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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
69/261

早々の仕打ち

バックアップなしだから小出しなんや。あと疲れ

 神殿にいそうなおっさんを乗せて島を出る。序盤は静かだったのだが。


「うっ………おぅ…ゲボボ」


 舟の揺れが酷いのか吐きまくる。リバースしているので呼吸も荒くなり、汗は滝のようになる。


(回復…しかし魔力……悪評になるのはなぁ)


 少々、悩んだ後に精神回復系の魔法をかけておく。乗り物酔いの根底は脳の困惑だから、脳が静寂になり続ければ酔わないはずだ。


「あぁ……神のお姿が」


 極限状態のボーダーが低すぎる神殿おっさん。それで神が見えるなら、前世界の悟や天国に到達した人の割合は、3割いきそうである。


 実際、神おさんを乗せた効果はあった。魔物との遭遇率が減ったのだ。

 祈りを長時間捧げた訳でもないのにこの効果………ガチで祈らせると破邪結界な場合も考慮しておくべきだろう。


 おっさんとの三人旅は、有意義だった。


「なるほど……正邪判定は人がやれば独善だと……」


 特におっさんには大きいだろう。前世界の紀元前から現代でも答えのない説と俺の経験()によって産まれた『哲学』を教えられたのだから。後は好きな料理をして自分好みの宗派なりを作ってくれ。俺はしないから。


 俺は俺で調べきれてなかったところを知れた。最高位神ヴェラドが各々の種族より中間管理神を選抜、それによりこの星は守られていたが、人間にこの星を託したのか、何時かを境に神々は消えた。残された加護は、能力として今もある……と言った内容だ。

 偶像崇拝した結果、呪い状態になり死んだ例が連鎖的に30件上がったので、空っぽの祈りの場としての教会しかないのだと。


「かなり少数の宗教だな」

「………神に祈るより、自身より沸く魔力の運用を考えた方が有益だ、と言う方が多くてですね……」


 仕方のないものだ。

 前世界では精神の傾向誘導はあれど、完全操作はない。生命は創造も操作も破壊も許されない。そんな中で魂や精神の事を教えるのは、学か宗教の人々であり比較的非日常だ。見聞きが慣れない中で言われるからこそ信じる。

 しかしこの世界では、自分の体から沸く魔力で様々な事が行える。精神の助け程度は、宗教込み回復魔法でなくとも肉体活性で間に合う。魂…命の助けになる火力が上がるような効果なしには。


「因みに神に祈って能力が上がる事は」

「そんなとんでもない! 無粋ですし不敬な思考です!!」


 加護は思ってたのと違う。信仰と威の管が、神と信者に構築される訳ではないという。


[イアイア〈キテル〉イアイア]


 まだこちらの方が効果を実感するだろう。俺の回復は早まりそうにないがな。




 また数日がたった。魔力が戻ってきた気がするが絶対に違うと言える。41℃から38℃に体温が下がって、完治したと言い張る位に違うのだ。


 《空間陸覇》の範囲が広がり、デュラムに遠くで狩らせているので、ただの船旅となっている。おっさんが慣れて吐き気を催さないようになった。地味に大きい変化だ、吐いてる人見ると気が良くないし一番の貢献であろう。


 このまま組んで『小舟世界一周した二人』との妄想もしたが、長くは続かない。

 見えたのだ。〈ハスト〉の港に並ぶ異質が。


(デュラム、色を隠し船底で動かすようにしろ。まだ距離はあるが観測されたら厄介だ)

(しかしこの男が潜水兵が居ると言えば)

(…お前を逃がす為だ)

(なりません)

(………俺を負いながら戦って、二人とも生き残れるとでも?)

(そうでは! 私は何の為に!?)

(デュラム=ヴィクトに命令を下す。船底を持ち海路で〈ハスト〉の港へ接近、戦闘開始後、海底へ向かい待機。戦闘終了まで続行、その後は自由に動け)

(っ! ………了解)


 本当は一緒に戦場で散りたいのだろう。デュラムの内心を表すなら…血涙を流し舌を噛みきり、指が平を貫通するくらいに強く握る拳といったところか。


[犠牲者は出したくない。知人が傷付く様はより見られない。ならば残る択は一つ、自身が犠牲になれば問題ない]


 《内演算》その通りだ。他人が負を背負ったとして、俺が死んだ後だから俺は何も感じない。まさしく自分勝手だ。それでも構わないがな。

 向こうからも観測されたのか、声が響く。


『久しいな、ゼノムよ。顔は最初に戻したのかい?』


 リヨンの声だ。諜報部だらしねぇな、まんまと逃げられてるじゃん。いや俺が追わなかったのが悪いか。


『お前がくたばってれば、どれだけ楽だったか…今はそれしか考えられない』

『フッ。どれだけ苦労しようが変わらんさ。結末は一つだ』

『それはそうと、こちらは一般人を預かっている。そちらに引き渡しを行いたいのだが』

『そうか、こちらが……いや貴様が舟を出せ』


 仕方なしに雑草敷き氷舟を出す。おっさんは恐らく筋肉痛で、しばらくは寝具の上だろう。


 おっさんが港に着くまで、リヨンとの煽り合いにデュラムの鎮火の20分。長いような時間が終わりを告げる。


『圧の前に懺悔せよ』

 

 轟音とともに砲撃の雨が降り始める。上から見たら絶対に綺麗だ。


[誤差70cm。安全なルートは]


 何て精度の高さなのだろう。魔法世界に現代兵器を転用すると破格になる。という馬鹿げた現象をやってのけたのだ。裏にどれだけ壊された生物と物質があるのか分からない。


 俺は跳ぶ。高精度のおかげで面制圧にならなかった。針の隙間を抜け続ける。


 手の甲、足の甲に二重丸。それから線が一本だけ伸びている。魔力回路の改装か? しかし魔法発動にはまだまだ遠い。正確に言えば詠唱型と体外系の魔法だが…実際問題、身体強化の魔法を魔法として見ていない気もしている。


「がっ?!」


 右足に被弾。千切れれば良いものが強固に繋がっているせいで、吹き飛ばされ、水切りの石のように水面を跳ねた。痛い、限りなく人間な形態にされているのか、痛みを感じる。


 溺れ死にたくはないので、海に手足だけをつけ凍らせる。

 戦車まで大体1kmってところか。この体が持つか勝負するしかないな。


 海面が爆ぜ、一直線に俺は駆ける。射角度からの予想は《内演算》なしでも余裕だ。

 問題は近づいたところで、俺には肉体的な攻撃方法しかない。本当に素の手で戦車に挑むのは愚か過ぎる。それを可能とするのは、素で時止めに行ける覇王の領域。若しくは、産まれた瞬間に核兵器所有を確信させる鬼の領域だ。今の俺にはそんな力はない。ただのコンクリート壁に穴を空ける程度の力だろう。そんな力で大丈夫な気はしない。


『寄るな! 雑魚らしくしてろ!!』

『吼えるな。極めてもないくせに』


 焦り声を煽りつつ、砲弾を足場にし高く飛ぶ。戦車は7、まず1はこの後のメテオで消えるとして、他の戦車の破壊は無茶だ。性能が上がったのだから。

 街の破壊も厭わず、砲撃して来るのは目に見えている。倫理?戦闘に何言ってるの?が基本の世界なのだから。


 対空砲も付けるようにしな、ドラゴンに勝てないぜ。と思いながら、戦車の一両に落ちる。思ったより柔らかい……?

 気分は未来から来た人型殺人機。いや……ウイルスラボからの脱出者か。


『引くぞ!』


 砲の真下だと撃っても意味がない。戦車が後退し始める。とりあえず破片を食い魔力補給。

 氷の足場分は回復したが、全然足りない。究極的な回復阻害をくらっているようだ。レクスの虹剣はもはや戦略兵器な剣。


「おっ、ラッキー!」


 味方ごと撃ち抜く覚悟があったようで、一両がふっ飛んで来た。が俺には幸運だ。持ち上げるよりは、既に浮いてるものを振り回すのは楽なのだから。

 跳んで砲身を握り、ハンマー投げのように振り回す。竜巻は起こらないまま、斜め下に。


「後4」


 距離を取られて砲撃が再開。足場は良いが海を除けば包囲されている形だ。避けにくいし、追い詰めにくい。砲弾を投げ返すのは、爆発までの時間からして無理。


 長期戦は怖いので適当な一両を狙おう。時間かけて追う羽目になるかの賭けだ。


「シッ!」


 瓦礫が飛ぶ踏み込み。急なバッグに履帯が悲鳴を上げる。砲撃はちょんタッチで弾道変化。見えてきたのか…最盛には及んでる気はしないが。


 カブトムシスタイルで縦転させて、上に乗り下突きを入れる。


「後3」


 入れた瞬間、飛び引いて爆発から逃れた。それでも風には煽られるが、問題ではない。


「もしかして……リヨン機だけがまともか?」


 柔か過ぎて逆に不穏な流れが見え、それはやはり現実となる。


 壁を越える光……例の消却魔法だろう。勿論、俺は範囲内にいたので結界に囚われる。


「ちっ! 向こうはマップに敵対者が表示されるんかよ!!」


 苛つきながら結界を叩く。力が足りないが、詠唱は出来ない。偶然を祈りながら殴り続ける。


「ここで! 終われるかぁぁあ!」

____________________________________________________




「おい、何で体が残っているんだ?」


 消却魔法を受けた筈のゼノムの体は、半円に抉られた場所にあった。


「分かりません……リヨン様」

「ふん。まぁいい、してこれは死体か?」


 近くにいた青年兵が確認をしに行く。


「嘘だろ…………ゼノムは気絶中!! 繰り返す、ゼノムは気絶中!!」

「馬鹿な?! あの〈ボルザ〉を消滅させたのだぞ?!!」

「…………いい知らせじゃないか」

「?」

「処刑が出来るのだからな。そうは思わんかね?」  

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