抜かざるを得ない
黒いオーラな群れ…種類に規則性はなく、たまたま何かに憑かれたような群れだった。
「くそっ! 何でまだ来るんだよ!!」
隊員の一人が叫ぶ。その群れは神経がないかのように、腕が千切れ、大穴が空き、頭を失っても向かって来る。
(霊魂系?)
[多分それ]
(めっちゃ曖昧やんけ)
[魂の事なんか3cmしか分かってねぇよ。てめえがmものさしなら分かったかもだがよぉ]
《内演算》は若干ピリピリしている。それもそうか、弱体化した今のままでは死ぬ確率が高い。また、邪神と虹剣により魂の作用を見ても尚、mものさしになりきれていないのだ。
〈生不全〉の干渉とは別口なのか……ともかく注意していかねばならないだろう。
車椅子の機動力はない。あるのはジェットブースターを付けた時だけだ。しかし素材は……。
不意に周りを見た。銀世界の中にいる、雪だらけである、水分がある、HとOがある。
雪をかき集めて《天地一体》を《物体変化》で新しく作ったタンクにて発動、元素を分けていく。
部隊の方々が倒れ始めた。
「オォォォオオ」
内、一つがおかしい事になる。目が赤くなりオーラの深さが違う個体が現れた。
「フッツ?!」
「ガァァア!!」
戦友への躊躇いが致命傷を負うことになる。それでも相討ちを狙い、剣を突き立てたが。
心臓部分に剣を突き刺したまま、それは暴れる。しかも見境がない。嫌な流れだなこれ……大抵分……。
「力ヲ……ヨコセ……ゼンブダ」
知恵を得たな。これだから〈既死〉系は嫌いなんだ。
単純に殺った分だけ力になるという、お前だけゲーム状態じゃねぇかを地で行く種族。ここで撃破しなければ、魔法汎用&即死でタイマン勝率5割になるだろう。種族通りの死した黄金戦士誕生なんて、誰も望まない。
[シュアが『死』に『生』を与えたところを、アルゴが殴るよ]
それだけは許されない。アルゴが殴るのもそうだが、シュアが前線なのは頂けない。
「コレハ復讐……恵体ヲ奪イシケモノヘノ……」
どす黒いオーラが散布され、まだ動けている人は震え上がる。動けない人、黒いオーラの生物は奴へ集う。
死体融合により、核を体の奥へ隠すつもりだ。更に厚い死んだ壁は、反撃されても痛みなく、余裕で動かせるものとなる。
ブースターを起動し突進するが、氷の柱に遮られる。なるほど〈刺氷熊〉の怨念だったか。発声可能の理由は……ヤマモトと同類か?
「死ネ」
氷の柱から枝が生えて、俺を執拗に狙う。車椅子にハンドリングを要求する。
横転しかけながら、相手が枝の択を諦めるのを待ち避け続ける。
以外と長かった。二分は経った頃に枝の成長が終わったか、相性から枝は不利益と感じて止めたか。どちらにせよ、一手目終了である。
この間に騎士達は、円形に陣をかため逃げている。
「行カセヌゾ、ケモノ共」
追いかけるように氷の柱が生成される。中継式か、遠距離をそこそこ分かってる使い方だ。
「逃がしてやれよ」
《物体変化》で殴る。〈キテル〉より下の恐怖系だからか、一切走るものはない。いやむしろ。
「ナンダ!?」
相手の方がなっている。元々合ってなかったが、更に焦点が揺れ動く。
氷の柱は砕け散る。集中切れにより執行中断が出来て良かった。
「……貴様……同類ダナ……?」
「その程度は分かるか、亡霊」
「私ワ生キテイル!!」
やはり呑まれたタイプか。人間から遠ざかると、倫理がおかしくなるものだ。
…骨の方は……元より壊れた世界か。かの粘は中身が無機質。白は元からだった。体が変わっても問題なしの方がおかしいか。
「殺サレタ! 死ニタクナイノニ!!」
「本能のままに文明襲ったんだろ?断罪されて当然だ」
やれやれ、枠からはみ出て修正することもない。残留思念である事に気付かない。
[ブーメランですね]
(現実的に考えろ。当たって戻る物はない)
[そうだな…よし当たって砕けろ]
車椅子になんて手段を要求するのだろう。大体当たる可能性がだな。
「死ダ」
体当たりをカーブで避けるしかない俺にあるわけがない。出力の足りなさも考えて、勝てる見込みは……友人を試していなかったな。
(《内演算》敵単体へ思念を送れるか?)
[ b ]
周囲に流すのは危険過ぎるので、指定で友人との会話を思い出す。
【畜生!画像がねぇ!!】
【ジャンル違いなら大量なんだが違うのだよなー】
【しかもあの表情を越えるものがない!】
【いやね? 表情だけなら分かるけどさ……行き着くまでよ】
画像と前後も付けて送る。敵の反応はどうなるかな? まだ該当言語の領域だが。
「復讐デスラナイ……何なのだこいつは?! どう言えばいいのだ?!!」
思考破壊完了。《内演算》はそう言わないが伝わってくる。それが性的嗜好になるとは、思っていなかったまともな人だったようだ。
『異世界では狂人の方が強い』は守られた。何で思考回路の送り付けを通してしまうのかは、よく分からない。亡霊系なら精神操作・破壊に強いと思ったが、そういう訳ではないらしい。
動揺している間に首への刺突。浅いので車椅子から単なるブースターへ変え。腕に装着。
「ファイアーーーー!」
剣が喉を突き通した瞬間に焼く。毛を伝わり全身へ火は回る。
白が黒くなるのは非常に恐怖だった。
そういや、無詠唱と詠唱破棄がごっちゃな気がする。




