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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
49/261

精神的な準備

「貴公らには過酷な試練を与える。ここより更に北の海にて、蟹を捕るのだ」 


 ファンタジー王族の結婚には、条件が付く事が多い。結婚でなくとも成人や就任の時も同じく、試練を越える必要がある。ドラゴン素材だの、ダンジョン奥の秘宝だの、を取ってくるのが定例だが。


 今回、与えられた試練は漁。しかも蟹限定である。超寒帯で、相手を越える量を捕らなければならないのだろう。環境と他人との勝負を同時にこなす……それは過酷であろう。


 準備期間は2日………正直言って、公平なんてない。既に相手はド級漁船を確保していたからだ。


「ぽっと出の愚民が」


 猪鼻の彼からの一言以外、声を聞いてない。互いに時間の無駄と割り切っているからだ。


 かくいう彼もぽっと出……下手すると俺より幸運なのかもしれない。

__彼は元々、一般の兵だったのだがある日の訓練で変わった。ゴリラ系の方に超長距離ぶん投げられ、建物に突っ込んだ。それでも気は失っておらず、体を起こそうとすると。


ぷにっ。

「ふゃふ?!」

 

 柔らかい何か、とても可愛らしい声……。

 彼が突っ込んだのは、王室御用達の宿の女子トイレで_______


 なんとも言えない。いや言えたとして。


[画像全振り]


 の一言だろう。冷静に考えたら、これで進んでいてもおかしくなかった。それでも彼女は俺に逢うまで、純白だった。今は少し黄色が入っただろうか。


 っと変な事考えずに情報収集をせねば。2日間何てすぐだからな。

 

 とはいえ俺に伝など………いやあいつか。思い出した俺は、拘留所へ駆け出した。


「へっ! 負けらんねぇ!!」


 道中、チーター系にレースをしかけられた。肉食が後を付けている。そう考えるだけで恐慌状態になった俺は、いつの間にか体の最適化を行い、螺旋状に拘留所へと向かっていた。後から知ったが、途中で奥さんに突撃され、レースどころではなかったらしい。


 

 拘留所は足の速さだけで襲撃と思われたのか、隊列が組まれていた。列の手前への、スライディング土下座で事なきを得た。


「ドッペさんは居りますか?」


 そう言うと撤収する列から出てきた。串肉を食いながら。


「師よ、どうされました? 帰ろうとしてましたが」

「おぅ。冷めるだろうが、食いながらは止め」

「ゴグ! ………はっ!」


 シュアを賭けての漁に出る事を伝えると。


「え? 毛繕い権、貰えます?」

「全身脱毛する? 繕う必要なくなったりして良いよ」

「勘弁」


 耳を露骨に畳みながら、怯えを表す。変な欲を出すからだ。耳が上がったところで。


「けど俺、知らねぇからさ」

「え? でも蟹を肉のタレでいくのもって」

「あくまで食う方だろうが!」

「あぁそうでしたか。てっきり自分で取る通かと」

「で? どこで取れるんだ?」

「更に真北の海全域ですよ。穴場もないんじゃないですかね」


 これでは漁船持ちのあちらが有利だ。まだ何かがあるはずだが……穴場……穴……裂け目……あっ!


「近づいてはならない領域ってあるか?」

「あぁ! 〈黄緑海〉ですね。確か黄緑色の蛸の巣だらけで、魔物避けも効かなくなり、精神異常をきたすとか」


 …………リヴァイアサンの方面かと思いきや、ヤベーのがヒットしてしまった。それでもいかねばならないだろう、そんな差が出来ている。


「まさか……行く気ですか……?」


 唾を飲み、目を合わせる。俺の決意は硬い。


「行く気だ。そうでないとs」

「あれレクス様が二年前に持ってきて以来、誰も取れないんですよ! 珍味だったので分かりませんでしたが、今なら分かります! あれは単品でなく合わせて食べるべきだったと!」


 違う、食欲だった。デコピン刑だな。中指と親指で音を立てる。

 ビビるドッペ。気付いても遅い、既に越えてはならないものを越えたのだから。


パァン


 デコピンだというのに、破裂音のような音が鳴る。ドッペは額を押さえている。


「俺の事より味か……まぁいい情報ありがとよ。料理も食わせてやろう」

「はぃ」


 外ふわ中とろのたこ焼きで、舌を痛めるがいい。


 


 ドッペの情報を元に、情報収集。大体同じものが取れる。いやはや流石は公務員、教養が良い。情報収集の為に図書館へも向かう。


 目印として梟のマークがされている。何て知を感じさせる紋なのでしょう。しかも入館料は無料、なんて良心的なんだ。

 黄緑蛸が〈トゥルズ〉ど呼ばれていることが新しいだけ。しかし興味を惹くところがない訳ではなかった。


 封印されし扉があった。鎖は埃にまみれているものの、魔力的には全く衰えがない。一体どんな内容を隠してあるのか……ドラゴンとかか? 扉に耳を当ててみる。


「ヴォォォオォォォォォォォ」


 これはあれか、邪神を封じたしゃべる本か。ならば仕方ない。経年の知恵より世界の危機だ。ここは絶対、後で来よう。起こしそうな事態に一人で対応出来ないのは、起こさない方がいい。


 そうして[20:00]を迎える。街が魔力で灯された。流石に電気ではなかったか…結局あれも発熱だが。


 宿に泊まれる訳もなく野宿だ。というか結構な割合で野宿者が見える。獣らしさがここで出るのも愛嬌。身一つだし取られるものは命くらいだろう。

 ん~~試練前に殺しに来るか、あり得そうだが。


[お呼び?]


 問題は無さそうだ。むしろ過剰防衛しないことを祈る。

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