押しにも推しにも弱い
〈究極写〉
情報処理系の能力と空間系の能力を合わせる事で
細かい角度調整やオブジェクト消去等が出来る。
《内演算》のような汎用性があれば、編集・記録も可能。
(やっちまったぜ)
[投稿出来そうもない]
理性が仕事をし始めたのは、シュアが疲れて寝てからだ。いや、ある意味では理的に働いていたのだろう。《内演算》のダイジェストのどこを見ても、いたわりがあり、最初以外で痛みはないようだ。
本能に理性が勝ったように錯覚する。奥底はより深い狙いなのが見えている。
優しい刺激から始める。これが最も沼なのが肝であり、異世界で実行していると知ったら。
[キモ]
と大抵が思うものだ。むしろ実行してると、設定資料にでも書いてる有名作品があるのか? そう考えてしまう。
シュア……幸せそうな顔だな。独占が保証されてる今が永遠に続けばいい。
[それが我が子に移ってshit! して手にかけるんですね]
(俺は前世界の神話の神か?)
[…え……そういう手出しちゃうの? 倫理~カムバーーク]
どうやら理性が戻りきってないらしい。これが体に引っ張られるって事か。デロデロ、僕は悪いヘドロじゃないよ。
[よくもまぁこれまでの美人に耐えれたな]
それもそうだ。前世界の作品じゃメインになるような女性に靡かず、ずっと獣耳を追ってた。自分の貪欲さに呆れる。
これだから前世界で、彼女等がなかったのかもしれない。コスプレイヤーも亜人も、液晶の向こうだったからな。
シュアの寝息が心地よい。一瞬見えた三対の白翼に相違なく、天使だ。
[何、見えてんだ。22秒]
誰が変態だ。紳士と呼べ紳士と。
そう話しながらいつの間にか、視界が黒になり……。
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「ん~~ゼ~ル~~~」
先に目覚めたシュアは、ゼノムを起こそうと体を揺らす。が、ゼノムは意識が戻った様子もなく動かない。
「……昨日のもう一回………しよ?」
ゼノムの耳に誘惑の言葉をかける。ゼノムは動かず、代わりに。
シュルシュルシュル
彼の外套が動き、シュアの手に乗る。
「そういえば、触手があったよね……」
その呟きにより、外套は更に姿を変える。より望みに適した形状へと。
シュアは鼻を鳴らす。匂いが分かってからゼノムの額を撫でる。
「……戻れないなぁ………責任、取ってよね……」
ゼノムと違い、シュアは賢い時間が訪れにくい。一度入ってしまえば、日にちを跨いで継続するのだ。
[けものだからシカタナイネ]
《内演算》がしゃべる。ゼノムは寝ている為、誰にも聞こえない声だ。
「痛くしないでね…ゼル……」
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[という事が昨夜あってな]
(だからかー。そうかー、けものだものねー)
[そんなお前はケダモノ]
六日目の朝に、もう一つの映像が出来上がっていた。
流石は《内演算》。トレスというか理解度の高さは随一だ。低反発ソファーベッドにより体の負担を更に下げ、俺の腕を模す事によるリラックス……そして神編集。堪らない、溜まらない。
「楽しい? ゼル」
「あぁ跳ね回りたいくらいだ」
「埋もれちゃうよ」
「そうだ……その時は引っ張ってくれる?」
「前に何しよっかなー」
手をつないで雪の中、デート。これまでの人生の中で最高潮だ。何せ両思いだからね、健全そのもの。
[吊り橋効果]
理論的に正しい付き合いだと《内演算》も推している。ならば止まる必要などない。愛を育み、魂を結び、子を……。
本能が呼び覚まされそうになった。ハイな今、危ない語が増えている。そうでなくとも
「~♪~~♪」
シュアから来る匂い………フェロモンが凄い事になっている。雄を惹き付けること確定なくらいの。
そして予想通り。
グォオォォ!
熊に出会った。この前、完全徒手討伐を諦めたのと同じ種類だ。ならやる。再挑戦といこう。シュアを《物体変化》の球に入れて。死合、開始。
まず、俺が攻めに行く。雪を目元に投げつけ、体を前に倒し熊の掌を避ける。ガラ空きの腹部へ一撃。足元を転がり後ろへ回り込む。向くのに時間がかかると思ったので、飛び回し蹴りを入れる。
熊は転がるもすぐに持ち直し、氷柱を打ち出しながら接近。この前はこの突進を殴って、正面突破しようと失敗し、片腕が飛んだのだ。
突進相手は非常に分かりやすく、落とせばよかった。突進者の重心は、真っ直ぐ移動する為にしかないので、無理矢理な対応をしなくても、姿勢よく待ち構えておき、上から。
「〈降圧〉」
力を加えれば、柔らかな雪に頭から突っ込む。直接的な衝撃は雪崩を誘発する可能性が高い。そしてすぐでもなく、間隔があってから起きるものだ。
熊が起き上がる。顔が白く染まっているが、視界は鮮明なままらしい。すぐさま氷柱が飛来。《自動攻渉》により撃ち落とす。有効でないと判断したのか、熊は次の能力を見せる。
辺りが白銀に染まった。魔力を感じる風……意図的に吹雪を起こしたのだろう。雲や霧型の魔物がしそうだが、雪山育ちなら当然の発想か。
シュアを入れた球体の強度を上げる。何を狙っているのか分からないからだ。緊急避難も考え、俺の一部も入れているのもある。
一般的な視覚を遮断し、回避を考え足に魔力を集中。風・魔力の流れ、音がおかしい位置を探る。
「ほぅ」
見つけた。角のある氷の鎧を着け、こちらに向かっている。衝撃を逃がしつつ、串刺しにする気なのだろう。対応手は決まった。
また肢が飛ぶが気にしない。シュアが居るからな。
爆発的な回避に練っていた魔力を、爆発的な蹴りに変える。足が緋色に染まり、熱を発する。
氷角熊が現れる。まずは浮かせる為に左足を犠牲にする。
「〈破蹴・地〉」
方向指示爆発で蹴り上げる。左足が無惨な事になるが、痛みも違和感もない。浮き上がり、鎧の剥がれた熊に追撃をしかける。
逆立ち腕立て伏せの応用で、熊のよりに跳ぶ。
目が合った。自分に何が起きているのか、分かっておらずパニックでもない。フリーズした目だ。
一般や異世界に来たばっかりなら、つぶらな瞳に戸惑うだろう。侵入者はこちらで、実力的には毎回、追い払えばいいのである。素材が要る訳でも、人を襲った害獣でもない、自然な行動を野生生物が取っただけだ。上を示せば引き下がるものだ。無闇に殺す必要はない、そこに居ただけ……と。
「〈破蹴・天〉!」
いつの間にかそんな慈悲は薄まっていた。思考が出たとして、それに沿わなければ、そんな考えではない事が明白だ。
無慈悲。爆破で加速させた踵落としと、《内演算》が勝手に仕掛けた空気のブロックに、熊の顔は挟まれ散った。
ドドドドドド
《物体変化》解除、といかずに緊急避難。
「回復だよね?!」
シュアが足に手を当て、緑の光を手から放つ。
何度でも味わいたい感覚だ。足の治療のはずなのに、全身が癒される感覚……。
「そ、それと今………巻き込まれて」
「うん。雪の中だね。早く止まらないかな」
滑るのが長い気がする。そんなに標高の高い山だったか?何にせよ、地上までが長いのは面倒になるな。
[密室で]
(察せました)
俺「やっぱ移動と戦闘で推定火力が違うのは」
《座標詐称》「過去と現在がなんだって?存在と実用より軽いぞ」
俺「サーセン!」




