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全天録  作者: AX-02
第一章 朝
46/261

重要箇所

 白い面に一つ黒の棒が生え、その棒は何度か回転し停止した。雪が隆起する。黒い長球が地上に現れた。中から人らしきものが出てくる。


「雲一つないね」

「わふ」


 青年が天気への感想を述べた時、白狼も外を眺めた。どちらもご機嫌のようだ。


「さてと、真北に向かいたいんだが」


 青年はそう言いながら白狼を見る。耳と尻尾と目線の全てが、下を向いた。


「行きたくないのは分かる。でも失踪のままは駄目だと思うんだ。だから行こう、シュア」

「むぅ~」


 拒否を示したシュアは中に戻ろうとする。が青年には予想通りの行動だったのだろう、すぐに抱きかかえられて外だ。そして長球は彼の外套へと形を戻し、籠るには雪を掘るしかなくなった。

 シュアは肉体労働を嫌う。青年に従うしかなくなった。しかし拒む姿勢は続けるようだ。


「動かない」


 伏せて歩かない事に決めた。しかし無意味であった。動かないなら伏せている雪ごと、運べばいいのだから。

 青年は外套を変化させた檻を作り。


「さぁ、ここが新しいお家だよ」


 飼い犬への誘導だ。無論、白狼が応じる訳もない。


「独房に一人? 酷い……ゼル」


 犯罪者でもないのに檻……ゼノムは冤罪逮捕を思い出していた。

 檻が形を変え、流線型の艝になった。空色と白で擬態しているとも思える。


「見て。こんなに動けるよ」


 シュアから目を離さずに、ゼノムは艝を駆る。空中で前に一回転を見せ停止。興味深くシュアが寄った。


「これでなら、行く」

「ん。でもそのままだと無理だから、人型になってね」


 白狼の姿が、耳と尻尾の生えた少女へと変わる。ゼノムにとって、最高の姿に。


「じゃあ、前に乗って」


 ゼノムにとっては、落ちないように腕で挟むつもりの位置だが、シュアにとってはそうでない。

 雪に埋もれ、あの長球の中で行われたものを……毎夜やっていた事を思い出す位置だ。つまり。


「うん……それでもいいけどさ」


 対面になり、抱き締められる。ゼノムは、固定しやすくなったが、景色に興奮する尻尾を見にくくなり残念に思っている。


[ただの抱き締めに動じなくなってる……賢者?]


 ゼノムの能力の一つ《内演算》が、ゼノムの状態を推測する。ゼノムからの反応はないが、こういう話題で応じないのは、当たりの場合が多い。《内演算》はそういう時間だと結論付けた。


「じゃあ、動かすぞ」




 雪を巻き上げ、一つの艝が高速で行く。野生生物が追おうとするも、全て対処している。この地ではあり得なく速い上に。


「〈粘雪玉(スノーヴィス)〉」


 どうにか追い付けても、ゼノムが視界を奪うからだ。何かに当たり、暴れて小規模の雪崩に巻き込まれるのを、遠くから見て諦めた個体もいる。


「わー! チィさんよりずっとはやーい!」

(……いずれ『光よりずっとホァイ』になるんだろうな……)


 シュアは純粋に、これまでの最速と比べた感動を叫び。ゼノムはその改変を想定し憂いている。

 

 ゼノムは前世界にも行きたがっている。力とメンバーを連れて。特に結婚相手は当然、連れて行く。そして『末永く爆発しろ』『幻想はお前でした』等と言われたいのだ。

 だが、前世界にあるネタ……自分が好んでいるものは極端にも過ぎる。経験から言えば一学年で三人が既知程度のネタなのだ。それに、この身も心も純白の少女が堕ちるとなると、マイナスへ前向きに検討しなければならないのだ。


 全てを振り切ったところで、組織らしいものが見える。ゼノムからすれば見慣れぬ紋章。そして液晶を隔てるか偶像という形でしか見ることが出来なかった人々を。


『シュア様です! シュア様を発見! 発見しましたぁぁぁ!!』


 外に居た一人、鷹の顔が大声で叫びテントを回る。その様子を見ながら。


(着替えさせていても判別するとは……鷹の目、恐るべし)


 ゼノムは畏怖していた。死角の突きにくさがはね上がり、逃走しても即座に見つかるだろうと。


 速度を落としテントへ近付く。当然のように臨戦体制で待たれていた。


「貴様……何者だ?」


 ゼノムが、狐の相手はお好きですか?と返したくなる狼顔が質問をする。ゼノムは艝に乗ったまま。


「ゼノム・ルマ=アウゴ、という旅人です。通りがかったので寄ってみました」

「シュア様とはどこで合った?」

「この娘ですか……あっちの方で逢いましたね」


 ゼノムは方角的には合っている方向を指す。


「そうか。ではその手を外して、こっちに託せ」


 応答の間、幾度かシュアが降りようとするのをゼノムは制止していた。絶対、苛つかせているだろうと思いながらも続けた。そして。


「嫌です」

「なんと言った?」

「託すのは断る」


 瞬間、空気が変わる。何人かは剣の柄へ手を伸ばし、魔力を練り上げ始めていた。

 シュアは怯えて、ゼノムの外套を強く掴んだ。


「失礼。我々は〈フェリオス王国〉の騎士だ。そちらのシュア・ラ・フィエータ様の捜索をしている」

「それで?」


 狼顔ではなく、先程の鷹顔が話し始めた。埒が開かないと判断したのだろう。周囲が囲ませながら。


「つまりは王令によるものだ。分かるかね?」

「そこは拒否の理由でない」

「じゃぁどこ何だよ!」


 黙った状態での怒りの我慢が出来なくなったのか、また別の人が口を挟む。今度のは角の生えた男だ。


「そちらにシュアを渡したとして、身の保証は?」


 全員、意味が分かってない顔だ。ゼノム自身も、超低確率の話であり、いつもは考えるだけ無駄と理解している。


「お前らに渡したあと誅殺されない可能性は?」


 ゼノムの首へナイフが飛ぶ。持ち手を難なく取りゼノムは話を…煽りに変える。ナイフを適当に指に挟み。


「何? 本当の事だったから殺そうとしたの? 俺からしたら、そうとしか思えないんですけど。ちょっと部隊長さんどう思います?」


 凡人の得た、仮の経験則で煽る。ほぼ全員が武器に手を回した。

 牙剥き出しの狼顔が返答する。つまり部隊長という事でいいだろう。


「我々の誇りにかけて言おう……」

「伝統が長いと埃かぶるんだよなぁ。知ってる? 一流の〈暗殺者(アサシン)〉は被害者が死ぬまで、狙われてる事に気付かせないってさ」

「…ゼル……!」

「すまんシュア。過保護並みにならないと俺が安心出来ない」


 シュアが宥めようと、ゼノムの顔を自分へ向かせる。ゼノムは頭を一瞬だけ冷やした。


「ではどうしろと?」


 未だ冷静のように思える鷹顔が、具体例を求める。ナイフを投げて返却しつつ。


「このまま引率してくれません?」

「てめぇ! お願い出来る立場と思うな!!」


 我慢の限界が訪れた、何人かが飛び付こうと膝を曲げ。


「っ?!」

「………死んでたな」


 後ろへ飛んだ。ゼノムが魔力を練り始めただけで。


「……まぁ王権とか面子とか考えると難しいけどさ、出来ない訳じゃないだろ? ……このままだと俺が、国そのものに渡したく無くなって、シュアごと消える」


 ゼノムは、人質を取った上での宣戦布告と変わりない事を言い放った。《内演算》に言われて反省はしたものの、後悔はしていない。


「それは困るな。面子を潰しての帰還より、我々の首が飛びやすい」

「勿論、向こうについて本国での引き渡しがあれば、大人しくシュア渡して捕縛されるさ。人目の付くところで暗殺出来る奴が相手じゃ、諦めるしかない」


 一応の意思は伝えたゼノムは、相手の反応を見る。騎士達は集合して会議を始めた。


「勝てそうか?」

「いや辛すぎる。勝てたとして一人だけの満身創痍。その後も野生から守れるかと思うと」

「一発殴らせる事を条件に追加するならいいぞ」

「多分、見えない反撃来るぞ。やめとけ、やめとけ」


 戦闘を念頭にした会議だ。『勝てないから従おう』で話がまとまった騎士達は、出発の準備を始めた。


「従おう。我らの誇りにかけて」

「ありがとう。それと捕縛先の事について聞きたい」

「……何だ」

「食い物と便所はあるか?」

「どっちもあるが詳しくは…行ってから自分で見ろ」

「承知した」        

Qそういえば部屋とか作ってましたけど、トイレは?

A俺の切れ端で


《内演算》「はい犯罪者」

魔王「魔物でも希少だ。しかも現代から来たタイプだろ?」

勇者「勇気だわ……進んじゃいけない方面の……」

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