 やれやれ、私の変化に気付いていない。とは言え私も身内(メンバー)が死んだ時は、同じだっただろうと思う。誰しも『残念な子だ』と言われる位の精神状態になる可能性を、秘めているのだ。


 それが死に立ち会うという形で発露。そして、感情呼応物質なんてなかった彼の魂に込められていた、こちらに来てから加算された〈(ディス)〉も同時に。それを感情呼応物質が受け取り、帝都を漆黒に染める……感情が陽でも同じ現象が起きるだろうから、彼の前世界にあった『開けてはならない箱を開けた少女』になぞらえ〈大解放(パンデライズ)〉と名付けよう。

 転移・転生者の魂は、死後の世界等で行われる筈の浄化……いや陽の性質もあるから……魂の脱力が行われず、行く場合が多いのだろう。神格によるものや付与有り召喚により、その辺りがさらりと描写されている場合もある。

 ようは、これまでの彼にマイナスな事象は、彼の心に響かなかったと言うことだ。


「なぁ《内演算》どんな死がいいかな?」


 そんな彼は転移にしろ転生にしろ、眠りについたのが最後。その後の記憶が全てないという、特殊過ぎる存在だが。


「答えろ、スキル《内演算》」

「自分で考えて実行したら?上木くぅん?」

「止めろぉ! ハンカチを嗅ぐソムリエを流すなぁ!!! ……え?」


 やっと気が付いたか。全く、ギャグでないと話を聞かないとか……。


「そんなんだから暫くはハーフニートだったのだよ。上木」

「あっはい。サーセン」

「で? 私の体で随分、好き勝手にやってくれたねぇ?」

「平に、平に御容赦を!! どうか御慈悲を!!」

「あぁ情け無用と無慈悲を扱えたら強いだろうね」

「誰が二次元の話を言った?! …………あぁもういいや…それで?」


 絶望中の悟は生を諦めている。生でなくとも、活動をする気にはなれないだろう。身内の死とはそう言うものだ。


「これから何する?」

「とりあえずお前に服を着せる……シュア以外の裸で反応するのは…」


 魂体での話なので全裸が当然なのだが……操を立てる為ならいいだろう。魔力を使い服を着る。薄さはギリギリを攻めるがな。


「けど悟、ハーレム形成狙いだよな?」

「ふぅ……了承取れば良いのだ」


 よしこのままの流れだ。このまま活に入れれば。


「じゃけん嫁達とイチャラブしやしょうねー」

「………こんな咎人が?」


 面倒な精神だ。活きる事を阻害するような、愛と正義と平等と法と経験則な生き方で、産まれた精神。

 『この世はゲームやシミュレーション』が自分の妙な行動に当てはまり『俺が努力しないから彼らが上に行ける』と卑屈な踏み台を実践するようになり。どうにか修正しても、根底がそれなのでどこかしらに諦感が滲む。

 やって訪れた魔法世界でも、死人を出せば…恐らく『創作と違う』と思い死のうとする。かと思いきや、実行するエネルギーを持ち合わせていない。それを転じる気も起こさず自身を『ゴミ』と断じる。


「皆、罪人なんだ。捕らわれているんだ。お前は…閉ざされた世界に風穴を開けたくないのかい?」

「……………………進みたい…とは思うが………実感がね……」


 現実でゲームのように『自分が世界を動かしている』と思い込む。だから現実で外され、上手くいく場合も少ない。分かってもそれが望みなのだから繰り返す。そして少しの成功の場合は、成功を繰り返す事を『ゲームと同じで飽きた』と言う奴だから………はぁ……こんな奴と共生が必要だなんて。


「沸くまでやるしかないよ。頑張れ、頑張れ」

「………………なぁ見た目も変化出来るか?」

「可能だ」

「応援をシュアで。ハートマークを付けるのを忘れずに」


 三大欲求に帰る、漢の前に雄であった。


「頑張れ! 頑張れ! ゼール! 頑張れ私の旦那様!!」

「ホッヒヒ!! 注文と違うが尊いぜ!!」


 そして彼は、大きく息を吸い。


「我の望みは〈進なる王〉……自らと世界の天井を、壁を壊し突き進むが故に! 一切の生が! 死が! 有が!! 無が!!! 在るだけで(こうべ)を垂れる王へと。魔力溢れる現世は我を異なる我に押し上げよ〈魔王(ゼノ)……」


 ここで止めるべきだった、彼の元に複数の霊魂が集まるのを見た時に。言えば良かった、こちらの伝承での〈ゼノ〉の扱いを。


降誕(バース)〉!!!」 

チート第一期の到来である

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