試練3
やる気出なかった(過去形)
「三回目か?」
[70時間50分10秒……宣言通りだな。試練期限まであと35日]
俺の問いかけを無視して《内演算》は時間について話す。答えなくても良かったが無視されるのはな。
[9:10]周囲を見れば氷の中だ。気絶中に《錬成》掘りでもしたのだろう。氷を叩いて反響を楽しむ。
「いょしっ! 理論値達成だ」
[次の曲を選んでね]
「EXシリーズ! DPで!」
あまりにも乗りすぎて、音ゲーを混合して遊びまくり10時間も消費した。俺…何やってんだ…。
〈トゥルズ〉対策を本格的に考える。一体であれなら群れで詰む。そういえば最後は詠唱だらけだった……。
詠唱というのは、魔法の形成や根源を発声する事により自覚させ、イメージを持ちやすく又は持たせるものである。これにより魔法の練習、伏線、神の絶対令etc…をする。前世界でも宗教的文言や歌、勅が該当するだろう。
時間と宣言的な観点から、16~21歳までにはまった魔法戦闘系の作品では〈底辺的な技術〉とされていた。現実で言えば、毎度、銃の解説してからしか撃たない戦いだ。銃の機能を知っている誰もが『そんな暇あったらもっと撃てる』と思うだろう。
しかし、あれは違った。明らかに言葉を発する度に、世界と自分が変化していた。詠唱時点で、相手の先である触手を凍らせたりしている。よく見る作品群ではそんな描写はない。〈トゥルズ〉のような格上に、詠唱…しかも途中で効果を出した。超神作でも突風や問題ない気温変化程度だ。おかしい。
「冥府の扉は開かれた。無間なる〈奈落〉の〈初罪〉となりし〈明星〉よ。神への再叛の時は来たれり、六対十二翼を全てに魅せ、全知全能へ至れ!! 〈最上位悪魔召喚〉!」
[…………うわぁ何も起きない………]
何も起きなかった……魔力が足りないようだが、体感は最大まで回復している気だ。
(魔力残存量は?)
[気にしなくていいゾ~]
うむ、都合の良いおかしさだから無視。平等さなんて要らないね。
とはいえ対抗が出来そうにない。もっと何か…。
[ぬ?!]
《内演算》が焦ったような反応だ。敵対反応ではない。もしかして俺の変化だろうか、〈トゥルズ〉食いは遅れて効果が出る系だったのか。期待してSTGを始める。
裏二周目ラスボス発狂弾幕の被弾まで、2Fと7ピクセルのところで。
[けっかはっぴょー]
何か作られたイントネーションとともに、切られた。『お気の毒ですが』よりきつい表情になる。
[《空間覇握》が《空間陸覇》にアップした。《座標詐称》の範囲と精度がアップした。《錬成》が《天地一体》へうp。《物体変化》への思考伝達がうp。《自動攻渉》が《攻渉補助》へ変化、スキルOFF不可能となりました]
「え? お前は」
[さようなら、この亜人狂]
「消えないで。多分、一番困るから。あと首刺す映像流すの止めて、病みで鍋を始めそうになる」
どうやら性能が軒並み向上したらしい。使った気のなかった《自動攻渉》とサラダバーになったのは少し残念だが、スキルOFF不可能なら実質強化だ。《天地一体》は文字通りなら、核融合も……いや星さえ極限まで圧縮した、最硬物質すら作れそうだ。《物体変化》への思考伝達が上がるということは、より硬く速くなるということだ。一番戦闘で使うので嬉しい。《空間陸覇》は恐らく範囲と処理速度が向上だ。シュアの撮影に大いに貢献するだろう。離れてても見守れるね。
が上がっても使いこなせなければ意味がない。次は〈トゥルズ〉の群れにも勝たねばならないのだ。訓練しようにも氷の中だと駄目、実戦こそ全て。
早速、氷を割り泳ぐ。人体で泳ぐのを諦め、《物体変化》で足を固定し、ただのウォータージェットで進むようにした。
それでもペンギン(?)と並泳可能になるという強化だ。〈水龍の息吹〉が3m程浮いた位置から、水中を撃ち抜いたので〈水神龍王〉は惑星斬り『13万kmや』でもやれそうだから対神戦専用と決定した。少なくとも準備や詠唱は対神以外はしてはならない。
〈トゥルズ〉にはまだ遇わない。そう何度も遇いたくはないが、強くなったと実感するには同種の相手でないと分かりにくい。
氷の中へ帰り[20:21]訓練終わりに蟹が旨い。深層海流のミネラル等の関係により、身から格が違うと舌が語る。これで焼き肉タレ食いは不粋、ツユや塩食いしかあり得ないだろう。帰ったら修正せねばなるまい。
米を買えて良かった。米に執着する民族である純日本人(?)として、最高だ。しかも新潟米級に旨いので極上を味わう気分。シュアと食べれば食卓は〈至高天〉しかあり得ない。
「………うぅ…寒い……」
[そういや尻尾抱いて寝た日もあったな]
「二人の後の一人がこんなに寒いなんて」
[『彼は、自分が不幸であると知らなければ良かった』だったか?]
「大切なもの程すぐ傍で見失いやすいし」
[つまり私か]
「お前だったのか」
「[暇をもて余した]」
「「「■■■■■」」」
3体も来たか、勝てる訳がないだろ。と前なら思っていただろうが、意志を飛ばされて不快になってない今なら行ける。
氷より飛び出し、一体の頭部へ一撃。貫通でも確殺でもなかったが十分だ。尾骨から頭頂にかけて走る何かがなかった。それだけで実感する。
「■■!」
〈トゥルズ〉の触手による反撃。逆にむしろ大ダメージを追う事になるがな。
触手を数本掴み水中で振り回す。あの巨躯が嘘のように軽い。触手の付け根が凍り、千切れる。蜥蜴の尾切りではなく《攻渉補助》によるものらしい。
良い、非常に良い。攻撃全てに属性が乗るような、計算別の追加攻撃のようなもの。スバラッ!
獲った触手を空間収納に入れて、更にもぎ取るように〈トゥルズ〉へ迫る。恐慌状態なのか逃げの姿勢だ。
(ゲソ置いてけ。置いてけ!!)
(■■■■■■■■!! ■■!)
(貴様の都合なぞ知らん。蛸型に産まれた天命と産まれるようにした神を恨め)
[□□□□□□□□? □□□□□□□□□□□□□□□?]
(■■……)
《内演算》は言語を理解したのだろう。情報処理系スキルの汎用性とスペックは桁違いだ。
「〈狩散水〉!!」
蛸モデルなので9つ以上は脳があるとみた俺は、水の散弾を放つ。〈トゥルズ〉の頭部を貫通し、動かなくなる。
「まず一体」
他の二体は、触手を絡ませて何かをしていた。絡まった隙間には……。
幽かに見えたものに危機を感じ、〈水龍の息吹〉を溜める。
「「■■■■!!」」
それは射出された。まだ形があるのはおかしいが無視して、上端を掠めるように避けた。海から45°に人型の何かが飛翔する映像が撮れるだろう。
背後の熱が跳ね上がる。同時に心臓(?)もバクバクだ。
「太陽顕現て……」
水蒸気爆発が凍るのを見ながら呟く。間違いなくあれは太陽、つまり核の炎だ。何処まで下げようと、真っ白な火の時点で当たりたくは……。
再詠唱時間は与えてはならない。
水中へ《座標詐称》を飛ばす。〈トゥルズ〉は分体へ放つ準備をし始めた。
また放たれては環境的に悪い。しかし溜めに入った時点で止めても魔力暴走はあり得る。ならばやるのは一つ。
《物体変化》で巨大な手を瞬間的に作る。当人すら馬鹿な……早すぎる……と思う程だ。〈トゥルズ〉は向きをこちらへ変えるが、遅い。
「〈圧掌〉」
二体を海と共に《物体変化》の掌で潰す。完全に合わさった筈なのに、抵抗を感じる。生命力に差でもあったのか?そう思いながら擦り付ける。
ボトボトと肉片が落ち行く。蛸ミンチが思い浮かばなかったので、勿体なさを感じた。
[これで寄って来たり、海域呪われない?]
言われてみればそうだ。後先を考えて無さすぎたか……いや、どのみち〈トゥルズ〉は殲滅対象なのだし、浄化は……無問題、無問題。
《内演算》「やべぇだろこいつ?これで結婚しようとしてるんだぜ?」
〈トゥルズ〉「えぇ…」




