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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
63/261

格付け

 俺がまたも先に出る。前回と同じく礼儀の為に、身分が下の者が先なのだそう。ならば今回は、王なので跪いた方がいいだろう。後々に悪い影響はないはず。


 俺は表へと出る。決闘の時より大きな歓声が耳を突く。実際に人数は多いらしい。


 中央辺りで膝をつき頭を下げて待つ。レクス王の時は口上なし。上下関係のためだと思う。


ガチャン ガチャン


 鎧の音……肉体美派であれば楽な方だったが、流石にそうではないか。しかしそうなると、素材が気になるものだ。

 人より離れた場に住む獣人達の王の装備……ドラゴン装備なら格の問題により、一方的にやられそうである。俺の最硬はどう盛っても〈ヒヒイロカネ〉でしかない。ドラゴン素材より上とは、考えたくないのだ。


「面を上げよ」


 言われたので顔上げる。


(食い下がるしか出来ないな)


 もう格が違うの何の。黄金に輝く装備にビッグブレード……鞘がねぇし淡く虹色に光ってる。鬣も紫電が通ってるし、小石が浮いている。

 時空斬が出来るキャラのような光り者。HPが0になっても動いて、タイム制を無制限に変え、尚且つ当たり判定何処だよ状態……。


 これは王ではありません。神です、確定で獣神です、祭り気分だった我をお許し下さい。


[当たらなければ、どうと言うことはない]

(なお残機は没シュート)

[無敵判定で頑張ってね]

(切れた瞬間、置かれてそうなんですが)

[磨きが足りんぞ]

(………偏屈しかないけどええか?)


 駄目だな、戦闘前から折れてる。なんで邪神には折れずにいけたんだ? 同系統だから耐性有り? 俺そんなに邪悪だったかな………。

 流石に(あいつ)のイメージをぶつける訳には行かない。破棄待ったなしだ、まだバイトステータスでバッドエンドした方がマシな気がする。


「他愛ないな」

「はっ! 無茶を通すしかございません!!」

「させるとでも?」


 眼光が怖い。熊を見付けた兎を遥かに越えている。差すらないのに震え上がる。多分、器官作ってたら漏れてただろう。魔力は今も漏れているが。


(残念だが切るしかない)

[妥当]


 シュアの撮影を完全に諦める。あと仕込み魔術系の手札は考えない。暇はなければ、場の支配という最強な事をしていそうだからだ。


「では……来るがいい」


 格上は格下の第一撃をあえて受けるという。これを原因に負けるパターンのは勿論あるが、そんな生優しい世界ではない。敗因となるのは想定外なせいだが、俺はそんな特殊な手札を持ってない。せいぜい詠唱バフの一撃程度。〈生不全(タナトス)〉は格下用だと思うし。

 待たせるのは悪いな……詠唱を始めるか。


「我が拳、全を駆けよ。地水火風、見える現象」


 風が吹き荒ぶ。砂ぼこりは客席まではいかない、防御結界でも張ってあるのだろう。是非とも余波で割ってみたいものだ。


「光闇時、見えぬ現象」


 オーラらしきものが俺を包む。右腕に収束する流れが出来ている。


 レクス王も来賓も一般観衆も見るだけで、声はほぼ聞こえない。吐息、鼓動、服の擦れのみと言っていいだろう。俺が出していた突風も今は静かだ。


「見えぬが確かに在りし世界。されど世界は無もまた在り。無すら駆けよ虚空を進め」


 レクス王の鎧の光がなくなる。納める事により強度を上げたようだ。発射タイミングを分かってるのか?やはり神は偉大なるものだ。役職は王だが。


「前に広がりし世界へ響かせ、圧せよ!」


 一撃の全身全霊に技名なんてない。ただの全力で正拳突きだ。属性が乗った気なんてありはしない、純粋に単純に、魔力とか気力とかを拳に乗せただけだ。


 これまでの全てより速い動きが出たと思う。気付いたら距離を詰めて、拳が当たって、衝撃が来て……。

____________________________________




 会場全ての砂が飛ぶ。防御結界が割れ、客席は砂にまみれた。来賓の方にもヒビが入り、騎士が大慌てで修復、多層化する。結界内の対戦の行方は見えない。


 レクス王の咆哮が木霊し砂が晴れる。見たところ対戦は続いている。


 ゼノムは防戦一方、さっきの一撃が通らなかったのだから当然の事。レクス王の剣技は誰の目にも見えていない、見えるのは地や結界に刻まれる跡のみ。それを全てゼノムは避け続けている。がいくらかは食らって、体に痕がくっきりだ。血肉が見えないのがせめての救いか、食い入るように誰もが見る。


ギャァァン


 非日常過ぎる音が響く。レクス王の剣をゼノムの片刃剣が受け止め、そして折れた音。


 ゼノムの刃を追った者は驚愕に染まる。折れた刃は天空にあった。追わなかった者は、更に魂が抜ける現象を見る。


 レクス王の剣をゼノムが挟んで、王を結界に叩き着けたからだ。あの剣を見えない速度振り回す剛力が、一瞬一回でも上回られると誰が思えたか。

 しかし、次はゼノムが結界の天井に叩き着けられる。落ちるゼノムへ容赦のない斬撃。ゼノムはこれを半身を結界、半身を地に粘着する事により回避。


 レクス王は大きく跳んで、結界に付いた方のゼノムを狙う。が、その攻撃は空を斬るのみだった。


「〈幻影術(ファントム)〉か!」

「あぁ」


 落ちた方のゼノムが五体満足で跳ぶ。途中に謎の回転、下を見れば斬撃があるので受け流したのだろう。


 レクス王の鼻に拳が入り、同時にゼノムは頭頂から裂ける。互いに着地姿勢を取れず、地面へ激突。


 数秒の間をおいて双方が立ち上がる。レクス王は鼻から血を流し、ゼノムは繋ぎ合わせの途中。


「いい度胸じゃねぇか! 顔を殴るなんてよぉ!!」

「代償が真っ二つだぞ?! 高過ぎるわ!!」


 熱くなった二人は、厳も敬も忘れた話を挟む。


「効いてきてんな、フラフラだぞ」


 ゼノムはまともに立ててない様子だ。レクスの剣に何かあるのだろうか。


「あぁ……仕込みに気付いてなくて良かった。仕込めたのは偶然だが」


ガシュ


 レクスの防具が外れる。防具の内側には粘液が。


「それで? どうする?」

「当然これだろ」


 半笑いのレクスにゼノムは拳を立てる。防具無き今、剣は不粋という事だろう。


「そうか」

「?!」


 瞬間、レクスが消える。ゼノムは完全に見失い、周回を見る。


 額同士のぶつかり。ゼノムは後ろに大きく傾く。レクスはゼノムを掴み、剣の様に振り回す。最後は叩き付ける。


 目を合わせる。互いの目の奥を読む。『続行』と一致しレクスは顔へ拳を落と。


「ワォォォオオォォォン!!!」


 レクスの拳を止めた、突如の遠吠え。誰かは分かってる。


「もう終わり!!」


 泣き目のシュアだ。視線が冷ややかに集まる。


 やはり姫、と言ったところだろう。人気の落ちはしないが、戦いに水を差すのは……今後は呼ばれなくなったり、早々の避難となるだろう。


「だそうだが?」

「………」


 ゼノムは起き上がって、また初撃の構えを取る。


「ゼル?!!」

「あと一撃は打てるんだよ!! 全力出さずに手に入れたモノなんてな!! 思い入れが弱くなっちまってしょうがねぇ!!!」


 何も包み隠さない言葉。

 愛する他人(ひと)の言葉は、本人の掲げる正義や主義に敵わない。とシュアは学んだ。

 それでも番はゼノム以外を拒否する。そういう体になってしまったからだ。


「娘よ、これは男が英雄となる時に通る道だ」


 父からも諭されシュアは座った。決意を秘めた表情で。


「行くぜ!」

「砕けよ!」


 二人の漢の拳がぶつかる。またも砂ぼこりで見えなくなる。違いは結界が割れなかった事程度だろう。


 王の咆哮はなく、獣人は不安一色だ。倒れていたら……あり得ないが……。そんな気持ちで晴れるのを待つ。シュアはゼノムの無事を祈る。


 数十秒も経てば晴れてくる。状況は……片腕を失ったゼノムが、レクス王に跪く構図。


 ゼノムは大きく息を吸い。


「参りました」


 敗北を宣言した。

俺「戦いの中、自分を克服……テンプレだな」

《攻渉補助》「あの~描写がですね」


《内演算》「名前変えてもお前はお前だ」

《天地一体》「そうだぞ」

《空間陸覇》「ちげぇねぇ」

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