帰還道中
俺「まとめきれなかった」
一同「煽っといて?人類の恥じゃねぇか」
デュラムを出したまま、港街に着いた。あの少年を置いた……そして。
「さぁて断罪の時だ。言い残す事は?」
「ケモミミは至福」
「それでいいのか?」
「犬系で白毛でお姫様で回復出来るなら至高」
「ぬぅん!!」
衛兵を出し抜いて壁を越えた街だ。勿論、怒りの矛が帰還とともに向けられた。結婚はするので、死刑とはいかない。代替案としてサンドバッグになる事で許してもらった。
ついでに海賊玩具を伝授。特殊な樽と長さが同じくらいの刃物を用意するそうだ……そのうち全身ツボ押しという名の『鉄の処女』も開発されそうだな。
一応、人間の回路に戻してある。痛みに喚き、体は腫れ、涙目の荒呼吸にならなければ刑にならない。逆に何もされない刑もあるが俺の場合、発狂してシュアに『よしよし』されに走る未来が見えた。
反省はすれど後悔はしない。シュアとの出逢いは、本当に重要だからだ。
「ひでぶ!!」
悲鳴を上げるのも忘れずに行う。処刑しているという実感がないと、互いの為にならない。用語検索で萌え画像にリンクするという事例の『虚脱』ルートみたくなるのは、いかがなものかと。
「ヴォオー!」
そういえば鬼娘の発祥は誰からなのだろうか。断面図や触手と同じく、昔からあったのかもしれない。
「うわらば!!」
「……そろそろやめだな」
憂さ晴らしが終了し人が離れていく。何故か二人残っているが。
「ゼノム……お前、ちっとも効いてないだろ?」
「せやで」
「……すげぇ……」
どうやらバレていたらしい。二人以外に目はないので、普通に見た目を戻す。
身体回復はいつも通りになったものの、未だに魔法の発動は高難度。《空間陸覇》の範囲から察する。明らかに狭い視野だ。これでは見たいものが見れないではないか。
「で? この後はどうする気何だ? 俺らは渡れないぞ」
大して何も考えていない。向こうに帰って、サイフィと喋って、数日ゴロゴロしてれば、鳥系から知らせが来るだろうと思っていたからだ。
「何もねぇな。とりあえず向こうに帰る事しかない」
どうせ〈水龍の息吹〉も使えない。デュラムに推進を頼った程度の速さだ。そこそこの速い船でしかないのに太平洋(のような所)の横断にレクリエーションを挟む余裕はない。
[どうして諦めるんだそこで!! 頑張れ、頑張れ。君なら出来るよ]
《内演算》が面白いのをすっかり忘れていた。ネタが豊富過ぎる、という難点を抱えたスキルのことを。
頭のおかしいスキルを無視して、俺は海へ出る。サイフィから貰った舟はいつまでも使いたいので、収納空間行き。上陸手前の乗り替えでいいだろう。
デュラムに《物体変化》の舟を引っ張って貰う事にした。戦闘狂気味の彼だが、肉体労働なら許容範囲だろう。それに〈水龍の息吹〉等で移動時間を縮め、海の存在に狙われない速さだった時より遅いので、戦闘行為になる確率は非常に高い。
港が見えなくなった頃合いで、思った通りになる。
「ゼノム様! 内部に避難を!」
前に会った迅い魚だ。移動は困難になりデュラムが寄って来たのを、殲滅完了するまで波に俺を委ねるしかない。
どうにか出したオールは速攻で持っていかれた。欠損は今の俺には大打撃なので、もう出すことはない。
初めての魔法世界での魔力切れだ。実際は回復中なだけだが、ここまで不便になるとは……前世界の電化製品も同じであると認識した。歯車とオンオフ機構の応用で、どれだけのパターンが産まれたのか知るよしもない。
目の前を魚が貫通する。かなり心臓に悪い、臓器はないがびっくり度としては合ってるはずだ。今後は尻際を下から上に通ったので、内股の限界に挑戦し始める。
安全地帯のなさと案外沈まない舟に、複雑な感情になる。もしかして魔力戻った?
(《内演算》~~?)
[ドレイン紛いの効率ぅぅ……]
あんな光り物をくらったのだから仕方ないことだ。魔力回路がどこまで深く破壊されたのか、魂がよくわかってない今では治しようがない。
一応、他人の体に入ったので魂だけになった事はあるはずなのだが…身にも心にも覚えがない。使えない経験しやがって、俺はやはり俺か。
そんな風に落ち込みながら数十分後。
「全滅させました」
デュラムがそう告げた。感謝の言葉をかけよう、これは超重要だ。
「よくやった。引き続き、運送を頼むぞ」
「はっ!」
やった事に陽の反応が来ないと、知的生命体は陰化する。前世界で学んだ事だ。
[主に荒れでですね。理解]
あそこは心理的な実験とその結果を見る場。具体的に言えば、釣られたり、顔真っ赤に認定と論破と論破(笑)をする場だ。
襲い襲われ、転覆と回転を繰り返し。出港から17日後、前に一泊した無人島に着いた。
「おぉ! 神よ、我が祈りが届いたのですね!」
この島に何かあるのだろうか、神殿にいそうなおっさんが遭難していた。
「暴れない?」
「暴れません!」
「魔物だからって罵倒しない?」
「………到着して1日は……ない」
「ならいいや」
連れて帰って損はないと思い、同乗を許した。
デュラムの休憩の為に一泊。因みに、少年が作ったものはボロボロになっていた。おっさんが数日で発狂し、破壊行為に及んだからだそうだ。何となく嫌な思いなので、銛や丸太を作り洞窟へ投げる。
「貴方は悪魔ですか?! 希望を持たせるなんて!! 何と酷な事を!!」
「一から木材作るより楽じゃない?いざとなれば銛でグサッと」
「………」
親切が心折に見えたそうだ。確かに上げて落とすよりは、下がり続けた方が楽である説は否めないが……。
「俺らは出るし? 後は知らないけど」
「……やはり魔だ……」
小声の罵倒だったので拳を鳴らす。攻撃はしないが、分かってると見せておかねばならないのだ。




